5.うじ茶のように渋く甘くすっきりと
5-11
「い、嫌、というか、びっくりしすぎて……」
「お嫌ではないんですね〜?」
小鬼は、少しだけ目を潤ませつつ、迫ってきた。
「う、うん。まぁ……」
突然の展開についていけず、曖昧に頷いた僕の返事を、小鬼は良いように解釈したようだ。
「お嫌でないなら、良かったです〜」
ウルウルと瞳を濡らしていたものを瞬時に引っ込め、小鬼は、笑顔全開で僕の両手を握る。
「……まぁ、最恐レベルの地獄に送られるよりは、いいのか……な?」
小鬼に両手を握られながら、僕は、独言る。小鬼は、本当に嬉しそうに僕の手をブンブンと上下させながら、言葉を弾ませる。
「これからは、小野さまにお仕えする同僚ですね〜。仲良くしてくださいね〜。あ〜、でも、本当は、古森さんの方が役職が上になるんですけどね〜」
小鬼の起こす振動に、弄ばれながらも、小鬼の言葉を拾う。
「そ、そっか。小鬼と同僚か。なんか、それ、良いかもな」
つい先ほどまでは、自分にどんな処遇が下されるのかと、ビクビクしていたことなどすっかり忘れて、僕は、小鬼とわいわいと話をする。
死んでから、友達が出来るなんて、思ってもみなかった。
これからは、小鬼と、なんでも話そう。
事務官小野のことは、まだ少し怖いけれど、彼とも、たくさん話をしよう。小鬼が慕っている人だ。絶対に悪い人ではない。それに、なんてったって、僕の身元引受人となってくれた人なのだから。
小鬼との会話に花を咲かせつつ、そんな事を考えていると、わざとらしい咳払いが一つ、室内に響いた。
僕たち二人は、ピタリと口を噤む。
「そなたたちは、要らぬ事を喋りすぎる。時間がないと伝えてあるはずだが?」
事務官小野は、眼鏡越しに、ジロリと僕たちへ視線を投げた。
その視線を浴びた僕たち二人は、体を小さくする。
「す、すみません……」
「申し訳ございません〜」
「それで? 古森、状況は、把握できたのか?」
「あ、はい。事務官さん……小野様のおかげで、地獄行きを免れたのですよね? ありがとうございます」
僕は、小野様に向かって、深く頭を下げた。足元の小鬼をチラリと見れば、もっと深くお辞儀をしていて、僕は、さらに腰を折る。
「先ほども言ったが、そなたには、見込みがあると思ったから、取り立てたまでだ」
小野様の声は、相変わらず事務的だったが、以前よりもどこか、柔らかく聞こえる。
「あの、見込みって……?」
小野様は、少しだけ間を開けて、僕の目をしっかりと見つめて言った。




