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3話 スキル強化

 俺は現実世界に帰ってきた。

 ステータスを確認して、夢ではないことを悟る。


「神様もミスってするんだなぁ」


 結局どんなミスをして俺のスキルがこんなことになったのかはついに聞けなかったが、結果オーライ。

 特に気にすることでもないだろう。


 むしろお詫びで貰ったスキルがおいしすぎる。


 ステータスを見るために鑑定を貰ったが、それは人や魔物に限らず、素材などにも反応する。


 俺は目の前に落ちていた魔石を拾い上げ、鑑定を使う。

 するとそこにはスライムの魔石と表示される。


「便利なもん貰ったな」


 改めて神様に感謝しつつ、魔物を探す。

 スキルの仕様を確かめる必要がある。


 神様から口頭で説明は受けたものの、やはり使ってみるのが手っ取り早い。


 とりあえずさっきみたいにスライムで試してみよう。

 おっと、タイミングよくスライムを発見した。


 スライムの攻撃に回避が発動する。


「うおっ?」


 俺の身体が真横に引っ張られるように動く。

 くそっ、なんか変な感じだ。


 さて反射はどうなってる?


「おっ、減っているな」


 鑑定を使いスライムのステータスを見る。

 僅かにHPが削れている。


「これが制限か……」


 さっきは二発の攻撃を避けるだけで倒せていたが、この減り具合だとあと五回は避ける必要がありそうだ。


 だが大したデメリットでは無い。

 避けることで解決する些細なことだ。


 俺は避けに避けて、回避してスライムを倒した。


「ふぅ」


 しかし、未だに慣れないなこの身体を引っ張られるような感覚。

 やはりスキルに頼らずに自分でも避ける練習をした方がいいだろうか?


 うん、そうしよう。


 ◇


 それからと言うものの俺の生活にスキル強化の項目が加わった。


 毎日毎日、避けるために魔物を探す日々を過ごした。

 時には自ら魔物の群れに飛び込み、スキルを使用し魔物を倒すなんてこともした。


 いや、正直怖かった。

 避けれてるからいいけど、もしスキルが発動しなかったらと思うとゾッとするね。

 そのままリンチであの世行き不可避だよ。


 まぁでも無茶した甲斐もあって、スキルに変化が見られた。


 まず反射の固定ダメージ量が増えた。

 今ならスライムも一回避で倒すことが出来る。


 そして回避も進化した。

 スキルによるオート回避と、自分の意思で行う回避をしているうちに引っ張られるような感覚がなくなった。というか転移するようになった。

 俺に害を及ぼす原因となるものの範囲外にワープすると言えばいいだろうか?

 俺も初めは戸惑ったが深く考えることはやめた。

 今度神殿に行って神様に聞いてみようと思う。


 そうそう。

 害を及ぼすと言えばもう一つ起こった変化があった。


 腐りかけている肉を食べようとした時に回避が発動した。

 食事中にいきなり視界が変わった時は驚いた。


 その他にも麻痺を起こす薬なども口に入れようとすると回避が発動した。

 さすがに毒で試す気にはならなかったが恐らく発動するだろう。


 このスキルが本当に回避なのか怪しくなってきたな。

 神様、他にも色々ミスした説が浮上しているよ。


 まあ、俺にとって悪いことじゃないから気にしないけどね。


 鑑定も使い続けていると見える項目が増えてきた。

 これからも積極的に使っていこう。


 錬金術は何度か練習しているが余り上手くいかない。

 母さんはもっと上手だった。

 だが低級のポーションくらいなら作れるようになった。

 諦めずにスキルを鍛えていれば、きっと母さんのような錬金術が使えるようになるはずだ。


 そんな感じでスキル強化を頑張った俺は今迷っていた。


「父さん、母さん、俺どうしたらいい?」


 スキルを授かってからは文字通りの意味で生活が変わった。

 出来なかったことが出来るようになり楽しかった。

 そして自分がどこまで出来るのか試してみたくなった。


 でも俺はこの町が好きだ。

 父さんと母さんが残したこの家も手放したくない。

 そんな葛藤に苛まれ、両親の墓の前で悩みを漏らす俺は随分と情けない顔をしている事だろう。


 生きていくだけならば今の生活でも十分やっていける。

 何せスキルに恵まれたから。

 でもそこには劇的な出会いもなければ冒険もない。

 今までと何ら変わらない日常が続くだけだ。


 すると突然突風に見舞われた。

 強い風が俺の頬を叩くように通り過ぎていく。


 そして数秒後にもう一度風が吹いた。

 今度は撫でるような優しい風だった。


「父さん? 母さん?」


 それは父さんに叱られた時、母さんに抱きしめられている時を思い出すような風だった。


「分かったよ」


 俺には伝わった。

 2人からのメッセージ。


 自由に生きろという願いが。


 もう俺に迷いはなかった。

 この日俺は家を出ることを決めた。



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