第83話〜ゴロツキ冒険者A B Cの末路(下)
そして話は当然の如く悪い方へと転がっていく…。
…………。
冒険者ギルドにやって来た猫人族の小娘め。
全身に負った怪我の治療費は決して安くはなかったし、傷だって完全には治らなかった。
これではまともにクエストを受ける事もできやしない。
ヤブ医者が大した怪我でもないのに気軽にポーションなんかを使ったせいで余計な借金まで追う事になった。
それになぜ俺たちがギルドの修繕費を払わないといけないのか。
壊したのは手を出して来たあの小娘の従魔だろう。
こっちこそが被害者だ。
雑魚モンスターを連れたガキが冒険者になるとか言ってるから、先輩として親切に止めてやろうとしただけじゃないか。
テイムされたモンスターとは言えモンスターはモンスター。
討伐したって感謝されこそすれ、文句は言われる筋合いはない。
全部あの獣人の小娘のせいだ。
やはり獣人にはろくな奴がいない。
昔みたいに全員奴隷にされちまえばいいんだ。
今でも奴隷として売ればそこそこの額になるらしいぞ。
むしろ大っぴらな奴隷狩りが禁止されてからは闇取引で高い額がつくようになったらしい。
あんな小娘でも獣人の餓鬼を奴隷にすればこんな借金なんて簡単に返済しておつりがくる。
そういえばテイムされたモンスターを欲しがる好事家なんてものもいるらしい。
あんな雑魚モンスターでもいい金になるんじゃないか?
…………。
そんな内容の事を口汚く吐き出していった。
酒に酔った男たちの話はどんどんと加速していく。
酒場には他の客がいるなんてことは頭から抜け落ちているようだ。
完全な逆恨みで男たちは獣人の少女、ルナをさらう計画を立てていく。
テイムされたモンスターにズタボロにやられた事は完全に忘れているようだ。
実に愚かで、考えなしな事である。
あの時点では一般人だった子供に自分から絡みに行っておきながら返り討ちに合ったのだから完全に自業自得。
怪我の治療に関しても、実際にはすぐにポーションを使わなければ酷い後遺症が残るレベルだったのを適切な判断で治療してもらい、なんとかその程度で済んだのだが。
酔った勢いとはいえ、子供をさらって奴隷として売り払う計画を周りの目や耳を気にせず平然と口にする行為。
ただでさえ犯罪の計画であり、さらに未だデリケートと言ってもいい獣人奴隷の話である。
聞く人が聞けば問題にならないわけがない。
この街のギルド長は猫である。
当然獣人奴隷に関する問題には厳しく取り締まっている。
大陸を巻き込んだ戦争の事は街の住民だって知っている。
そして当たり前だが、この街にだって人族以外の種族は沢山いるのだ。
さらに言えば、獣人は種族問わず結束力が強く、子供を大切にする。
「おいおい、聞き捨てならねぇな」
「獣人奴隷がなんだって?」
同じ酒場にいた2人組の男たちが『ドラゴンキラー』のいるテーブルまでやってきた。
ギルドでルナたちと食事をした2人だ。
酒に酔った3人は突然話に割って入って男たちに食ってかかろうとしたが、顔と、そして頭の上を見た瞬間に顔を青褪めさせて口を噤んだ。
Aランク冒険者チーム『雷光』。
第一線を退き、今は後輩の育成とギルドの秩序を守るために王都から派遣された¨獣人の¨冒険者である。
「俺らのいない時ばっか狙って問題起こしやがって」
「しかもよりによってさらって奴隷にするだぁ?お前ら覚悟はできてんだよな?」
「ちょ、ま」
「「ぎゃーーー⁉︎」」
…………。
『雷光』の2人にたっぷりとお灸を据えられたゴロツキたちはさらに治療費が嵩み、その後しばらくの間はクエスト漬けの毎日を送る事になった。




