表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星野模型店の女店主 ~模型と一緒に恋も作ってみませんか?  作者: アシッド・レイン(酸性雨)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/119

H社 たまご飛行機 T-4 航空自衛隊60周年記念スペシャル 2機セット  その1

「何やってんだかなぁ…」

わたしは呆れ顔でそう言った。

彼は申し訳なさそうに頭をかいている。

「あれじゃ、付き合う前よりひどいじゃないの…」

「ごめん…、美紀ちゃん」

私の言葉に、彼は謝ってばかりだ。

しかし、私だって好きで言っているわけじゃない。

ただあまりにも歯がゆすぎて見てられなかった。

前回のお出かけからつぐねぇと彼は付き合い始めたようだが、その結果がひどいのだ。

ベタベタするとかならまだ許せる。

それ見て、『リア充爆発しろ』とか言ってからかって憂さ晴らしも出来る。

しかしだ…。

付き合う前より、意識しすぎで何も出来ないで見詰め合うだけってのはなんなのよっ!!

二人だけの空間作るのも許そう。

今まで大変だったから、少しは幸せの気持ち味わいたいのもわかる。

だけど…。

だけどね…。

見詰め合ったまま、真っ赤になって固まって時間が過ぎていくあの…そうあの独特の雰囲気はなんなのよ。

この前なんか、どれくらい間が持つか様子を見てたら、1時間近くそのままって…。

もう、中学生の初心なカップルよりひどいじゃないのっ。

「もうっ。駐車場で抱き合うほどの仲なんでしょうがっ!!」

我慢できずにポロリと言ってしまう。

その言葉に、申し訳なさそうにしていた彼の表情が驚きへと変わった。

「あ、あ、あれ…み、見てたの?」

おろおろしだす彼に、ちょいちょいとカウンターの近くに来るようにジェスチャーをする。

驚いた表情のまま彼が傍に来ると、すーっとそこから駐車場の方を指差す。

「あー…。丸見えだ…」

彼はそれだけ呟くようにいうと、がっくりと肩を落とす。

「もう。もう少ししっかりしてください。つくねぇの事、大好きなんでしょう?」

「も、もちろんだ。つぐみさんの事は大好きだ」

はっきりと言い切る彼。

なのに…。

「ならなんでああなるのよ」

私の言葉に歯切れ悪そうに彼が言う。

「いや、何を話したらいいのか、どう接したらいいのかわかんなくなっちゃって…」

私は頭を抱える。

そんなところからですか。

あなた達、いくつなんですかっ。

20代の付き合いだしたカップルじゃないんですかっ。

なんだか私、中学生の恋愛相談受けてるみたいな心境になってしまった。

いや、今時なら、小学生だってもっとまともなお付き合いするだろう…。

しかしだ。

このままではこっちも困る。

実際、南雲さんからもどうにかしてくれと私の方に連絡が来ている。

まぁ、秋穂さんは現状を楽しんでいるようだが、当人を姉に持つわが身としては、なんとかして欲しい。

うーん…。どうしょう…。

そう思って何気なく周りを見回す。

そして、ふと1つの模型で目が留まった。

そうよ。

一緒に過ごす時間があればもっとうまくいくんじゃないかしら。

それも、隔離された空間で。

ただし、私達の監視できる場所でだが…。

そう考えると、なかなかいい考えのように思えてきた。

よし。そうしますかっ。

「もう仕方ないなぁ…。まず確認するけど、時間は取れるわよね」

「ああ、仕事帰りでよければ1時間程度は…」

「ふむふむ。それと今、急いで作る模型なんてないわよね?」

「急ぎはないなぁ…。遣り掛けのはあるけど、急いで完成させる必要性はないし…」

そう確認すると、私は決めた。

これを実行するしかない。

「よく聞きなさいよっ。いい、この美紀様がナイスでベストでいいアイデアを教えてあげるから、敬い諂いなさいよっ」

彼にそう言うとえっへんと胸を張る。

「おおおっ…。神様、仏様、美紀様っ」

拝むような格好をしつつ、そう言う彼。

なんか彼もノリノリである。

あ、なんか楽しいわ、これ…。

南雲さんとの会話も楽しいけど、彼との会話もすごく楽しい。

はっ…。

いかんいかん。

そういう場合じゃなかったわ。

我に返ると私はその模型を取って彼の前に出した。

その模型は、それほど大きくないサイズでカラーイラストで2つの飛行機と女の子の絵が描いてある。

そして、


『たまご飛行機 T-4 航空自衛隊60周年記念スペシャル 2機セット』


と、商品名が付いていた。

「これ…H社の限定たまご飛行機だよね…」

「そうよ。これを使うのよ」

しばらく考え込む彼に、呆れつつもとんとんとんと商品名の一部を指先で叩く。

『2機セット』

それを見て、やっと彼は理解したのだろう。

表情が明るくなる。

「やっとわかったかっ」

「ああ…。なるほど…」

「今度機会を用意するから、つぐねぇと作業室で1機ずつ一緒に作ってみたら?これだったら、つぐねぇも問題なく飛びつくだろうし、何話していいかなんて考え込むこともないでしょう?だからいいんじゃないかな」

一緒にって所を強調して言う。

それを聞いて彼が私に両手を合わせて拝むような格好をした。

「ありがとう。美紀ちゃん…」

そんな彼の様子に、私はノリノリで答える。

「うまくいったら、間宮館でジャンボパフェよろしく!」

間宮館とは近所の喫茶店で、この前、つぐねぇが修羅場を演じた場所でもある。

ちなみにジャンボパフェとは、通常の3倍以上の量を持つパフェで、女の子の憧れであると同時に体重計の強敵でもある。

まぁ、私の場合は、身体動かすし、問題ないけどね。

ちなみに値段は3000円近い…。

「わかったっ。うまくいくなら、安いもんだ」

「ふふふっ。商談成立ね。あ…あとこれの代金もよろしく~♪」

そう言って出した模型を指差す。

「ああ。払うよ。もちろんだっ」

彼はそう言うと財布を取り出した。

ふふふっ。

これで二人の問題はなんとかなるメドも立ったし…。

店の売り上げは上がったし…。

私もジャンボパフェを食べられるし…。

『三者三徳』とはまさにこのことよね。

私はそう心の中で思ったのだった。

さて、告白して付き合うようになってからも相変わらず(以前よりタチが悪い現状)の二人ですが、愛のキューピット美紀ちゃんの策はうまくいくのでしょうか?

次回お楽しみに…。


なお、ブックマーク、評価、感想などお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ