5.うじ茶のように渋く甘くすっきりと
5-8
「小鬼が?」
「そう。そなたに、もう1つ認証印を付与してほしいと」
事務官の言葉に、僕の足元にいる小鬼に目を向ければ、手を口に当て、お口チャック状態のまま、小鬼は、目をキラキラとさせながら、僕を見上げてきた。
「理由は、先ほど述べた通りだ」
「僕が小鬼に『ありがとう』と言ったことがあるから?」
「そうだ。しかし、その時点で、小鬼の進言を受け入れたとして、それでも、焼印は、4つだ。最終研修をクリアすれば、大ごとになるが、クリア出来なければ、全く持って無意味な行為に成りかねん」
「……ですね。何百年か後に僕が最後の認証印を得られるかなんて、分かりませんから」
「しかし、小鬼は分かっておったのだ」
「えっ?」
小鬼が分かっていたとは、どう言うことだ。まさか小鬼には、予知の力があるのか。
「何百年か後ではなく、そなたが、最終研修をクリアすると、小鬼は断言した」
「な、なんで……? 小鬼には、予知の力でもあるのですか?」
僕の質問に、事務官は呆れたように鼻を鳴らす。
「そうではない。小鬼は、ただそなたを信じておっただけだ。そうだな。小鬼?」
事務官に声を掛けられた小鬼は、口元の手はそのままに、コクコクと頷く。
そんな小鬼の姿と事務官の言葉に、胸に熱いものが込み上げる。
僕は、これまでに、これほどの信頼を寄せられたことがあっただろうか。
「こ、小鬼……」
思わず言葉に詰まる。
しかし、事務官は、そんな心の余韻には浸らせないとでも言いたげに、淡々と言葉を繋ぐ。
「そうは言っても、小鬼の直感に安易に乗るわけにもいかぬ」
「まぁ、確かに、そうですね。五芒星でしたっけ? それの可能性があるってことですもんね?」
「うむ。そこで、最終研修は、私も直接立ち会う事にしたのだ。己の目でそなたの人となりを確認した後に、判断を下すために」
「なるほど。だから、最後だけ監視……じゃない、お付き合い頂いたんですね」
言い直してみたけど、しっかり聞かれてしまったようだ。
僕の言葉に、事務官は軽くため息を吐く。それから、面倒くさそうな声を小鬼に向ける。
「もう良いぞ、小鬼。ここからはそなたに任せる」
事務官の言葉に、小鬼は口元から手をパッと離して、大きな声で応えた。
「畏まりました〜」
事務官に一礼してから、僕の方へと向き直ると、はち切れんばかりの笑顔だった。
「古森さんが一生懸命、研修に臨むお姿をご覧になって、小野さまは、追加の焼印を認めてくださいました〜」




