3.がとーしょこら色の思い出
3-22
そんな小鬼を見ていたら、本当に心配してくれていたのだと思えた。僕を思っての言葉に、なぜ不愉快になることがあるのか。
「小鬼。大丈夫だよ。頭を上げて」
僕は、優しく声をかける。
小鬼が顔を上げると、僕は、正直な気持ちを口にした。
「僕はさ、自分の不甲斐なさが、今になって、嫌になったよ。自分の殻に閉じこもって、ウジウジして、好きな人に想いを素直にぶつけられない、そんな、自分に今更ながら、嫌気が差したんだ」
「だったら、今からでも、あの天使さんを探しましょう〜」
小鬼は、早速飛び出さんばかりに、ベンチから飛び降りた。僕は、それを素早く制する。
「待って。僕は、あの子を探す気はないよ」
「どうしてですか〜?」
「だって、あの子は、咲だけど、咲じゃないんだ」
「それは、そうですけど〜。……古森さんのお気持ちが、消化不良なのでは〜?」
僕は、小鬼の言葉に素直に頷く。
「それは、そうだよ。でも、それは、自業自得。現世で、僕が咲とちゃんと向き合って来なかったのだから、仕方がない……と思うんだ」
「ですが〜……」
「消化不良のこの気持ちを抱えて、生きて……っじゃないか、死んでいく、っていうのもなんか変だけど、そうするべきなんじゃないのかなって。あの子に、自分の気持ちを伝えても、それは、現世にいる、咲に伝えたことにはならないから」
「古森さんは、本当にそれでいいんですか〜」
「うん」
胸に渦巻いていたものを言葉にして吐き出したら、スッキリとした。
僕は、もしかしたら、極度の人見知りを理由に、人と関わることから逃げていただけなんじゃないのか。
保も咲も、両親だって、本当は、僕が向き合おうとすれば、歩み寄ろうとすれば、きちんと向き合ってくれたのかもしれない。
今更ながらに、そんなことに気がついた。もう、やり直すことなんてできないのに。
「古森さんが本当にそれでいいと仰るのでしたら、お部屋へ戻りますが、本当に、よろしいですか〜?」
「うん。大丈夫」
小鬼は、僕の返事を確認すると、首から下げた端末に何かを入力し始めた。
手持ち無沙汰な僕は、咲から貰ったペットボトルを無意識に手の中で弄ぶ。
それを見た小鬼が、そっと声を掛けてきた。
「戻ると無くなってしまいます〜。せめて、今のうちに……」
そう促され、僕はペットボトルに口をつける。口に含んだ水は、口腔に残るカカオの風味を押し流し、全身を巡る気がした。
ほのかな甘さに包まれながら、僕は、転送された。




