5.うじ茶のように渋く甘くすっきりと
5-7
事務官小野は、軽く咳払いをして、場を引き締めてから、口を開いた。
「その焼印が、地獄の認証印であることは、そなたも知っておろう?」
「はい」
僕は、軽く頷く。
「地獄主導で、今回のような、研修が行われることは、極めて稀であるが、焼印が施されること自体は、実は、それほど珍しい事例ではないのだ」
「そうなのですか?」
「うむ。焼印が施される理由は様々ではあるが、総じて、地獄が定めた何かしらをクリアした時に、焼印は施される」
「はぁ」
「そして、五芒星を得た者は、地獄の苦行を免除される可能性がある」
「五芒星?」
僕が聞き慣れない言葉に首を傾げていると、事務官が、鋭く僕の右膝へと視線を送る。
「そなたの膝にある、それらの傷のことだ」
「えっ?」
僕は、ベッドに腰掛けたまま、右足をピンッと伸ばして、膝の傷をマジマジと見た。よくよく見ると、5つの傷は、星形のような配列をしている。
「これが五芒星と言うものなのですか?」
「そうだ。通常では、このような短期間で得られるものではない。地獄にいる者たちは皆、何年、何十年、何百年掛かっても、得られる焼印は、1つか、2つが良いところだろう。今回の研修を行う上でも、地獄の役人たちは、そなたが得られる焼印の数は、せいぜいそのくらいだろうと踏んでいた筈だ」
僕は、言葉もなく、ただ黙って傷を見つめる。ただの、合否スタンプかと思いきや、どうやら、重要スタンプだったようだ。
無言の反応でも、事務官には話が僕に伝わっているのがわかるらしく、淡々と話は続いていく。
「そして、そなたは、地獄の思惑を遥かに上回る、4つの認証印を得て、研修を終わらせたわけだが、4つの傷では、意味を為さない。まぁ、何百年かの地獄の苦行の中で、最後の焼印を得られる可能性も無きにしも非ず、ではあるが」
そこまで話すと、事務官は、一度言葉を切る。そして、そばにあった椅子を引き寄せると、スッと座り、長い足を組む。
そんな一連の動作が、なんだかとても様になっていて、思わず視線が釘付けになった。
「古森、聞いておるか?」
またしても、呆けた状態になっていた僕に、辛辣な事務官の声が刺さる。
「ああ、はい。聞いています」
事務官小野は、一つ頷くと、話を続けた。
「先程も少し言ったが、4度目の研修を終えた時点で、そなたの処遇は、等活地獄行きとほぼ決まっていた。しかし、その時、小鬼が、進言してきたのだ」




