3.がとーしょこら色の思い出
3-18
なんだかんだと言いつつ、僕たちは、ケーキを食べ尽くした。
紙皿やフォークを処分している咲を見ていたら、ふとある言葉が思い出された。
「あれ? さっき、ケーキは、助言をしたお礼って言ってたけどさ、最初から、僕が処分するって話になってたんだから、お礼にならなくない?」
僕の言葉に、咲もはたと気がついたようで、片付けの手を止めた。
「あ、本当ですね。そういえば、お水をあげた私に、お兄さんがお礼をしてくれるんでしたね」
「そうそう。でも、お礼はいいから、代わりに、ケーキを処分してくれって言う話だったと思うけど?」
「あ〜なんかもう、ややこしいですね。じゃあ、お水をあげたお礼に、お兄さんは、助言をしてくれたってことにしましょう。ケーキは……」
咲は、しばし考えてから、ニカっと笑う。
「ケーキは、私たちが出会った記念って事でどうですか?」
「アハハ。なんだよ、それ。記念とか、いるかなぁ?」
「えー。ダメですか?」
咲は、軽く膨れっ面をして見せてから、プッと吹き出す。
そんなコロコロと変わる咲の表情を、僕はきちんと目に、そして、心に焼き付ける。僕が出会った、最初で最後の、沢山の咲を、どれ一つ見落とさないように、しっかりと見つめる。しかし、何故だか、視界が霞んでよく見えない。
そんな僕を不思議に思ったのか、咲は、軽く小首を傾げる。コレは、僕もよく知っている咲の癖だ。
「お兄さん?」
「あ、ううん。なんでもない。ちょっと目にゴミが入ったみたいで」
そう言いながら、僕は素早く上を向いて、パチパチと瞬きを繰り返す。
「ええ? 大丈夫ですか? 擦ったらダメですよ?」
「うん。大丈夫、大丈夫」
何度か瞬きを繰り返してから、目を閉じた。目頭に、じんわりと熱を感じる。なんとか熱を落ち着かせてから、顔を正面に戻して、目を開けると、心配顔の咲と目があった。
「もう大丈夫だよ」
僕は、笑顔を咲に向ける。咲も、安心したように、笑顔を返してくれた。
「あの、お兄さん。私、そろそろ……」
帰り支度を済ませた咲は、名残惜しそうに言葉を濁す。
「そっか。そうだね」
「あの。また、お話しできますか?」
「う〜ん。それはどうだろう」
咲と会う事は、もうないだろう。でも、そんな事を言って、寂しい気分にさせることもない。
「《《サキ》》のことは、神のみぞ知る、ってね!」
僕は、無理に明るい声を出した。




