5.うじ茶のように渋く甘くすっきりと
5-13
小鬼と小野様のやり取りを聞きながら、ポカンと口を開けてしまう。
「まぁ、その、なんだ。今のは、ほんの軽口ゆえ、気にすることはない。良いな。古森」
「はぁ」
小鬼に叱られて、その場をなんとか取り繕おうとする小野様は、これまでの威厳は一体何処へ行ったのかと、首を傾げたくなるほどに、ビジネススーツを無駄に着こなしているただのオッサン、もとい、ただのオニーサンに見えてしまい、僕は、思わず眉を顰めた。
「もぉ〜、古森さんも、そんな顔しちゃダメですよ〜。小野さまは、目下、お茶目とコンプライアンスを勉強中なのです〜。だから、広い心で許してあげてください〜」
「いや、うん。あの、別に冗談なら良いんだけど……ね。なんか、今までのイメージと違う気がするのは、僕の気のせい?」
「大丈夫ですよ〜。これが普段の小野さまです〜。小野さまは、まだまだ冗談は不慣れですが、お仕事は完璧ですからね〜。何も心配ありませんよ〜」
小鬼の褒めているのか、貶しているのかよく分からないフォローに、小野様は、腕を組み、プイッと顔を背ける。
そんな小野様の態度を見ていたら、なんだか、この二人のチグハグな関係性がとても可笑しく思えた。そこにこれからは、自分も加わるのかと思うと、二人に振り回される場面しか想像出来ず、僕の顔は、笑みと苦笑とで、ヒクヒクと痙攣しかける。
そんな僕の態度を目ざとく見つけた小野様は、やめろと言わんばかりに、眼鏡越しに睨みを効かせてきた。
でも、なんだかそれも、もう怖くないと思えてしまう。
しかし、従わなければ、後々面倒な事になることも分かるので、ここは、従順に従うフリをするべきだろう。
なんとか、顔の痙攣を抑え込むと、それを見計らったかのように、小野様は僕に向き直った。
「さて、それでは、私付きの特別補佐となった古森に、早速、指示を出す」
「あ、はい!」
僕に出来る仕事だろうか。少しだけソワソワとしながらも、僕は、ピシリと姿勢を正す。
「そなたには、これから現世にて、研修を行なってもらう」
そういえば、そんな事を言われていたと、思い出す。
「あの、現世でどのような研修をするのですか?」
「そなたは、この五日間で、気持ちを大切に出来る様になった。今回の研修では、それを魂に定着させてくるのだ」
「えっと……それは、どう言う……?」
「そなたには、これから現世時間経過で50の齢となるまで、現世での生活を課すこととする!」




