4.とうもろこし色のヒカリの中で
4ー15
「うちの子もそうなのよ。我慢ばっかりするの。本当は、シュークリームが大好きなのに、下の子が欲しがると、すぐに譲っちゃうのよ」
母は、空になった皿を見つめて、話し続ける。
「シュークリームに限ったことではないけれど、いつもそうなのよね。下の子は、いつまで経っても、我儘なのよ。我儘……、う〜ん、ちょっと違うかしら。いつまで経っても、甘えてるのね。下の子の性ってやつかしら」
そこで母は小さくため息をつくと、カモミールティーへと手を伸ばす。僕もつられてティーカップを手に取った。
喉を潤した母は、再び口を開く。
「昔ね、上の子が、冷蔵庫にあったシュークリームを、勝手に食べてしまったことがあったの。私は、その時、きつく叱ってしまったんだけどね、後で思ったのよ。『あぁ、この子はきっと一人で思う存分シュークリームを味わってみたかったのかな』って。いつも、弟に取られてしまって、半分も食べられないから」
「それって……」
母の言葉に、俯きがちに話を聞いていた僕は、思わず顔をあげる。
目が合った母は、軽く微笑む。
「ふふ。これは、私の推測。あの子の本心は、分からないわ。もともと自分の気持ちを上手く表現できない子だったのだけど、私がきつく怒ってしまったからかしら? それから、あの子は、どんどんと内向的になってしまって……親の私たちにも胸の内を見せてくれなくなってしまったの。……ずいぶん小さい頃のことだけれど、なんだか、あの子があの時のことを引きずっているような気がするのよね……」
そう言うと、母は、ティーカップへと視線を落とした。その顔は、どこか寂しそうで、僕は、何か声を掛けなければいけないような気がした。
「あ、あの……」
うまく言葉が出ず、口籠ってしまった僕を見て、母は、はっとしたかのように、笑顔を取り繕う。
「ごめんなさいね。私ばかり喋ってしまって……。つまり、何が言いたかったかって言うと、あなたは、きっと優しすぎるのよ。うちの子もそうだけど、兄弟、家族にまで、気を使うことなんてないのよってことが言いたかったの。それなのに私ったら、余計なことまで話してしまって……。ダメね〜。これだから、おしゃべりなおばさんは鬱陶しがられるのね」
母は、自分の言葉に、ふふっと笑うと席を立った。
「お茶のおかわり、如何かしら?」




