第103話〜魔王化、そしてスタンピード
…………。
「ぴょ!(よし、おーわり!)」
死なない程度に、かと言って大怪我もさせないように手加減して、少し時間はかかったけどイノシシたち全員を気絶させたよ!
もう夕方なのと、体が大きかったこともあって、小さな小鳥が相手だって気付かなかったみたいだね。
「マール、すごい!」
えへへ、ルナちゃーん!
わたしのことをキラキラした目で見てるルナちゃんの胸、ではなく耳の間に飛び込む。
ふふふ、ふわさらだね!
体を動かした後のもふもふはたまりませんよー。
さてさて、これでお仕事はおわ
ーーーグルルル
ーーーギィナアアア!
ーーーバルララァ
おやおや?
なんか森の至る所からモンスターの鳴き声、というか雄叫びみたいなのが聞こえてきたよ?
それになんか空気がピリピリしてるような…
「うぅ…!」
ぴょ⁉︎
ルナちゃんが頭を押さえてしゃがみ込んじゃった!
「トレントのお母さん、おこってる…!なき、さけんでる…!」
ルナちゃんの耳がペタンと倒れる。
そこに挟まってたわたしはコロンと落ちそうになって左肩に着地する。
「ぴょ〜?(もしかして魔王化ってやつ?スタンピードが起きちゃうの…?)」
トレンさんと白夜ちゃん。
2人とも急いで向かったみたいだけど、マザートレントの大きさから言って、まだまだ声の届く場所までは距離があるんだ。
…………。
とぅ!
ジャンプして近くのトレントのてっぺんまで上がる。
ここは、この森はもうマザートレントの下。
空を隠すように、真上にはマザートレントの枝と葉っぱがドームのように覆っている。
それがわさわさと、揺れてる。
鳥になってから良くなった目が、その様子を鮮明にとらえる。
雲より高い、遠目からだからゆっくりと、けれど実際はもの凄い勢いで枝を振り回してるんだ。
まるで髪を振り乱して絶叫するみたいに…
空気のピリピリがどんどん強くなる。
わたしの下のトレントも揺れてる。
モンスターたちの雄叫びもどんどん増えていく。
ど、どうしてこんな急に…?
話は簡単にしか聞いてないけど、まだ何日か猶予はあったんじゃなかったの?
まるで…
まるで誰かが意図的にマザートレントを追い込んでるような…
「ま、マール…!」
「ぴょ!(ルナちゃん!)」
耳もシッポも縮こまった、怖がるルナちゃんの胸元に飛び降りる。
ルナちゃんはわたしをキャッチすると、やや強めにギュッと胸に抱いた。
ルナちゃんの震え、そして大地そのものの揺れ。
この森は、【母なる魔樹の森】の大地はマザートレントの根の上。
これはマザートレントが動いてる余波でしかないんだ…!
魔王化っていうのがどういう現象なのかは正直分からない。
けれど、このままマザートレントが暴れ出したら…
遠くから、近くから、地響きみたいな足音が聞こえてくる。
マザートレントの魔王化に感化して…
スタンピードが、始まっちゃったんだ…!




