(3) 三人の冒険者
(3) 三人の冒険者
Les Trois aventuriers
3人は私達の話を小耳に挟んだようで話しかけてきた。
そろそろ来客もありそうなので、4人でフードコートの喫茶に移動する。
まだ開いていないが、ソフトドリンクはセルフで飲める。代金はカウンターの箱にいれ、あとで食器を洗えば良い。隣に髭親父がいるから普段無茶をする客はいない。
冒険者の身分は決して高くない。農民から見れば定住しないヤクザな輩である。
しかし、それなりの戦闘力を持ち、みな矜持は高かった。
「ブリー村の東の丘、コーンウェル農場のヴィクトリアです」
「キニスン家の長女、剣士のユリア」
身長は180cm弱、長い四肢と引き締まった肉体を持ちクレイモアを背負った戦士職だ。金髪ロングを一つに束ね、腰は細く、出るべき所は出ていた。
「次女、弓使いのエスターよ」
弦を外した合成弓を背負い、175ほどで弓を引くに適した胸の所有者である。
三人の中では小さいがスマートなバトンを持った最後の少女も170近い。
「魔法はお任せ、三女のエイダ。三人合わせてぇ美少女姉妹、P……」
「あまえら、全員二十歳すぎだろうが!」
冒険者ギルドの親父は見事な連携で完全に沈黙した。
Pってなんだろう。それが気になる。
「それで君は都に行くんだって?」
ユリアがアップルティーを手に話しかけてきた。
私は肯定し、行方不明の両親の件を説明した。
もちろんクエストのことには触れない。それはNPC、この世界の人々には関係のないことであった。
「私達も都へ行くのよ」
エスターはミルクティー。
「王の名でぇ冒険者募集が行われ、ぶっ」
エイダはスルグーにむせ、砂糖を足す。
私は話せる限りの事情を正直に説明し、同行をお願いした。
旅の最終目的は行方不明の父と母の捜索で、都にその情報があるということにする。
そして馬車を提供できることと下級モンスターならペットで始末できることを付け加えて。
これは極めて勝手なお願いなのは承知していた。
ギルドを通して護衛の依頼を出せば4,5日かかってしまう。そしてまさか髭親父の目の前で頭越しに契約を結ぶわけにもいかない。まあ、本人はまだ意識がないのだけれど。
三人は顔を見合わせている。
ユリアが代表で話すようだ。
「表の二頭立て馬車あなたのでしょう?」
「ええ」
荷台が狭い6人乗りのワゴンは田舎としては乗り心地が良いし、持ち主が農民なら大積載量持ちと決まっていた。
「乗せていただけるなら、同行はこちらからお願いする。お猿さんにも誘われたし」
あのエロざる!
まあ、実際には頼む手間が省けたので。
「では、よろしく……」
「チョット待って」
「なんでしょう」
「あなた、冒険者ギルドに入らない?」
「ええっ?」
確かに私はなんのギルドにも加入していない。農民ギルドは存在しないからだ。
それはまあ仕方のないことである。成立すればトラブルは必至なのだから。
たとえば商人ギルドは、だまってはいない。
それに貴族、領主、さらに王族だって元をただせば地主の親玉にすぎない。住民の多数を占める農民の長が誕生するなら、それは王そのものである。
だまっている私に三人が説明してくれたのは次のようなことだった。
一般には戦闘力に応じてCクラスから始まると思われている冒険者ギルドにはDクラスが存在している。それはパーティーでのポーター役でありアイテムボックスの積載量の多い者がスカウトされた。商人出身が多いのは旅慣れているためで、農民出身でも参加は可能である。
私へのメリットは通関が簡単になること、パーティーが組めるので防御や回復の範囲魔法の恩恵を受けることができること、それに都からさらに旅を続けるなら冒険者の資格がとても役に立つことである。
言われてみれば、納得するしかない。都ならサイトシーイングと言えば入れてくれるだろうけど、私の旅がホリイ王国内で完遂するとは思えない。
農婦の海外旅行なんて怪しさ満点の世界なのだ。
息を吹き返した髭に加入手続きをしてもらい馬車に戻ると、三匹が酔いつぶれていた。
その後の猿の尻がいつもより赤かったのは自業自得である。