5.うじ茶のように渋く甘くすっきりと
5-15
小鬼だ。小鬼も、なんだか残念そうな顔をしている。
「あの〜、念のためにお伝えしておきますが、古森さんには、生まれ変わりの機会は、ありませんよ〜」
「え? なんで?」
「特別補佐ですから〜」
小鬼は当たり前のように、《《特別補佐》》を推してくるが、どうして特別補佐になると生まれ変わりができないのだろうか。
その答えは、小野様が教えてくれた。
「冥界区役所の職員には、どの役職にあっても、生まれ変わりの機会はないのだ。際限なく死後の者たちを次の世界へと捌き続けるだけ。つまり、私にもそなたにも生まれ変わりの機会はない」
「そうなのですか」
そう聞くと、少しだけ残念に思う。でも、興味があるだけで、どうしても生まれ変わりたいわけではないし、地獄で苦痛を味わうよりは、小鬼たちと楽しく仕事をしていくのもありなのかなと思い始めてもいる。
「まぁ、生まれ変わりは出来なくてもいいです。少し興味があっただけなので、そう言うシステムがあるのだと言うことが知れただけでも、いいです」
僕の言葉を聞いて、小鬼が、どこかほっとした表情を見せる。僕の期待に添えなかったことを気にしていたのだろうか。優しくやつだ。
冥界区役所の職員となった僕が、生まれ変われない理由は理解した。しかし、まだ疑問が残る。
「でも、僕は、冥界区役所の職員になった途端、これから、30年間も研修しなくてはいけないんですか? ちょっと長すぎませんか?」
軽い非難の意味も込めて、小野様へと投げかけると、またしても、残念な顔をされる。
「古森。そなたはまだ分からんようだな。現世とこちらとでは、時間という概念は、共通ではない。現世では、30年と聞けば、長いかもしれないが、こちらでは、そなたが不在の期間など、たかが知れておる」
「そうか。体感時間の差ってやつですね」
「うむ。そうだ。研修後、こちらの時間にすぐに馴染むためにも、自我が凝り固まらぬよう、現世での生活を、未練なく行なってこい。これが、現世へそなたを戻す理由だ」
「わかりました」
僕は、小野様の眼鏡の奥の瞳を見つめて頷いた。
「ちなみに、なぜ50歳になるまでなのですか? 80歳まで生きられる可能性があったのならば、そちらに合わせても良かったのではないですか?」
「なんらかの理由で現世へと戻る際は、残っていた天命の半分を消費しなければいけないのだ。そなたの場合、残りの天命は、60年。そのうちの半分を消費するということは……」




