5.うじ茶のように渋く甘くすっきりと
5-6
「それは、古森さんが、事務官付特別補佐に就任するからです〜」
もうこれ以上は、口を継ぐんでいられないと言うように、小鬼が勢いよく口を開く。
「事務官付特別補佐?」
僕の頭の中は疑問符で溢れ返る。それが表情に現れていたのだろう。事務官が小鬼を制す。
「小鬼。しばし、待て。古森が呆けておる。まずは、認証印を済ませよ。話は、それからにした方が良さそうだ」
「畏まりました〜」
小鬼は、事務官小野に一礼すると、話についていけず、一人呆然とする僕に向かって、少し大きな声で、指示を出す。
「古森さん〜。すみません〜。縁に腰掛けてもらってもよろしいですか〜?」
「う、うん」
僕は、指示された通り、ベッドの縁に這って戻ると足を下す。
「右膝を出してください〜」
ズボンの裾を捲りあげ、右膝を小鬼に向ける。
「では、行きますよ〜。はい、3、2、1〜」
そして、右膝には、2つ目の傷と同じライン上、3つ目の傷の右斜め下に、新たに赤く焼け焦げた小さな傷が付けられた。
「終わりました〜。完璧ですね〜」
小鬼は、満足そうに僕の傷跡を見ている。
僕は、されるがままと言う感じでベッドに腰かけたまま、小さく挙手をする。
「あの……?」
「なんだ? 古森」
事務官小野は、よく通る声で、僕の質問の先を促す。
「認証印は、5つ全てを得なくても良かったはずでは?」
「その通り。よく覚えているな」
事務官は、意外そうに僕の顔を見ている。
結構な大騒ぎをして、間違いを正されたのだから、いくら僕でも、忘れたりはしない。
そう言い返すべきなのかもしれないが、この不可解な状況が気になって、言い返すどころではない。
「そなたの言う通り、認証印は、研修のクリア如何を確認するために施されるものなので、今回の研修の場合は、全て得ることは、特に重要ではなかった」
「じゃあ、なぜ……?」
「事務官付特別補佐になるためです〜」
小鬼がウキウキを隠しきれないといった様子で、言葉を挟んできた。
「えっと、その、事務官付特別補佐とは一体……?」
「小鬼。私が順を追って話す故、しばし静かにしておれ」
事務官は、小さくため息を吐きつつ、小鬼を諫める。
「申し訳ございません〜。つい、嬉しくて……」
「まぁ、良い。そなたも、そのサプリでも飲んで少し落ち着くが良い」
先ほど、小鬼によって僕の手から回収されたカップを事務官は顎で示す。
「いえ、大丈夫です〜」
そう言いつつ、小鬼は、お口チャックのポーズを取った。




