第59話〜神様と小鳥(下)
…………。
『与えられた能力の詳細と貴女の体に起こっていることの説明は、長くなるので後ほど直接知識として頭に植え付けておきます。現実で起きた時には自然と解るはずです。不具合も調整しておきましょう』
植え付けるってなにそれ怖い…。
でもわたしの体に起こってること?って言い方は気になるかな。
それに不具合?
能力だけじゃないの?
それも起きたらわかるのかな。
聞きたかったけど、段々女神様の姿がぼやけてきてる。
そろそろ時間なのが何となく分かった。
…………。
『重ね重ね、申し訳ありませんでした』
そういって女神様が頭を下げる。
こんな小鳥相手にもちゃんと頭を下げてくれた。
女神様なのに。
ぴょ〜。
真面目すぎるくらいに真面目な人、神様なんだね。
それに話を聞いてて思ったけど、女神様はまったく悪くない。
職場に似たような人いたのを思い出す。
真面目で、丁寧で、仕事の要領はいいのにいつも貧乏くじを引いてた人。
悪くないのに仕事ばかり増やされて。
自分の仕事でもないのに謝りに行かされて。
頑張ってるのにその手柄は他の人のもの。
仕事に困ってたら手伝ってくれて、丁寧に教えてくれたすごく優しい先輩。
わたしが死ぬ少し前に体調を崩して辞めちゃったんだよね…。
…………。
目の前の女神様の姿が、先輩の姿に重なった気がした。
女神様は神様だし、大丈夫かもしれない。
けど、だからって理不尽な目に遭うとか、報われないとかはダメ!
その気持ちをどうにか伝えたかった。
小鳥になってからあまり難しいことは考えられなくなったけど、率直に思ったことを伝えようと思った。
「女神様のおかげで毎日が楽しいよ!ありがとう!」
わたしの口から出てきたのはそんな言葉。
小鳥に生まれ変わって大変だった事はいくらでもある。
でも前世の忙しいだけの空っぽの毎日に比べたら、いい意味で刺激的な日々。
生きてるって実感できる鳥生。
言葉にするのは難しいけど、女神様は考えてる事とか気持ちが分かるから、まっすぐに伝わってくれてたらいいな。
『……っ、初めてそんなこと言われましたよ』
綺麗な女神様の顔に、人間味のある表情が浮かんだ。
困惑するような、どこか泣きそうな、けど少し笑っているような顔。
どこかで見たことのある顔だ。
どこでみたんだっけ?
『……。本来ならあまり宜しくありませんが、少しぐらいの勝手は許されるでしょうか』
女神様が小さく何かを呟いたのが聞こえた。
『貴女の新たな生に祝福を』
女神様が近づいて来て、しゃがみ込んだ。
それからわたしの頭にそっと、優しく指先で触れて…
そこでわたしの視界がどんどん歪んでいって…
ちょっとだけ前世の事を思い出した。
あの少し困ったような、泣きそうな笑顔。
あれはーーさんが仕事を辞める時、これまでの感謝を伝えた時の……




