第六話 心器とスキルのあれこれ
これは、いきなり問題発生かね。
「スキルを覚えられないってことは
冒険者としてやっていくのは難しいですか?」
「いえ、そういう訳ではありません。
純粋に、剣術や槍術などで、冒険者として有名な方もいますし
初級スキルを上級に進化させていくことで、ある程度の実力も身につきます。
因みに、正確に言うと、七大系統以外の系統はスキルを覚えられないのではなく
Lv.35を超えてもスキルを覚えなかったという記録になっていますね。
もしかしたら、それ以上にレベルを上げればスキルを覚えられるかもしれません。
ただ、初級スキルが進化しない限りはそれ以上のレベル上げが困難ということですね。」
なるほど。中々に大変そうだ。
「スキルの進化というのは、難しいものなんですか?」
「んー難しいというより、進化する条件が分かってないって感じですね。
割と簡単に進化するスキルもあれば、初級からずっと変わらないスキルもあります。」
うん。大変そうだけど、なんか面白そう。
別に最強になりたいわけでもないし
スキルをコツコツ鍛えて、ある程度稼げれば良いんじゃないか?
スキルについて色々検証するのもゲームみたいで楽しそうだし。
「翔、どーするよ?」
「いやぁ、悠斗君。簡単すぎるゲーム程、つまらない物はないって言うじゃん?」
「だよな。」
翔もほとんど同じこと考えてそうだな。
「とりあえず、登録をお願いします。
大変そうですけど、なんとか頑張ってみます。」
「畏まりました。では、少々お待ち下さい。」
そういや、さっき渡り人にしては珍しいスキルとか言ってたな。
思い当たるのは、心器くらいか?
後で聞いてみるか。
「おまたせ致しました。こちらがギルドカードになります。
身分証明書にもなっていますので、決して無くさないようにお願いします。
再発行には金貨一枚かかります。
最初はEランクからスタートし、依頼の達成数や特定モンスターの討伐などで
ギルドが判断し、ランクが上がっていきます。
他になにか質問等はありますか?」
うん。安っぽい。
渡されたのは木で出来たカードだった。
ランクが上がればもうちょいマシな材質になるのかな?
「さっき言ってた、渡り人にしては珍しいスキルって心器のことですか?」
「あ〜そうですね。この世界の人なら誰でも持ってますが
渡り人の方が持ってるのは多分初めてだと思います。」
「どういうスキルなんですか?」
「心の中で思い描いた武器を具現化するスキルです。」
え、なにそれかっこいい。
「どんな武器もですか?」
「そうですね。ただし、武器の強度や威力、切れ味などはスキルレベルに依存します。
Lv.1ですとその辺のなまくら以下ですね。更に、スキルレベルも恐ろしく上がりにくいので
ほとんど誰も使わないスキルです。」
なんじゃそりゃ...。
「それはちょっと使いづらいですね...。」
「スキルレベルを上げるより、多少マシな武器を買ったほうが早いです。
それに、一度具現化すると変更することができません。
たま〜に、違う武器を2つ、3つ具現化できる人もいますが
ゴミが幾つになろうと、ただのゴミですからね。」
ひ、ひどい言い様だな...。
なんか恨みでもあるような言い方だ。
でも、武器の具現化ってかっこいいよな。
しかも、自分のイメージした武器ってのがいいね。
レベルを上げればそこそこ使えるようになるんじゃないかな?
「わかりました。色々教えて頂きありがとうございました。」
「いえいえ。遅くなりましたが、ギルド職員のキーナと申します。
これからどうぞよろしくお願い致します。」
うん。巨乳のキーナさんね。
絶対忘れません。
「ふ〜。色々問題はあったが、なんとか登録は出来たな。」
「だな。ただまあ、稼げるようになるのは割と大変そうだ。」
たしかに。色々検証してみないとわからないことも多いが
間違いなく、普通の人よりは大変だろう。
「まあ、せっかく来た異世界だ。楽々攻略するより
色々試して、とにかく楽しもうぜ!」
「もちろん!この世界で骨を埋める覚悟でやってやるぜ!」
開始早々死なないようにはしないとな。
「どうだ?登録できたか?」
外に出るとガイルさんが屋台らしきお店の前で待っていた。
「お待たせしました。なんとか登録出来ました。」
「そいつはよかった。これで、身分証も仕事も問題ないな!
よし!お祝いに、昼飯おごってやるよ!」
「いいんですか!?丁度腹ペコでした!」
「おう!近くに美味い飯屋があるんだ。
たらふく食って明日から冒険者として頑張れ!」
「よっしゃー飯だ―!!」
翔もかなり腹が減っていたのか、よだれを垂らしそうな勢いで喜んでいる。
「「いただきます!!」」
「おう!好きなだけ食え!」
ガイルさんに連れてきてもらったのは
食堂みたいな所だった。
ガイルさんは常連みたいで
店の女将さんらしき人と仲よさげに話していた。
「うめぇー!!」
たしかに、美味い。
翔と俺が頼んだのは、肉定食みたいなのだ。
なんの肉かはわからないが、柔らかくて肉汁が半端ない。
飯の美味い異世界で良かった。
「ここは、この辺で一番うまい飯屋なんだ。そこそこ値段はするがな。
お前達も、冒険者としてある程度稼げるようになったら、ここがおすすめだぞ!」
「絶対常連になりますね、これは。」
ここの飯を食うために、頑張らなければいかんな。
うまい飯を食い終わって、外にでると、だいぶ日が傾いていた。
「「ごちそうさまでした!」」
「ガッハッハ!気にすんな!明日から大変だろうが頑張れよ!
何かあったら、いつでも相談にのるからな!」
この人にはお世話になりっぱなしだな。
ある程度は仕事の一部なのだろうが
それを抜きにしても、こんないい人、元の世界にはいなかったな。
いつか、ちゃんとお返しをしよう。
そういや、昨日もちらっと思ったが
口が寂しいな。タバコが吸いたい。
「ガイルさん。ここってタバコってあったりします?」
「ん?タバコ?なんじゃそりゃ。」
「ん〜乾燥した葉っぱを紙で巻いて、火をつけて吸うみたいな...。」
「あー葉巻な!あるぞ。この近くだと、宿の裏の方に薬屋があってそこで売ってるな。
てか、ユート、まだ成人したてくらいなのに、もう葉巻吸うのか?」
あ、そういや聞き忘れてた。
「俺ら、元の世界じゃもっと年食ってたんですよ。
この世界に来たら子供みたいになってて、顔もちょっと変わりましたし。
渡り人って皆そんな感じだったんですか?」
「そうなのか?それは、今まで一度も聞いたことがないな...。
じゃあ、元々、いくつだったんだ?」
「俺が27で、翔が29ですね。」
「おいおい、そこそこおっさんじゃねーか。
よかったな、若返って。その年齢から冒険者はちときつかったぞ。」
「よかったなで済ませていい問題なんですかねぇ?」
「まあ、いいんじゃねーの?困ることは無いんだしよ。」
そうなんだけどさ。
ガイルさん他人事だと思って軽いなぁ。
まあ気にしてもしょうがないか。
「葉巻っていくらで売ってるんですか?」
「銅貨三枚だな。そんくらいなら、俺が貸してやるよ!ほれ。」
「いやいや、流石にそれは悪いですよ...。」
「いいっていいって気にすんな!こんなの子供のお駄賃程度だよ。
金に余裕ができたら返してくれたら良いからよ!
なんなら、酒でも良いぞ?」
本当にいい人だなぁ。
「わかりました。稼ぎができたら、ぶっ倒れるほど酒おごりますよ!」
「あ、じゃあ俺も貸してください!俺はうまい飯奢りますよ!」
「おう、いいぞ!期待しないで待ってるからよ!」
「そこは、期待してくださいよ...。」
「ガッハッハ!まあ無理せず頑張れや!とりあえず今日はゆっくり休め!
俺はまだ仕事があるから、ここで解散な!」
「色々ありがとうございました。」
「絶対ガイルさんにうまい飯食わせてやりますからね!」
「おう!そんじゃきーつけて帰れよー!」
これからまた仕事だってのに元気な人だなぁ。
俺らも明日から頑張んないとな。
今日はさっさと帰って寝よう!
その前にタバコだ。
「翔、俺はもう我慢できん。タバコ買いに行くぞ!」
「俺も昨日から吸いたくてやばい。」
そうして、俺らは宿に帰る前に
薬屋に寄ってお目当てのタバコを買った。
あぁ〜こっちはタバコもうまいのか。
たまらん...。
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