第90話〜【母なる魔樹の森】
…………。
『ここ最近、特に密猟者たちが活発でね。前までは装備も大した事がなくて、月に2、3回来れば多い方だったんだけど…』
トレンさん曰く、今回はこれまでとは質が違ったんだって。
装備もしっかりしていて、人数も10人以上。
森に入る数日前から森の外周の拓けた場所で野営していて、地形を見て回ってたんだって。
森を探索していたのはトレンさんも気付いて見張ってたらしいんだけど、森には希少な薬草も生えてるから、それの採取の可能性も考えて手を出さなかったんだとか。
『誰彼構わず手を出してしまっては討伐隊が組まれるかもしれないし、それだと私一人じゃ守りきれない。仲間に手を出さない限りは邪魔をしないようにしてたんだ。けど…』
長年森を守ってきたトレンさんの存在は、密猟者たちにも知られてたみたい。
トレンさんが見張ってた人達は実は陽動で、気配を隠した人達が一斉にトレントの苗木たちをさらって逃げちゃったんだって。
しかも色んな方に散らばって逃げられたせいで追いかけるのも難しい。
それに追おうとしたトレンさんを陽動してた人達が邪魔してきたせいて、逃げられちゃったんだって。
『動きが素人じゃなかった。あれは訓練された者の動きだったね。ただの密猟者や冒険者じゃあんな動きはできない。してやられたよ。……今回ばかりは面倒なことになりそうなんだよね』
トレント同士は、離れた所にある木々でも地面の中では根が届いているのと同じように、目に見えなくとも不思議と繋がってるんだって。
それに見た目はほとんど木だけど、モンスターなだけあって割と意識ははっきりしてるんだとか。
繋がりを辿ってトレントたちの元へと向かい、直接語りかけて苗木をさらった密猟者を追っていたんだって。
さすがに携帯とかネットみたいな便利な繋がりではないみたいだね。
そうやって【母なる魔樹の森】から少し離れた位置にあるこの【トレントの森】まで密猟者たちを追ってきたトレンさん。
けどトレントの森を抜ければほぼ繋がりはなくなる。
さっき話してたトレントも、この森の一番外側のトレントだったんだって。
そこで偶然出会ったわたしたちに、一か八か密猟者たちを見なかったかを聞きに近づいた、と。
残念ながら【トレントの森】に来るまでに、それらしき人達とはすれ違ってないんだよね…
そう伝えると、トレンさんは残念そうに肩を下ろした。
うーん、なんか言葉が通じるし、仕草も人間っぽいから木のうろとか凹凸で出来た顔に人の顔がうっすら見えてきた気がするよ…。
そんな事を考えてたわたしの耳に、とんでもない言葉が飛び込んできた。
『母はずっとずっと長い間孤独だったから、ものすごく寂しがり屋なんだ。私が生まれ、少しずつ仲間が増えて、喜んでた。けど繋がりで苗木たちがさらわれたのを感じて激怒してる。このままだと魔王化しかねないし、母の感情に当てられたモンスターが凶暴化しつつある。早く苗木たちを取り戻さないと、スタンピードみたいな事が起きかねないんだ』
な、なんだってー⁉︎
Σ(°△°)ぴょ⁉︎




