第二十五話 不安とダンジョンと......
ブックマーク、評価ありがとうございます!
なんとか間に合いました。
今回も楽しんで読んで頂けたら幸いです。
〜翌日〜
朝、寝起きに外でタバコを吸ってるいると、
翔が起きてきた。
「うい〜っす。」
「おう。」
翔は寝ぼけた顔で、タバコに火を付ける。
「なんか、異世界生活も大分慣れてきたな。」
「そうだなぁ。まだ一ヶ月も経ってないのにな。」
短い期間で色々なことがあった。
まるで、随分昔からこの世界にいたような感覚だ。
元の世界でこんな充実した日々は無かっただろう。
「まさか、こっちで彼女が出来るとは思わなかったし。」
「たしかにな。あんなに女との付き合いが億劫だったのに。」
「いや、まあ半分仕方なくだけどな。」
「よく言うぜ、今じゃベタぼれじゃねーか。」
「そりゃ、悠斗もだろ?」
「まあな。」
この先も、こんなに誰かを好きになることは無いだろう。
そのくらいミーアを大切に思っている。
「あの二人には色々感謝だな。」
「ああ、そうだな。
それに、あの二人の夢を叶えてやりたいな。」
試練の塔の攻略か。
俺達に出来るんだろうか。
碌な適正もないのに...。
あるのは、役に立つかもわからない金と銀の適正だ。
けど、叶えてやりたいな。
「それならまずは、超級ダンジョンに、
行けるくらいにならないとな。」
「先が長そうだ。
俺達、心器くらいしかまともな攻撃手段がないしなぁ。」
たしかに。
魔法も初級しか使えないし、
スキルにも期待できないだろうな。
今の所、心器を使って覚えた、
無系統スキルが通用しているけど、
この先もそう上手くいくかはわからない。
「心器スキルって進化するのかな?」
翔がポツリと言った。
◇
「そんなの、知らないわよ。
そもそも、心器スキルを最大レベルまで、
上げた人なんていないんじゃない?」
「いないと思う。」
朝、起きてきたエリー達に朝飯を食べながら、聞いてみた。
でしょうね...。
評価が極端に低いからな、心器スキルは。
「じゃあ進化するのかは、わからないか...。」
最大レベルまで上げてみるしかないか。
「急にどうしたの?
今のままでも、カケル達の心器は強いじゃない。」
「いや、心器スキルがこの先も、
通用するか、わからないからさ。」
「超級ダンジョンを目指すなら、
心器以外にも攻撃手段が無いと厳しいだろ?」
俺達のちょっとした不安を打ち明けた。
「別に、そんな気にしなくてもいいわよ。
私達も出来れば試練の塔を攻略したいと思っているけど、
二人に無理強いしてまで、叶えたいことでもないわ。」
「うん。一緒にいられるなら何でもいい。」
なんなんこの子ら。
ほんといい子やな。
そんな事を言われたら、
尚の事、二人の夢を叶えてやりたい。
いや、絶対に叶えよう。
俺は密かに決心した。
翔も多分同じ気持ちだろうな。
なんか、変なキメ顔してるし。
ただの、顔芸かもしれないが。
そして朝食を済ませ、
ダンジョンに向けて出発した。
◇
「そういえば、初級と中級のダンジョンは、
具体的にどう違うんだ?」
ダンジョンに行く途中の森の中で、
エリーに聞いてみた。
どのくらい強くなれば、
中級に挑戦できるかも知っときたいしな。
「そうねぇ。まず違うのは、
出てくるモンスターと階層ね。
中級の場合、15階層まであるわ。
因みに、上級は30階層、超級は50階層らしいわ。
で、中級のモンスターだけど、一階層から、
初級の最終層ボス程度の強さのモンスターが、
ごろごろいるみたいね。」
初っ端から中鬼・変異種並のやつが出るのか...。
複数に囲まれたら、結構ヤバそうだ。
「ってか、超級って50階層もあるのか?
絶対に一日じゃ攻略できないだろ...。」
「えぇ、そうね。
パパは一ヶ月くらい帰ってこないこともあったから、
そのくらいダンジョンの中で過ごすんでしょうね。」
まじですか。
とんでもないな、超級は...。
「食料とかどうするんだ?
いくら持っていっても足りるかわからないだろう。」
「パパはモンスターを狩って食べてたって言っていたわ。
なんでも、魔石を破壊してから倒すと、死体が残るらしいのよね。
でも、モンスターによって魔石の位置が違うから、大変みたいよ?」
へぇ、そんな方法があるのか。
「モンスターって全部食えるのか?」
「う〜ん、基本的に食べれないことはないんでしょうけど、
鬼系のモンスターはまずいらしいわ。
逆に、獣系のモンスターは普通に美味しいらしいわね。
兎とか猪とか熊とか。」
へぇ。
たしかに、街で角兎の串焼きとか売ってるが、
普通に美味かったな。
今日行くダンジョンで試してみるか。
とりあえず、エリーが知ってる範囲で、
モンスターの魔石の位置を教えてもらった。
エリーは、色々なこと知ってるな。
きっと、お父さんの冒険話をよく聞いていたのだろう。
そんな話をしながら、森の中を進み、
ダンジョンを目指した。
◇
「着いたわ。」
そう言ってエリーが巨大な木の前で止まった。
なんと、大きな木の幹にどでかい穴が空いており、
地下へと道が続いていた。
「すごいな...。」
「こんな太い木は初めて見た...。」
俺と翔は、その光景に驚いた。
「ダンジョンの入り口としては、
あまり珍しいものではないけどね。」
そうなのか...。
全部、洞窟みたいになってると思ってた。
「まあ、中は大して変わらないから、
さっさと行きましょ!」
そう言って、エリーが木の幹の中に入っていった。
俺達もあとに続く。
木の中に入るなんて変な感じだ。
しばらく進むと、明るい場所に出た。
そこには、見覚えのある草原が広がっていた。
「本当に、中は変わらないんだな。」
「でしょ?」
全く別の場所なのに、
同じ様な景色が広がっている。
もうちょっと、バリエーションないんですかねぇ。
誰が作ったか知らないけど...。
「よ〜し、違うダンジョンとはいえ初級だ。
気を張りすぎる必要もないが、気をつけていこう。」
「「「は〜い。」」」
こうして俺達は、
二つ目の初級ダンジョンの攻略に取り掛かった。
一階層は草原で、小鬼や狼がいて、ボスは中鬼、
二階層は森で、猪や蛇がいて、ボスは豚鬼、
三階層も森で、今までとは違い大きな熊が出た。
大熊と言うらしい。
そのまんまだな。
ここで先程エリーに教わった食料確保の方法を、
試してみることにした。
熊の魔石は、眉間辺りにあるらしい。
俺は、大熊の攻撃を避けつつ近づき、
爪手足甲で眉間を貫いた。
すると、指の先で砕けるような感覚があった。
その後大熊を倒すと、本当に死体が消えずに残った。
「凄いな、エリーの言う通りだ。」
「私もパパから聞いただけなんだけどね。」
それでも、十年以上前の話をよく覚えてたもんだ。
取り敢えず、血抜きをしてエリーに教わりながら、
大熊を解体した。
多少、気持ち悪さはあったが、
なんとかやりきった。
そして、手に入れた熊肉を空間魔法で収納した。
「これで、長期間でもダンジョンに潜れるな。」
「初級じゃそんな長いこといることはないでしょうけど。」
まあな。
でもいつか、超級ダンジョンに挑戦する時に役に立つだろう。
そんなことをしながら、ダンジョンを進んでいった。
四階層は迷宮で、ボスはでかい狼だった。
特に何かあるわけもなく、あっという間に五階層に到着した。
五階層は、前のダンジョンと同じく広場になっていて、
そこに大熊の集団がいた。
そこをサクッと突破して、休憩をとってから
ボスに挑んだ。
最終層のボスは、豚鬼の変異種だった。
中鬼の変異種と同じく、毛並みが赤っぽい。
いつも通り、ミーアとエリーの魔法で先制し、
その隙きに、俺と翔が近づき、
心器で止めを刺した。
やっぱ、他の初級ダンジョンも変わらずか。
豚鬼の死体もちゃんと消えて、魔石が残った。
「なんにも無かったな。」
「まあ、しょうがないな。」
少し期待していたが、
特に何もなかった。
そうして、翔が豚鬼の変異種の魔石を拾った、その時...。
(............に.........よ)
あの、謎の声と共に、
俺達を中心に、転移門の様な、
だが、それより遥かに大きい、魔法陣が広がった。
「お、おい悠斗...。」
「なんか、ヤバそうだ。早く離れるぞ!」
俺と翔は急いで魔法陣から出ようと動いた。
「カケル!!」
「ユート!!」
ミーア達が異変に気づき、
俺達の方へ、走り出した。
その瞬間、魔法陣が激しく光りだした。
「ミーア!!」
「エリ―!!」
俺と翔は、走りながら手を伸ばしたが、
その瞬間、俺達の視界は魔法陣の光とともに、
歪んでいった。
気がつくと俺達は、岩のような壁に囲まれた、
薄暗い洞窟のような場所に立っていた。
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