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第88話〜トレント(特異種)

…………。


襲いかかってくる事もなく、むしろゆったりと歩きながらトレントが近づいて来る。


その姿は見た目だけじゃなくて、なんとなく仕草が人間っぽい。


というか動きが滑らかで中に人が入ってる着ぐるみだって言われたら信じちゃいそう。


敵意のないことをアピールしてるみたいに両手を広げて、距離も少し遠目な所で立ち止まったよ。


あ、なんかゆっくり左腕を曲げて、胴体部分にある穴……ウロの中に入れたね。


一応危なかったら守れるよう身構えて…ん?果物?


「カカカ!」


あ、リンゴだ!


ガサガサと胴体にあるウロに腕を突っ込んだトレントが取り出したのは、瑞々しいリンゴみたいな果実だった。


いや、この世界だとリンガ、だったかな?


ツヤツヤしててすごく美味しそうだよ!


…………。


ちなみにこの世界にあるものの名前って、基本的に元の世界にあるものは全部同じ名前に変換されて聞こえるんだよね。


言った瞬間に言葉が自動翻訳されて聞こえるの。


これは女神様から貰ったスキル?のおかげらしい。


わたしが相手の言ってる事を理解したいと思えば全部元の世界の言葉で理解することができるの。


話そうと意識したらわたしの声も相手に伝わるみたい。


小鳥のモンスターが喋ったら色々と勘繰られるから白夜ちゃんに話すなって言われてるから話さないけどね!


ルナちゃんやテイムされた仲間たちにしか普段は言葉は伝わらないようにしてるよ!


可愛い動物とかとはたまにお話するけどね!


おっと、話がそれたね。


前に白夜ちゃんに教えてもらったんだけど、スキルの効果とかって全部管理者?って言われる、この世界の神様たちが調整してるんだって。


それぞれの世界に共通に存在する、もしくは似通った物の名前はスキルを通すと全部馴染みのある方の名前に聞こえるようになってるの。


けどたまに一部、管理者のミスでバグとか誤変換が起こる事があるんだって。


あとたまに管理者の茶目っ気で一部を変更したり。


で、管理者の一人がとある世界の創作物にはまっていて、その創作物の中でリンゴはリンガって呼ばれてたんだって。


だから、スキルを通してこの世界のリンゴを発音したり聞いたりするとリンガって変換されちゃうんだって。


以上、白夜ちゃんから聞いた豆知識!


(°△°)ぴょ!


…………。


トレントはゆっくりとリンガを持った左手をルナちゃんに向かって伸ばしてくる。


頭もコテンと倒して、「食べるかい?」って言ってるみたいだね。


え、やだイケメン?


妙にイケメンオーラみたいなのが見える気がする!


いい人そう!


表情があったら爽やか系のお兄さんだよ!たぶん!


食べ物をくれる人に悪い人はいないもん!


『ふん、相変わらずだな』


「カカ?カカカカ⁉︎」


スタッとわたしたちとトレントの間に白夜ちゃんが着地した。


そして親しげに話しかけたね。


え、知り合いなの?


『ふん、お前は少しくらいは人の話を聞け。人型のトレントについては話してやっただろう。此奴はトレントの変異種の中でも特に変わり種だ。人の魂を持って生まれた、言わば特異種よ』


特異種?


ってそれ、わたしと同じ転生者ってこと⁉︎

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