4.とうもろこし色のヒカリの中で
4ー12
僕の問いに、ソファにちょこんと座っている小鬼は、不思議そうに答える。
「どうとは、どのような意味でしょうか〜? いつも通り、今は、研修中ですよ〜」
「だから、なんで母さんなんだよ?」
「そう言われましても〜。今までも、古森さんのお知り合いの方々と、お話をされていたではありませんか〜。今までと一緒です〜」
「そんなこと言われてもなぁ……」
僕は、途方に暮れてしまった。どうやら、研修の最後の相手は、母さんらしい。ラスボス感、ハンパない。
僕は、母が苦手だ。苦手という言葉は、僕の気持ちを表すうえでは、少々強すぎるニュアンスのようにも思うけれど、つまりは、僕は、母とどう向き合えばいいのか、それがわからずにこれまで過ごしていた。
両親の関心は、いつだって弟にむいていた。取り分け、母が弟に向ける関心は強く、いつも口数多く、年頃の息子としては鬱陶しいと感じる程に、弟の心配をしていた。関心を向けられた対象でもない僕が鬱陶と感じるほどなのだから、弟本人は、さぞかし煩わしい思いをしていることだろう。
それほどまでに子供への関心が強い母だが、僕に対しては、ほとんど何も言ってこなかった。それには、僕が、人とまともに会話出来ないことも少なからず関係しているのかも知れないけれど、両親の、言ってしまえば、母の関心は、弟の成長にのみ注力されていた。
そんな現実に気がついた僕は、いつしか、家の中でも外でも、ほとんど話さなくなり、次第に一人で過ごす時間が増えていった。
母とまともな会話をしたのは、いつのことだったか。もう思い出せないほどに以前に言葉を交わしたきりのような気がする。
そんなことを考えているうちに、母がリビングへと戻ってきた。
「あら、座っててくれたら良かったのに」
母は、柔和な笑顔を僕に向けてから、ダイニングの椅子を引いた。そこは、僕がいつも座っている場所だった。
「さあ。どうぞ。服が乾くまでお茶にしましょう」
そう言って、キッチンから、ティーカップとシュークリームが載ったお盆を持ってくると、母もいつもの席へと収まった。
母の無言の圧力に肩を押されるようにして、僕も、仕方なく腰を落ち着ける。
そんな僕の前には、シュー生地でたっぷりのクリームをサンドしたシュークリームと、母の好きなカモミールティーが置かれた。
「息子たちのために買ってきたものだけど、せっかくだから、食べちゃいましょう」




