4.とうもろこし色のヒカリの中で
4ー11
案の定、雨はすぐに本降りとなった。一緒にいた母は、天気予報を確認してから出かけていたのか、用意周到に折り畳み傘を持っており、難なく雨を凌ぐことができた。
しかし、そんな文明の利器を持ち合わせていない僕は、容赦なく雨に打たれることになった。
雨が止むまで雨宿りでもして、やり過ごそうと思っていると、ずぶ濡れの僕のことがよほど気になったのか、強引な母に、僕は家まで連れて来られた。
「遠慮しないで、あがって頂戴」
母は、そう言うと、自分はそそくさと靴を脱ぎ、家の中へと入っていく。僕は、そんな母の後ろ姿をぼんやりと眺めていた。
「何してるの~? こっちへどうぞ~」
玄関横の開け放たれた扉の向こうから、のんびりとした母の声が僕を呼ぶ。
「お、お邪魔します……」
僕は、自分の家であるはずの空間で、おずおずと言葉を発する。
母の声がするのは、使い慣れた我が家のリビングダイニングからだ。声のする方へと向かえば、母は、ケトルでお湯を沸かしていた。
「あの……」
なんと声を掛ければ良いのか分からず、部屋の入口で立ち尽くしていると、母が顔を上げた。
「あ~、そのままじゃ、風邪をひいちゃうわね。ちょっと待ってて」
母は、せわしなく、キッチン横の扉へと向かう。その扉の奥には、洗面所や脱衣所がある。しばらくして母は、バスタオルと、Tシャツ、それから、ハーフパンツを手に戻って来た。
「これ、息子のなんだけど、たぶんサイズ大丈夫だから、これに着替えちゃって」
「えっと……でも……」
「いいって、いいって。あ、濡れている服は、預かるわよ。乾燥かければ、着て帰れるよね」
「はあ……でも……」
「あ、パンツも替えた方がいいかな」
「パ、パンツ?……い、いえ……」
「そ。なら早く着替えて。風邪ひいちゃうわよ」
母のお節介、ここに極まれり。強引に物事を進めていく母のペースに呑まれ、僕は渡されたタオルで髪を拭き、濡れた服を着替える。着替えは、僕がよく部屋着として使っていたものだった。
「あ、あの……」
濡れた服を手に、母のそばへ行く。母は、どうやらお茶の用意をしていたようだ。
「はい。キミはここに座って。服は、乾燥機に入れてきちゃうわね」
母が、リビングを出た隙に、僕は、一緒に家へと入って来ていた、小鬼に話しかける。小鬼と事務官小野は、リビングのソファに座り、絶賛寛ぎ中だった。
「コレは、どう言うこと?」




