3.がとーしょこら色の思い出
3-13
意識が僕の中に戻ってきて、辺りを確認すると、白一色の場所だった。どうやら、宿泊所へ戻ってきたようだ。
転送後の、はっきりとしない意識の中、ぼんやりと辺りを見廻していると、背後から声がした。
「本日も、ギリギリの戻りだな」
僕は、椅子に腰をかけたまま、体を後ろへ捻って、声のした方を見る。
僕の背後には、事務官小野が腕を組み、神経質そうに立っていた。
「お待たせしました。小野さま〜。本日も、無事終了しました〜」
僕の足元で、小鬼の声がした。
「うむ。詳しい報告は、また後ほど聞こう。まずは、認証印を」
「わかりました〜」
事務官小野は、帰還の挨拶をする小鬼に相槌を打ちつつ、業務指示を出す。それに、小鬼はテキパキと応じる。
まだ、ぼんやりとしながら彼らの会話を聞いていた僕の右脹脛を、小鬼はチョンチョンと突きながら、声を掛けてきた。
「古森さん〜。大丈夫ですか〜? ご気分悪くないですか〜?」
「ああ。うん。平気」
「では、認証印を押しますので、右膝を出してください〜」
小鬼の言葉に、僕は、ハッと目を見開きながら、思わず、体を引いてしまう。
前回の経験から、痛くはないと分かっていても、恐怖は、すぐには無くならないのだ。
「古森さん〜。痛くないですから〜」
焼鏝を手にしながら、小鬼は呆れ顔を見せる。
「う、うん。わかってる……」
僕は、大きく深呼吸を一つすると、ズボンの裾をまくる。露わになった右膝には、前回の焼印が赤黒く残っている。
「では、行きますよ〜。はい、3、2、1〜」
小鬼の掛け声に合わせて、僕は前回同様、目を瞑り、もう一度大きく深呼吸をする。僕の吐く息の音に合わせて、ジュウと肉の焼ける音が耳に届いた。
音が聞こえなくなり、しばらくして、目を開ける。右膝を確認すると、前回の焼印の右斜め下あたりに、新たに赤く焼け焦げた小さな傷が一つ出来ていた。
「はい。古森さん、終わりました〜。お疲れ様です〜」
ビビりながら、焼印の確認をしている僕に、小鬼は、声をかけて、一礼すると、事務官小野の傍へ駆けて行き、一歩下がって、待機の姿勢をとった。
小鬼が定位置についたことを確認した事務官は、僕に向かって、事務的な声で、質問を投げかけてきた。
「古森。本日の研修は、どうであった?」
「あ、あの……」
僕は、咲との出会いで感じたことを、どう話せば良いのかと思い悩み、しばし口籠る。




