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冥界区役所事務官の理不尽研修は回避不可能 〜甘んじて受けたら五つの傷を負わされた〜  作者: 田古 みゆう


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4.とうもろこし色のヒカリの中で

4ー20

「あなたは、息子と同じように人見知りだと言ったわ」


 母は、僕の喉の掠れなど、気にも留めず話を続ける。その表情は、焦点がどことなく定まっていないような、浮ついた感じだ。


 僕は、母の意識をはっきりとさせるためにも、しっかりと声を出す。


「はい! そうです」

「今のあなたからは、なかなか想像がつかないのだけれど、仮にあなたの言っていることが本当だとして、あなたは、いつ、どうやって、人見知りを克服できたの?」

「克服?」

「だって、そうでしょ? あなたはすごく饒舌で、とてもじゃないけれど、人見知りには見えないわ。何か方法があるなら、是非教えて頂戴。私は、あの子に、少しでも、人と繋がる機会を持ってほしいの。これから先の人生を、ずっと、自分の殻にだけ閉じ籠って生きていくなんて、寂しすぎるもの」

「確かに、これから先、一人きりというのは、寂しいでしょう。でも、先ほども言いましたが、周りの人ができることは、推測と確認くらいです。いくら、あなたが、人見知りの克服方法を知っていても、人と繋がってほしいと思っていても、本人が、自身で、人との繋がりが大切であると気がつかなければ、解決はしないと思います」

「それは……分っているわ。でも、……でも、何か、変わるきっかけを……」


 どこか浮ついた表情だった母の顔は、次第に緊迫したものへと変わっていった。母は、これからの僕の人生を心の底から心配しているのだろう。この緊迫感は、母の僕への愛情の表れだ。


 以前の僕ならば、「煩いことを言うな」「僕の気持ちも知らないで」「僕は一人が気楽でいいんだ」なんてことを思っていたかもしれない。でも、今の僕には、そんなことは思えない。こんなにも、母の愛情を目の当たりにしているのだから。


 母は必死だ。目にはうっすらと涙が滲んでいる。


 こんな思いをさせていたなんて、僕は、なんて我儘に生きていたのだろう。死んでから気がついたって、もう、遅いのに……


 どんなに後悔しても、僕が、現世で母のために何かをすることは、もう叶わない。


 だったら、せめて、今、目の前にいる、この母の役に立ちたい。


 僕も泣きそうになった。でも、涙をぐっと堪えると、とびきりの笑顔を母に向ける。


「きっかけを望むなら、それは、あなたですよ」

「えっ?」

「あなたが、推察と確認を続けていれば、必ず彼に、あなたの思いが届く日がくるはずです」

「そう……かしら?」


 母は、不安そうだった。

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