表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥界区役所事務官の理不尽研修は回避不可能 〜甘んじて受けたら五つの傷を負わされた〜  作者: 田古 みゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/95

4.とうもろこし色のヒカリの中で

4ー15

「うちの子もそうなのよ。我慢ばっかりするの。本当は、シュークリームが大好きなのに、下の子が欲しがると、すぐに譲っちゃうのよ」


 母は、空になった皿を見つめて、話し続ける。


「シュークリームに限ったことではないけれど、いつもそうなのよね。下の子は、いつまで経っても、我儘なのよ。我儘……、う〜ん、ちょっと違うかしら。いつまで経っても、甘えてるのね。下の子の性ってやつかしら」


 そこで母は小さくため息をつくと、カモミールティーへと手を伸ばす。僕もつられてティーカップを手に取った。


 喉を潤した母は、再び口を開く。


「昔ね、上の子が、冷蔵庫にあったシュークリームを、勝手に食べてしまったことがあったの。私は、その時、きつく叱ってしまったんだけどね、後で思ったのよ。『あぁ、この子はきっと一人で思う存分シュークリームを味わってみたかったのかな』って。いつも、弟に取られてしまって、半分も食べられないから」

「それって……」


 母の言葉に、俯きがちに話を聞いていた僕は、思わず顔をあげる。

 目が合った母は、軽く微笑む。


「ふふ。これは、私の推測。あの子の本心は、分からないわ。もともと自分の気持ちを上手く表現できない子だったのだけど、私がきつく怒ってしまったからかしら? それから、あの子は、どんどんと内向的になってしまって……親の私たちにも胸の内を見せてくれなくなってしまったの。……ずいぶん小さい頃のことだけれど、なんだか、あの子があの時のことを引きずっているような気がするのよね……」


 そう言うと、母は、ティーカップへと視線を落とした。その顔は、どこか寂しそうで、僕は、何か声を掛けなければいけないような気がした。


「あ、あの……」


 うまく言葉が出ず、口籠ってしまった僕を見て、母は、はっとしたかのように、笑顔を取り繕う。


「ごめんなさいね。私ばかり喋ってしまって……。つまり、何が言いたかったかって言うと、あなたは、きっと優しすぎるのよ。うちの子もそうだけど、兄弟、家族にまで、気を使うことなんてないのよってことが言いたかったの。それなのに私ったら、余計なことまで話してしまって……。ダメね〜。これだから、おしゃべりなおばさんは鬱陶しがられるのね」


 母は、自分の言葉に、ふふっと笑うと席を立った。


「お茶のおかわり、如何かしら?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ