第20話〜猫耳少女の不運(上)
いつもと違って三人称視点です。
(上)(下)の2話で投稿します。
ほのぼの要素がほぼないので、最悪読み飛ばして下さい。
鞭で打たれるなどの表現があります。
◇◇◇
ルナはガタガタと揺れのひどい馬車の荷台で膝を抱えていた。
耳はぺたりと倒れ、尻尾は両腿で挟み込み、荷台の隅で震えている。
幌で覆われた荷台の中は大きな檻になっており、そこにはルナ以外にも10歳前後の少女達が5名ほど。
ルナを含め全員が粗末なぼろ切れを着させられ、首には鉄の首輪を、手足には枷を嵌められ自由を奪われていた。
獣人はルナだけで、他はみんな人族の子供だった。
みな、人攫いに遭ったか、人買いに売られたのだろう。
奴隷商人はどこの国にもいる。
程度の差はあれど、子供は高く売れるのだ。
しかし奴隷を扱うにも国ごとに決まりがある。
幼いと言っていい少女達ばかりが集められたこの荷馬車は、明らかに違法なものだった。
◇◇◇
ルナは昔から不器用で人見知りな子供だった。
そして獣人としての能力が同い年の子らと比べて劣っていた。
足の速さも、腕力も、戦闘技能も。
獣人というのは種族によって違いはあれど、大概の場合は実力主義である。
そして自然に生きる者として狩りを重んじる。
どんくさく、一人では満足に狩りも出来ない。
身体も同年代の中でも一回り小さく、いつも自信なさげ。
数少ない集落の子供の中ではいつもからかわれ、馬鹿にされ、人見知りなこともあってルナはいつも一人だった。
唯一ルナを理解してくれたのは双子の姉だけだった。
両親は数年前に魔物に襲われて死んでしまい、幼い姉妹は2人きりで寄り添うように生きてきた。
ルナと違って出来のいい姉は大人に混じって狩りに出て、生活を支えてくれた。
だからこそ、ルナの出来の悪さが浮き彫りになり、そしてより孤立してしまったのは不運としか言いようがない。
◇◇◇
努力家なルナは人一倍がんばってきた。
しかしどうしても集落でルナの次にどんくさい子にも一歩おとる。
そして致命的に狩りが下手だった。
ルナはどうしても生き物の命を狩り取るということが苦手だった。
とくに鳥やウサギなど、狩ることを考えることすら嫌だった。
がんばっても、努力しても、ルナの成長は他の子と比べても微々たるものだった。
その理由はルナの職業適性にあった。
集落で一人しかいない【鑑定】持ちに視てもらったことで、ルナは自身に向いた職業を知っていた。
それでも頑張って、頑張って、頑張って。
朝早くから日が暮れるまで頑張って。
秘密の特訓を終えて帰ると、集落が魔物に襲われて無くなっていた。




