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冥界区役所事務官の理不尽研修は回避不可能 〜甘んじて受けたら五つの傷を負わされた〜  作者: 田古 みゆう


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3.がとーしょこら色の思い出

3-16

 もちろん二人は僕の気持ちなど知らない。


 僕は、仲の良さそうな二人を、物陰からいつも見ていた。


「僕が思うに、その彼は、本心で言ったんじゃないと思うよ。友達がいた手前、恥ずかしさから出ちゃった言葉だと思うな」


 ズクリとする胸の疼きを抑えながら、咲に声を掛ける。


 この空間にいる保も、咲のことが好きなはずだ。


 僕には、そんな核心めいた思いがあった。


 ここは、黄泉の国の体感ルームとやらで、もしかしたら、現世での人間関係とは少し違うのかも知れないけれど、それでも、二人の関係だけは、変わらないような気がした。


 二人の間に僕が入る隙間なんてない。僕は所詮、行きずりのお兄さんなんだから。


 そんな僕にできる事は、僕の横でグズグズと鼻を鳴らしている、僕のかつて好きだった人を、元気付けることくらいだ。


「キミの年頃の男子なんて、恋愛を冷やかすヤツは多いし、友人に冷やかされるのがイヤで、つい心にもない事を言ってしまうヤツもいるから、気にする事ないよ」

「そ、そうかな?」

「うん。絶対に、本心なんかじゃない! 僕が保証する」


 僕は、勤めて明るく宣言する。


 そんな僕を見て、咲は、一度大きく鼻を啜ると、大きな口を開けて、笑い出した。


「アハハハ……ウフフ……」

「な、何?」

「フフ。だって、お兄さん、私たちのこと、何も知らないくせに、まるで知ってるみたいに自信満々だから、つい、可笑しくて」

「確かに」


 含み笑いが(おさ)まりそうもない咲につられて、僕も、咲を見ながら、自然と笑った。


 しかし、そんな状況に、僕は、微かな違和感を覚える。


 咲は、もっとおっとりと話していた気がする。咲は、いつから、こんな、さっぱりとした話し方をしていたのだろうか。そして、僕は、いつから、咲の爪先を見ずに話をしていたのだろうか。


 僕らは、自身の変化に気が付かないほど自然に、一緒の時を過ごしていた。


 それは、全然窮屈なことではなくて、むしろ、とても心地好い気がした。


 生きている間に、もっと、咲と話をすればよかった。爪先を見つめるだけでなく、もっと咲の顔を見ればよかった。


 僕の中に、薄らと悔いが広がる。


 そんな思いに気が付かないフリをして、僕は、咲に最終確認をする。


「それで、この、上手く作れたケーキは、どうする? やっぱり《《処分》》する?」


 僕の問いかけに、咲は、眉根を寄せて、しばらく考え込む。そして、納得いく答えを出したようだった。


「はい! 処分してください!」

「えっ!? いいの?」

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