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冥界区役所事務官の理不尽研修は回避不可能 〜甘んじて受けたら五つの傷を負わされた〜  作者: 田古 みゆう


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4.とうもろこし色のヒカリの中で

4ー14

「ですから、残り1つのシュークリームを、半分ずつ息子さんたちが食べればよかったのではないかと……」

「あなた……」


 僕の遅すぎる提案を、固まったまま、驚きの顔で聞いていた母が、ポツリと声を漏らした。


「はい?」

「もしかして……、お兄ちゃんなの?」


 母の言葉に、今度は、僕が身を固くして驚く。


 これまでの研修でも、見知った相手と言葉を交わしてきたが、彼らは、僕を「古森衛」として認識していなかった。今回もそういうことだろうと、漠然と思っていたのだが、ラスボスは、やはりこれまでとは違うのだろうか。


 突然のことに、僕は動揺を隠せず、不自然に口をパクパクとしながら、事情を知っていそうな、冥界区役所職員の二人に視線を向ける。しかし、二人ともが、母の言葉に驚いたかのように、目を見開いていた。


 どうやら、この出来事は、彼らにとっても、想定外の出来事のようだ。彼らからの助言が得られないとなると、この状況は、どのように対処すべきなのだろうか。


 あまりの驚きに思考が追い付かずにいるのに、それでも、僕の口は、僕の意思とは関係なく言葉を発していた。


「ど……どうして、それを?」


 つい先程、カモミールティーで潤したはずの喉からは、カラカラの声が出た。


 そんな僕にはお構いなしに、母は嬉しそうに手を叩く。


「やっぱり〜! うちの子と同じようなこと言うから、びっくりしちゃったわ〜」

「えっ?」

「うちの子もよく言うのよ。弟と半分でって。しかも、自分の取り分まで、なんだかんだ理由つけられて、弟に取られちゃうの。結局、本人は、食べれずじまい。あなたも、実は、そうなんじゃない?」

「えっ?……あの……」


 母は少し呆れたように微笑みながら、僕を見る。どうやら、母は、僕を保の兄として認識している訳ではなく、下に兄弟のいる他人として、話をしているようだ。


 僕は、他人として振る舞い続けることに安堵しつつも、どこか寂しい気持ちになっていることに、気がつかないフリをする。


 冥界区の二人も、話の流れから状況を察したのか、胸を撫で下ろしているのが、視界の端に映った。


 母は、さぞかし複雑な表情をしているであろう僕に、真っ直ぐに視線を合わせてくる。


「あのね、お兄ちゃんだからって、我慢することないのよ」

「えっと……」


 母の真意が分からず、僕の反応は鈍くなる。

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