4.とうもろこし色のヒカリの中で
4ー8
小鬼は、フフっと笑いながら、水面に手を入れてバシャバシャと水の感触を楽しんでいる。
「でも、三途の川なんかでは、さすがにこのように、水に触れることはできないんですよ〜。触れてはいけない決まりがあるのです〜。それに、この川のように、流れを感じることもないですね〜。ただそこに、大量の水があるって感じで……。やっぱり、生きてるって感じるのは、現世の水だけです〜。といっても、僕は、現世へは行ったことがないので、僕が知っているのは、この体感ルームに現れる川や海だけ、なんですけどね〜」
目の前の川の流れに、さらさらと流れ出るように、小鬼の口からは、川への思いが流れ出る。いや、それは、現世への思いだろうか。
確かに、ここのように、大きな川や、海を眺めて居ると、流れに心を洗われるのか、無心になれるし、流れを眺めているだけで、楽しくもある。僕も、近所に流れる川を眺めるのが好きだった。
「小鬼たち、冥界区役所の職員が、現世へ行くことはないの? 仕事とかで? う〜ん。例えば、迷信だと思うけど、現世では、『死神が命を取りに来た』とか言われたりするよ。そう言うのは、区役所の仕事ではないの?」
小鬼はキョトンとしながら、僕を見上げる。
「古森さんは、区役所のお仕事に興味がお有りなんですか〜?」
「いや、そういう訳ではないけれど、もしも、そう言う仕事があるのなら、小鬼にも、現世の川や海を見る機会があるのかなぁと思ってさ」
僕の言葉に、小鬼は目を丸くして、さらにキョトン顔を濃くする。しかし、それは、一瞬のことで、すぐに、満開の花が咲いたように笑顔になる。
「僕のことを考えてくださるなんて、お優しいんですね〜。古森さんは〜」
「いや、別に、そんなんじゃないよ。ただ、気になっただけ」
「ありがとう〜ございます〜」
小鬼は、フフっと、はにかむように笑う。
「でも、残念ながら、区役所には、そう言ったお仕事は無いんですよ〜。死神さんはいますけどね〜。また別の管轄のお仕事なのです〜」
「そうなのか……」
「あ、でも、小野さまくらい、上級の事務官になると、特別任務で、現世へ行くことはありますよ〜。僕のような下っ端では、まだまだですが……」
小鬼は、照れたように片頬をポリポリと掻きながら、土手の上にいる、事務官小野へと尊敬の籠もった眼差しを向ける。
僕もつられて、土手の方へと視線を向けた。




