第56話〜ねむねむ
…………。
ガタ……ゴト……ガタ……
馬車が揺れる。
街に向かって進む。
わたしたち、というかルナちゃんは荷台の空きスペースにスポッと収まってるよ。
街と街との行商だから荷物も一杯だったけど、ルナちゃんは小柄だからね。
むしろ狭い空間は落ち着くみたい。
(°▽°)
サリーさんの引く馬車はそんなに速くないけど、一定のペースで穏やか。
それでも普通に歩くよりは速いんだよね。
こっそりシルとライムが回復してるみたいだし、少しくらい早く着くかな?
うーん、毛づくろいと回復、浄化のコンボで毛並みに艶が戻ってきらめいてるよ!
あとでまた飛び込んでこよっと。
「おやおやサリー、いつも以上に張り切ってるようだね!でも急がなくてもいいよ。どっち道この先の空き地で夜営するからね!」
街まではまだかかるみたいだね。
車輪の取り換えとかに時間かかったもんね。
ちなみに白夜ちゃんは馬車の幌の上で丸まってるよ!
あとでもふり……一緒にお昼寝しよっと!
…………。
…………。
…………。
「ぴょ〜(そっとだよ?ふんわり包む感じでね)」
「こ、こう?」
わたしの全身をやわらかい手のひらが包み込む。
「ぴょ!(いい感じだよ!そのまま、そのまま)」
ルナちゃんの子ども特有の高めの体温が心地いい…。
まるで干したばかりのふんわりしたお布団に包まれてるみたいだよ…。
「ぴょ〜…(気持ち、いい、よぉ…)」
今はルナちゃんに小鳥の正しい持ち方を教えてるとこ!
前の失敗のせいか、おずおずとわたしを手のひらに乗せてたルナちゃんだけど、コツが掴めたのか段々上手くなってきたよ。
よく考えたら小鳥=わたしみたいに意思疎通ができるんだから、嫌なこととか逆にやってほしいことが分かるのって便利だよね!
ぴょ〜…あー、そこそこ…
ルナちゃんの指がゆっくりとわたしの頭や背中を撫でていく。
あー……耳の辺りとか、頭の後ろ〜…
普段カキカキしてるのと違った感覚がクセになるよぉ…
「マール?」
手のひらに包まれながら、ちょっとだけ揺れてるのがいい感じ。
あったかくて、ゆらゆらしてて、ママンの下で丸まってた時を思い出す。
安心、あったか、ねむねむ…
「ぴょ〜……」
「ねちゃった……。マール、かわいい」
あったか、ふわふわ、ゆらゆら、ねむねむ、夢の中。
わたしはルナちゃんの手のひらの中で眠りに落ちていった。
…………。
ーーー……?……えま……か?今あ……たの……に…
あったかふわふわの中でゆらりゆらりと眠っていたわたしに、どこか遠くから声が聞こえてきた。
なんだろう?
ほとんど聞き取れないけど、知ってる声のような…
ーーー聞こえますか?今貴女の脳に直接語りかけています。
ぴょ⁉︎




