5.うじ茶のように渋く甘くすっきりと
5-14
僕は、小野様の言葉が瞬時に理解できなくて、しばしの間押し黙る。
齢と言うのは、確か年齢を意味する言葉だったはず。
つまり、次の研修は、現世で50歳になるまで、生活しろってことか。
なるほど…………
「え゛っ?」
「なんだ?」
僕の、首を絞めたような疑問の声に、小野様は訝しげに反応する。
僕の胸は、もう動いてはいないはずなのに、ドキドキと脈打っているような気がした。
「あの、つまり、それは……」
期待しすぎるなと自らを制しようとするが、なかなか、胸の高まりは収まらない。僕はゴクリと喉を鳴らす。
「それは……もしかして、生き返ると言うことでしょうか?」
まさかとは思いながらも、僕は、震える声で小野様に確認する。
「厳密に言うと、違うのだが、まぁ、そう解釈してかまわない」
小野様は、眼鏡のレンズをキラリと光らせ、とても真面目な顔で頷いた。
「ほ、本当ですか?」
「うむ」
「で、でも、なぜ? なぜ、僕が生き返ることになるのですか? 先ほど、特別補佐になったばかりなのに」
小野様は、これ見よがしに軽くため息を吐く。
「先ほど言ったではないか。自我の強いそなたでは、ここで研修を行うことは無理なのだ。思いが現世に縛られすぎている。未練を解消してこい。そのためにも研修先を現世としたのだ」
「未練ですか?」
小野様の言葉を聞いて、不意に家族の顔が思い浮かぶ。
「今回、そなたは不慮の事故により、こちらへ来たわけだが、事故に遭わなければ、天寿を全うするのは、80の齢であったのだ」
「80!! 僕、80歳まで生きるはずだったのですか!?」
思わず声が高くなる。確か、平均寿命がそれくらいだと、何かで読んだような気がするけれど、まさか自分に、人並みに年を重ねる続けていく未来があったとは、あまり想像したことがなかった。
極力、人と関わらないで80歳まで生きたとしたら、それはとても寂しい人生になりそうだ。
「そなたのような、不慮の事故で天寿を全う出来なかった者は、本来であれば、次の生へと変わる時に、その生の天命に加えて、残ってしまった天命分も付与される事になるのだが……」
「次の生へと変わる時って、生まれ変わりですか? やっぱりあるんですね? 生まれ変わりって。実は僕、そういうの信じていたんですよ」
期待に満ちた表情を浮かべる僕に、小野様は、ひどく残念なものを見るような視線を向ける。
そんな視線に、僕が軽く首を傾げていると、脹脛をチョンチョンとされた。




