第105話〜魔王の魔の手
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フードの人物は会話が成り立っているようで成り立たない、こちらの思う通りに動くこの街の領主に新たな薬を飲ませて部屋を出る。
頭の固い元騎士の領主は、一度この手に落ちてしまえば後は簡単だった。
今では本人も気付かぬうちに操り人形。
なまじ自意識が残っているから屋敷の使用人を含めて、周囲の誰一人として異変に気付かない。
地下にある自室に戻り、ローブを脱いだ男はにやりと嗤う。
ここまで計画通りに進み過ぎると逆に不安になるほどだった。
右手の指にはまっていた指輪を外す。
すると男の姿が一部変化した。
元々青白かった肌は青みがかったものに、そしてその頭部には一本の尖ったツノが現れる。
「嗚呼、至高なる我が主人!計画はあと少しで成ります…」
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男は悪魔族の一人だった。
悪魔族と言えば高い身体能力と高い魔法適正、魔法耐性があり、別の大陸に住む種族。
かつての戦争では悪魔王ディザスターの支配の下、暴虐の限りを尽くしたと言われている。
もっとも高濃度の魔素が無ければすぐに弱体化してしまうため、戦争の最初期に姿を消して今は魔大陸に引きこもっているのだが。
地元じゃ最恐!外だと虚弱…
それがこの大陸の悪魔族に対する認識であった。
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この男も悪魔族の例に漏れず、大幅に弱体化していた。
本来ならば他の悪魔族の仲間たちと共に魔大陸に帰っているはずだったのだが、運悪く長距離転移の範囲から漏れてしまったのだ。
魔素の薄い環境と虚弱に苦しみながら、同じく転移の範囲から漏れてしまった仲間たちと共に戦争から逃れ、ひっそりと暮らしていた。
身体能力も魔素を変換し身体強化をしていたもので、魔法についても体内で魔力を回復するのには魔素が必要。
普通の人族に比べれば数倍の身体能力と強力な魔法を使えるが、回復には何倍も時間がかかってしまう。
戦争最初期に行った悪行のせいで悪魔族に対する印象は最悪なものとなっていた。
人里近くで生きていけるわけがなかった。
故郷から遠く離れた地で、人目を避け、虚弱に苦しみながら生きるのに精一杯な惨めな日々。
そんな悪魔族の男達に転機が訪れたのは10年ほど前。
なんとこの大陸に存在する魔王の一人から使者が来たのだ。
なんでもその魔王は悪魔王と密約を交わしており、大陸の侵略を企んでいるのだと言う。
戦争が終わった今でも様々な計画を進めているのだが、悪魔王とのよしみで置き去りにされた悪魔族たちを軍門に加えたいと言う。
その魔王の支配下に加わり、計画の一つを成功させれば魔王軍幹部の座を与える、もしくは魔大陸に帰る手伝いをしてもいいと提案されたのだった。
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この男に与えられた使命は、ノーマの街の領主の洗脳とトレントを使った新たな兵器の開発だった。
トレントの【擬態】の性質を上手く使えば、攻撃的な個体や罠に使える個体、特殊な毒や薬物を生み出す個体が出来る。
男が領主に使っているのも実験を繰り返して作り出された薬物だった。
それができるまでは回復量を見極めながら、男がつきっきりで洗脳しなければならなかった。
実験と開発は順調に進み、計画は次の段階へと進みつつあった。
あとは成果を全て魔王の拠点に移動させ、洗脳した領主やこの街の主要な人物を始末する。
【母なる魔樹の森】のマザートレントを【魔王化】し、支配下におく計画を実行している他の悪魔族の仲間とタイミングを合わせれば、この国は崩壊し魔王の支配下になるのだ。




