3.がとーしょこら色の思い出
3-19
咲は、一瞬ポカンという顔をしてから、今日一番の笑顔を見せてくれた。
「そうですね。先のことは神のみぞ知る、ですね。そう思いながら、また、偶然、お兄さんに会えることを楽しみにします」
咲はそう言って、ペコリとお辞儀をすると、スクッと腰かけていたベンチから立ち上がる。
そんな咲を見上げながら、僕は、ふと思いついたことを口にする。
「ああ、そうだ。もし、今度、彼に差し入れをするなら、シュークリームにしなよ」
「シュークリームですか?」
「うん。シュークリーム」
「なぜですか?」
「う~ん。なんとなく」
僕は、とぼけた感じで答えを濁す。
保はガトーショコラが好きだと、咲は言っていたけれど、僕の記憶が正しければ、保は、それ以上にシュークリームが好きなはずだ。僕らは、昔、シュークリームの取り合いで、大喧嘩をしたことがある。だから、間違いないはずだ。
しかし、僕の言葉に、咲は少しだけ眉根を寄せている。
「さっきのガトーショコラも失敗してたし、シュークリームは、私には、難易度高めだと思うんですけど……」
なるほど。確かに、咲の腕前では、失敗の可能性は高そうだ。
「あ~、えーっと。別に、手作りにこだわる必要は、ないんじゃないかな? 例えば、ちょっと有名なお店のものを、差し入れするとか。別に、有名じゃなくてもいい。二人で、美味しいと思えるものを一緒に食べれば、それでいいんだよ」
「そう……でしょうか?」
「うん。あげるものよりも、共通の時間をどう過ごすかの方が、二人には大事なことだと思うよ」
咲は、僕の言葉を聞き、頬をほんのりと赤く染める。
「でも、それだったら、何で、シュークリーム?」
咲は、恥じらいを潜ませつつ、先ほどの、僕のとぼけた答えをさらに衝いてくる。
「そこは、ほら、シュークリームって食べにくいだろ。だから、相手が顔に着けたクリームを取ってあげれば、優しさをアピールできる! そして、自分にクリームが着いていれば、可愛さアピールになる! シュークリームは、なかなかに、使えるアイテムなのだよ」
僕は、よくわからない、シュークリームアピールを必死で捲し立てる。
そんな僕の言葉を、咲は、クスクスと笑いながら聞く。僕のシュークリーム演説が終わると、咲は、一つ頷いた。
「わかりました! お兄さんの助言、肝に銘じますね。いろいろとお話を聞いてもらって……ありがとうございました」
テッテレ〜〜




