13話 A級
ブローノ様に一方的にボコボコにされた俺は教会に戻ってきた。
散々な目にあった。
けど収穫もあったな。
「無敵に思えるこのスキルにも意外と抜け道はあるか……」
スキルについて知ろうとするほど弱点が浮き彫りになる。
今のようなスキルだよりの戦い方じゃちょっとそこをつかれるだけでやられてしまうから対策を立てないとな。
「範囲攻撃に精神攻撃か……」
俺が回避できないもの、もしくは回避できない可能性があるもの。
はぁ、あれこれ考えてもしょうがない。
まずは仲間探しだな。
いや、その前に昇級試験か。
そうだったな。
そのために調整しに行ったんだった。
いきなりC級に上がれるのはありがてえ。
とはいえ今日はなんか精神的に疲れたからさっさと宿に帰って寝るか。
はあ、いつかこの精神的負担からも逃れられるようになりたいもんだな。
◇
◇
日をまたいでギルドに行くとミラさんが俺を呼び止めた。
なんでも俺と戦う予定の試験管がちょうどギルドにいるらしい。
まだ日程のお知らせなどはされてないが、両者ともに不都合がなければ今日やってしまってはどうだとの事だ。
「俺は構いませんよ」
今日の日課はこなした後だし、適当に依頼を受けて遊んでこようと思っていたところだ。
「ではお相手をつとめて下さるガッシュ様にも聞いてきますね」
そう言ってミラさんは俺から離れていく。
ガッシュ……さんか。
めちゃくちゃ強そうな名前だけど大丈夫だろうか。
そんなことを考えている俺の前にミラさんが見るからに屈強そうな男を連れて戻ってきた。
「ジャックさん。ガッシュ様も今からで問題ないそうですよ。良かったですね」
「おう! お前がジャックか? 今回お前の昇級試験を務めることになったガッシュだ。よろしくな」
そう言ってガッシュさんはフレンドリーに俺に絡んでくる。
ブローノ様を見た後だから驚きは少ないけど、この人も筋肉ムキムキで強そうだ。
「ガッシュ様はA級冒険者で物凄い活躍をされている方なんですよ」
「おいおい。あんまり褒めるなよ。照れるだろ」
ミラさんはガッシュさんの紹介をしてくれるが……今A級って言ったか?
「A級ですか? 俺の昇級試験はC級になるものじゃないんですか? こんな強そうな人に勝てって言われても多分無理ですよ」
「いえいえ。当然そんなことはいいません。実力差があることは分かってますので審査基準は勝ち負けではなく決闘の内容です」
「ま、手っ取り早いのは勝手実力を証明することだがな。そうじゃなくても見込みありと俺が判断すりゃ合格だ」
へえ。
だったらそりゃ俺の土俵だな。
「分かりました。負けませんよ」
勝てなくてもいい。
ただ、負ける気もさらさらない。
負けない戦いは百戦錬磨だ。
俺は口の端を釣り上げて、自信満々にそう宣言した。




