表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥界区役所事務官の理不尽研修は回避不可能 〜甘んじて受けたら五つの傷を負わされた〜  作者: 田古 みゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/95

5.うじ茶のように渋く甘くすっきりと

5-1

 事務官が姿を消し、どことなく室内の空気が緩む。


 ヘナヘナとベッドの縁へ腰を下ろした僕の元へ、小鬼が、焼鏝(やきごて)を手に駆け寄ってきた。


「古森さん〜。早速、認証印を押してしまいましょう」

「ああ。うん」


 僕はズボンの裾を捲りあげ、3つの焼印が施された右膝を小鬼に向ける。


「では、行きますよ〜。はい、3、2、1〜」


 小鬼の掛け声の後に、ジュウと肉の焼ける音が耳に届く。


 音が聞こえなくなり、しばらくして、右膝を確認すると、3つ目の傷と同じライン上、2つ目の傷の右斜め上に、新たに赤く焼け焦げた小さな傷が付けられていた。


「はい。古森さん、終わりました〜。お疲れ様です〜」


 僕はしばらく、右膝の傷痕を眺めてから、小鬼に声をかけた。


「ねぇ。小鬼?」

「はい。何でしょう〜?」

「これから僕はどうなるのかな?」


 僕のポツリとしたつぶやきのあと、小鬼は手にした焼鏝を、ポンとベッドに置き、自分は、ヨッと掛け声を掛けつつ、ベッドへと飛び乗る。僕の右隣に腰を下ろすと、僕を見上げながら、ニカッと笑う。


「きっと、大丈夫ですよ~。古森さんは、頑張りましたから~」

「そうかな? ほとんど小鬼のおかげだよ。励ましてくれたり、ヒントをくれたりしてくれたから」

「いえいえ~。僕は、お仕事をしただけですよ~。お母上にしっかりとお話をされていたのは、古森さん、ご自身ではないですか~」

「母さんか……。本物の母さんとも、しっかりと話をすれば良かったな……」

「古森さん……」


 感傷的になり、口籠る僕につられてか、小鬼も俯いてしまう。


 しばらく、室内を静寂だけが過ぎていく。


 その静寂を終わらせたのは、小鬼の遠慮がちな問いだった。


「あの、古森さん?」

「うん?」

「もし、もしも、ですよ? もし、もう一度お母上に会えたら、何をしますか~?」

「もう一度? う~ん。そうだなぁ」


 僕は、顔を上に向け、腕を組み、眼を閉じて考える。頭の中では、あれやこれやと、僕と母が二人で過ごすイメージが駆け巡る。


 やがて僕は、眼を開き、小鬼の方へと向き直る。


「母さんと、お茶を飲む、かな」

「お茶ですか~?」

「うん。そう。今回の研修みたいに、お茶を飲みながら、いろいろ話したい。それに、話さなくてもいい。ただ、まったりとした時間を一緒に過ごすだけでもいい。これまで、そういうこと、したことがなかったから」

「それは、いいですね~。素敵な親孝行だと思います。僕も、今日帰ったら、母上と、お茶しようかな~」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ