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2話 神様のミス

 翌日。

 俺は狩りに出る事にした。

 授かったスキルの試運転も兼ねて、魔物を狩りに出かける。


「今日はスライムあたりで様子を見ようか」


 スライムというのは素材になる部分がほとんどなく、売れるのも倒した後に残る魔石だけだ。

 だがいきなり動物系の魔物と戦うのは、心もとない。

 せめてスキルがどのように作用するのか掴んでからじゃないと。


「おっ、スライム見っけ!」


 スライムを発見した俺は、わざと気付かれるように近づく。


「まずは反射の方から確かめよう」


 俺はスライムの弱々しい体当たりを食らう。

 ポヨンという可愛らしい音を立てる。


「は? どうしたんだ?」


 自身のステータスを確認する。

 僅かだがスライムの攻撃でHPが減っているのを確認した。

 しかし、どうやら反射は発動していない。


「んん? おかしいな」


 いつまで経ってもスライムにダメージが通る気配がない。

 ただ虚しく俺のHPだけが削れていく。


「じゃあ回避はどうだ?」


 反射を諦め、回避の発動を試みる。

 しかし、無情にもそれが発動した試しはない。


「くそっ! どうなってるんだ?」


 俺は確かにスキルを授かったはずだ。

 神官による確認もあったため、俺に宿るスキルは反射と回避で間違いない。

 なのになぜ発動しないんだ?


「何か条件があるのか?」


 父さんや母さんはスキルについてそんなことを言っていた記憶は無い。

 例えこのスキルがアクティブだろうとパッシブだろうとこれ程使う意志を見せているのに発動しないのは何かがおかしい。


「くそっ、わからん」


 俺は悪態をつきながら自らの意思で回避行動をとる。

 発動しないスキルに頼っていては何も始まらない。


 すると、今までにない変化があった。

 スライムが何か打撃を受けたかのような反応を見せた。

 先程までピョンピョン跳ね回るように攻撃していたスライムも心無しか元気が無くなっているように思える。


「まさか……ダメージが入ったのか?」


 確信はない。

 だがそうとしか思えない。


 スライムが最後の力を振り絞って体当たりを仕掛けるが俺はそれを難なく躱す。

 するとやはりダメージが通った反応を示し、スライムは魔石を残して溶けるように消えた。


「倒したのか?」


 スキルの確認もままならない内にスライムを倒してしまった。

 結局何一つ分からなかった。


「何だったんだ?」


 そう疑問の声を漏らした時、俺の体は光に包まれた。


 ◇


 ◇


 突然視界を覆った眩い光も、徐々に収まる。

 意を決して目を開くと俺が先程居た場所とは違う場所だった。


「ここはどこだ?」


「神界じゃよ」


 突然かかった声に驚く。

 後ろを振り向くと立派な白いひげを携えたおじいさんが立っていた。


「まずは謝罪をさせてくれ」


 そう言って目の前のおじいさんは頭を下げた。

 ここが神界というのも気になる。

 一体何が起こっているんだろう?


「どういうことですか?」


「うむ。昨日君は成人を迎えてスキルを授かったじゃろ? そのスキルを授けたのがわしじゃ。まぁ、所謂神という存在じゃ」


「……神……様?」


 俺は事態を直ぐには飲み込めなかった。

 突然神界とやらに来て、神様と名乗るおじいさんと話をしてる。

 これは現実か、実は夢ではないのかと疑ってしまうほどだ。


「……痛い。ということは夢じゃない? 本当に神様?」


 俺は夢ならばこれで覚めると思い、ほっぺたを思いっきり抓った。

 だがそこに残るのはヒリヒリとした痛みだけで、特に夢から覚めるような気配はない。


「分かりました。それで神様が俺に謝りたいことって何なんですか?」


「無論、スキルの件じゃ。君も違和感を感じていたのではないか?」


 スキルか。

 確かに反射も回避もおかしかった。


「確かにおかしかったです。何か、こう、発動条件が分からないんです」


「それもそうじゃろう。今君のスキルは不具合を起こしている。わしのミスのせいじゃ。本当に申し訳ない」


 そう言って再び謝る神様。


「今俺のスキルはどんな状態なんですか?」


「ふむ。今君の反射は回避が成功したことを条件に発動することになっておる。回避時に食らうはずだったダメージを返すという事じゃな」


「やっぱり」


 スライムが勝手に倒れたことを考えるとそうとしか思えない。

 改めて言われると納得だ。


「じゃあ回避はどうなんですか?」


 反射については分かった。

 だが回避も発動していない。


「回避はわしの力で発動しないようにしておる。回避が発動して無差別に反射するなんてことになったら困るからの」


 回避はパッシブスキル。

 認識外の攻撃に反応してしまう。


「そこで君に与えられる選択肢は2つじゃ。1つはスキルを反射と回避に分解すること。もう1つはその混ざってしまったスキルに制限を加えて今後も使用することじゃ」


「制限とは一体どういうものでしょう?」


「そうじゃの。まずは認識外の攻撃回避による反射は無し。今は1人で行動しておるが、そのうち仲間が出来るかもしれん。そんな時味方の流れ弾を回避して、味方に反射が発動するなんてことにはなりたくないじゃろ?」


 確かに。

 今は1人だからさほど困らないけど、神様が言ったことが実際に起こるのは困る。


「あとは、反射ダメージを固定しようかの。それに関してはスキルの熟練度が上がれば固定ダメージも上がるようにしておこう」


 神様が言うには反射は俺の体力と防御力でダメージ換算されるらしい。

 だから俺が即死するような攻撃を避けたら相手が即死する。

 それでは回避が発動する俺が強すぎるため、制限をかけるようだ。


「分かりました。俺はそのままの方がいいです」


「いいのか? 色々と不便じゃが構わんな?」


「はい!」


 デメリットを考慮しても余りあるメリットだ。

 使いこなせればきっとオリジナルを超えた力を発揮するだろう。


「分かった。では制限をかけさせてもらうぞ」


 神様はそう言って俺の頭に手をかざした。

 神殿でスキルを授かった時のような、温かさを感じる。


「制限を付け終わったぞい。それと今回の件はこちらのミスじゃ。お詫びとして何かスキルを三つまで授けよう」


 三つか。

 俺の持ってる反射と回避も合わせると5つ。

 授かることの出来るスキルの最大数だ。


 何だか申し訳ない気もするが、神様がくれると言っているんだ。

 遠慮なく貰っておこう。


「相手のステータスを見れるスキルはありますか?」


「ふむ。鑑定じゃな。どうしてだ?」


「反射ダメージがどれくらい入ったか確認したいので」


「なるほどのう」


 敵のHPが見えないとあと何回躱す必要があるか分からない。


「あとは、適当におすすめでお願いします」


「ふむ。なら無難にアイテムボックスと錬金術にしておくかの」


「ありがとうございます」


 アイテムボックスは持ち物を異空間にしまうことができるスキルだ。

 特に商人なんかが欲しがるスキルである。


 錬金術はポーションなどの薬を作れるスキルだ。

 母さんが持っていたスキルなので、素直に嬉しい。


「ではスキルを授けよう」


 神様が俺の頭に手をかざす。

 すると何かが流れ込んで来るのを感じる。


「ほれ、確認してくれ」


 神様が手を離してそう言う。

 俺はステータスを開き、そこに確かに鑑定、アイテムボックス、錬金術がある事を確認した。


「大丈夫です。ちゃんとありました」


「そうか。では用件も住んだので君を地上に返そうかの。現実世界では時間は経ってないから安心するのじゃ」


「はい! 何かとお世話になりました!」


「いやいや、こちらこそ迷惑かけたの。そうじゃ。何かあったら神殿にあるわしの像に祈ればいい。こうして神界に連れてくることは保証できんが、信託を称して相談くらいはのってやれるじゃろう」


 神様がそう言い終わると同時に俺の体はここに来た時と同じ眩い光に包まれた。



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