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第99話〜Sランク冒険者

「日々を怠惰に過ごしておるから兆候を捉える事ができんのだ」


「も、申し訳ありません、お師匠さま…」


シラスは借りて来た猫のように小さく縮こまり、椅子の上にお座りする。


その姿は厳しくも尊敬する師にサボっている所を見られて叱られるのを待っているよう、というかそのものだった。


Sランク冒険者【不滅】のトコハル。


【龍撃】、【魔王狩】、【導く者】など多くの逸話と二つ名を持つSランク冒険者。


かつて大陸を滅ぼそうとした龍を撃退し、その際に死ぬ事も出来ず永遠に苦しむ呪いを受けながらも気合で呪いを克服し、【不滅】の性質を得た超越者。


Sランク冒険者でありながら、大陸全土を放浪して有望そうな人材を育成しては去っていく変わり者でもある。


弟子の数は数十とも数百とも言われており、中には王族や闇ギルドの幹部など、口外できない類の弟子もいるとかいないとか。


何を隠そうノーマの街のギルド長であるシラスもトコハルの弟子の一人である。


「【母なる魔樹の森】の不可侵は徹底させるよう言っておいただろうに。あの寂しがり屋が【魔王化】したら面倒なことになるぞ」


「お、おっしゃる通りです。と、ところで、お師匠さま。トレントの件はどうやって知ったんですか?」


ギルド長であるシラスですらつい先程聞くまで知らなかった情報を、大陸中を放浪しているトコハルがどうやってこの早さで知る事ができたのか。


そして手紙やその他の伝達手段ではなく直接現れたのか。


「わしには大陸中に弟子がいるからのぅ。お前のようにのんべんだらりとしとらんで、しっかり日々を生きておる弟子たちが。どこぞの街の領主がトレントの苗木を集めようとしているなんて聞けば、この地域の特性上わしの耳にだって入るわぃ」


「なっ!この街の領主がトレントの苗木を集めさせているですって⁉︎そんなバカな!あの方がそんな事するなんて思えませんが…」


「ふむ、語尾ににゃは付けんのか?」


「ふざけないで下さい…。この街の領主をしている以上、あの方もマザートレントの事は知っているはず。それに何度も顔を合わせて人柄を含めてどんな人物か知っていますが、なんの理由もなく【母なる魔樹の森】に手を出すとは…」


この街の領主は傑物で知られている。


安易にアンタッチャブルに触れるようなことはするはずがない。


「だからそれ相応の理由があるか、問題が起こってるんだろうよ。ま、十中八九どこぞの魔族が絡んでおるようだかのぅ」


「……お師匠さまは、どこまで掴んでおられるのですか?」


常識の範囲ではくくれぬ師匠の一言。


何でもないような呟きはとんでもない情報ばかり孕んでいる。


「さてのぅ。あまり隠居したジジイが世に介入しては若い芽が育たん。今回わしが直々にここにやって来たのも◼️◼️の奴からの頼みでもあったからだ。……真面目な管理者様も、ようやく肩の力が抜けたと見える。しかし過保護なことだ」


「……?今なんとおっしゃいましたか?」


「こっちの話じゃ。とりあえずシラスよ。守護者には一度森に帰り、【母なる魔樹の森】の面々を説得して大人しくさせるよう伝えよ。そして先程報告に来たテイマーのルナたちには再調査及び守護者の護衛という名目で森に向かわせるといち。わしは領主の館に話を付けにいく」


「お師匠さま自らが乗り込まれるのですか⁉︎」


「わしなら万が一領主がシロでも問題にはさせんよ」


そう言ってSランク冒険者【不滅】のトコハルは、ギルド長室を去って行った。

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