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1話 プロローグ

 俺の名前はジャック。

 今日15歳の誕生日を迎え成人した。


 成人を迎えた子供達は、神殿に行き、神様からスキルと呼ばれる力を授かることが出来る。


 与えられるスキルの数は多くても片手で数えられる。逆に一つしか貰えないなんてこともある。


 授かるスキルで今後の人生が大きく変わるなんてことも十分にあるため、成人を迎えた子供は皆少しの不安を抱えて将来への期待に胸を膨らませている。


「どんなスキルが貰えるかなー」


 それはもちろん俺も例外ではない。

 スキルがそのまま職になるなんてこともよくある事なので、誰しもが有能なスキル、または有効な組み合わせのスキルを願って神に祈りを捧げている。


「じゃあ行ってくるよ」


 俺はそう言って家を出た。

 だがその言葉が届く相手は居ない。


 俺の両親は二年前に死んだ。

 父さんは狩りで亡くなった。

 母さんはそれを追うかのように病気で呆気なく亡くなった。


 そんな両親に先立たれた俺は父から教わった狩猟や母から教わった薬草採取などで何とかお金を稼ぎ生きてきた。

 片田舎ということもあり、ご近所さんも良くしてくれたため、何とかやってこれた。


 そんな貧しい生活とおさらばするために、神殿へと足を運んだ。


 ◇


 ◇


 神殿に到着した。

 そこには様々な様子の子供たちがいた。

 欲しかったスキルを授かることが出来てご満悦な表情を浮かべる者もいれば、自身の授かったスキルに納得がいかず泣き喚いている者もいる。


 そんな光景を目にしてしまい、少し不安が煽られる。


「次の人どうぞー」


 そんなことを考えているうちに俺の順番がやってきた。


「はいそこで止まって。目を閉じて神様に祈りを捧げてください」


 俺は言われた通りに神様に祈りを捧げた。


 すると、身体が温かくなり、スキルを授かったことを感じることが出来た。


「スキルを無事授かったみたいだね。次はこれに手を乗せてくれるかな?」


 差し出された真珠の様な珠に手を乗せる。

 これは鑑定を行うための魔道具だ。


「んん……反射と回避か。これはまた相性の悪いものを……」


 神官は新たに成人を迎えた者が授かったスキルを記録している。

 有能なスキルを授かった者は王家に報告され、専属の仕事を与えられることもあるからだ。

 決まったスキル構成でないと出来ない仕事もある。

 例えば魔法を発動させるスクロールなんかは魔法系スキルと付与のスキルがないと作れない。

 そういったような有用性のあるスキルを授かった者は王家から仕事を与えられるなんてこともあるのだ。


 だが神官の表情が曇る。

 反射と回避。

 それが俺が授かったスキルのようだ。


 反射はダメージを食らった時にダメージを相手に跳ね返すというスキルだ。体力自慢の盾職が持つと非常に便利なスキルだ。


 そしてもう一つは回避。

 これは文字通り攻撃を避けるスキルだ。


 この相性の悪さでは、神官が顔を曇らせるのも頷ける。


 反射は攻撃を受けて発動するスキルだが、回避は攻撃を躱すスキルだ。

 アンチシナジー極まりない。


「大丈夫ですよ」


 それでも俺はめげない。

 むしろ考え方を変えれば、お得かもしれない。


 回避は有用なスキルだが絶対では無い。

 何かの攻撃を食らうこともあるだろう。

 そんな時に反射が発動する、そう考えるとそれほど悪い組み合わせでもない気がした。


「そうか。気を落とさずに強く生きろよ」


 この様子では王家からお呼びがかかるなんてこともないだろう。

 神官から励ましの言葉を頂いて、俺は神殿を後にした。


 ◇


 ◇


「ただいまー」


 俺の家はこのカヅラの町の外れの方に位置している。

 今は俺しか住んでいないが両親が残してくれた立派な家だ。その広さに偶に寂しさを覚えることもあるが、もう慣れた。


 とりあえず着替えて、夕食の準備をする。

 2年も一人暮らしをしていれば自然と家事は身に付く。


 俺は軽い食事を取ると、自室に戻る。

 ボフンとベッドに倒れ込むように転がり込んだ。


「とりあえずハズレではないから良かったな」


 2つもスキルを授かることが出来た。

 そして反射も回避も戦闘用のスキルだ。

 このスキル構成では魔物などを狩って生計を立てるのがいいだろう。


 父さんと母さんから教わった技術にまだまだお世話になることになりそうだ。


「父さん、母さん。俺成人したよ。神様から授かったスキルはちょっと相性が悪いみたいだけど頑張ってやっていくよ。だから、これからも見守ってください」


 俺は神殿で行ったように、目を閉じて天国にいる両親に語りかけた。

 当然、返事などあるわけが無い。

 だが、すぐ近くで両親が見守ってくれている気がした。


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