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お宝は My Memory  作者: シキナミ
第一章 さあ、都へ行こう
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(1) 農場の娘 

第一章 さあ、都へ行こう 

     Ms. Cornwell Goes to the Capital of the Kingdom 



 この世界の情報は、視野内に開くことができるゲームのようなウィンドウで確認できる。


 それほど雰囲気は重視しなかったのだろうか、MKS単位系を採用していた。


 暦は、というか単純にするため暦に天体運動を合わせたようで、この地球の公転周期、1年は360日。自転周期、1日は24時間で、衛星の朔望月は30日。そして1週間を6日にしているので1日はいつも日曜日である。水曜日はなく水星もない。



(1) 農場の娘   

    The Daughter of Farming


 今の私の名は、ヴィクトリア ・コーンウェル。ここホリイ王国南部のブリー村の人にはヴィクと呼ばれる。


 黒いショートカットヘアと茶色の目、無国籍な東洋顔で少し表情に欠けるが、日に焼けた肌は健康そのもの。身長は163cm、体重以下は秘密の芳紀まさに17才の乙女であった。

 中身は元軍人のおっさんなのだが。

 

 まあ、恥ずかしがってる場合じゃない。学生時代VRゲームで何度か女性キャラを試したことはあるし……


 行方不明の両親から受け継いだ30haほどの農園をヴィクは一人で経営していた。

 それを可能にしているのは、魔法や特殊スキルといういかにもゲーム的な能力である。


 スキルで主要なもの、栽培、植物採取、伐採、調教は上級であり、家や馬車、蹄鉄の修理用の木工や鍛冶、醸造、裁縫や調理など多種の中初級スキルをもつ。


 魔法は白黒や火水などではなく、生活魔法と農業魔法とに分類されていた。

 地味なものが多いが、使いようによっては強力なものもある。


 例えば生活魔法の雷魔法はライトでただの照明用だが、農業魔法では落雷である。

 これは空中窒素固定のために用いられ、農園にとっては肥料代の浮くありがたい能力だ。その100GWs(ギガワット秒。ジゴワットではないので過去にはいけない)のエネルギーは村全体に1日電力を供給できた。


 まあ村に家電はないので役に立つわけではない。



 しかしながら、このままでは世界を旅して記憶の欠片を探すには力不足と言わざるを得ない。

 それは欠片は主にダンジョン奥の宝箱の中やボスのドロップとして存在すると思われるからである。


 空中元素固定魔法でもあれば、戦闘力の高いこの頃はやりの女の子になれるかもしれないが。


 スキルウィンドウを閉じて仕事を始めることにする。


 今日は街へ出て収穫物などを売り、クエストを始めるつもりだ。

 ヴィクになって7日めの今朝、ウィンドウが開き王都ホルスに入るべしという最初のクエストが来た。

 期限は24日……最初24時間かと思い焦ってしまった。トウェンティフォーのカウントダウンが聞こえてきたほどだ。


 ブリーから都までは直線で北へ350km、多分東京・名古屋くらい。

 テレポ系の魔法もなく、転送装置もなく、新幹線も東名もなしでは不可能である。


 しかし24日なら、馬車もあるので障害をうまく切り抜ければ可能だ。

 戦闘力は未知数、いや、期待できない。農婦でも乗り切れる試練であることを期待するしかない。


 そもそも、人格が消えるのを防ぐための生活であるし、自分の記憶を取り戻すための活動なのだ。そうそう死んで振り出しに戻るを繰り返すことはないだろう。


 まず地下室でワイン樽をアイテムボックスに移す。

 25枠なのは初期設定のままなのだが、農民の積載量は大きい。穀物や芋など重量あたり単価の低いものを扱うので当然といえば当然である。


 実際商人ギルドでは農産物の輸送には農閑期の農民を雇う事が多い。そうでもしないと利益にならないし、それはまた貧農の救済にもなるのだ。


 樽もスタックできるのだが、白赤それぞれ4ランクに分けていく。スタックすると全てが平均化される。


 例えば大きいリンゴと小さいりんごは種が同じなのでスタックできるが、アイテムボックスから出すと中リンゴ2つになる。まるで見分けがつかない、双子のリンゴになる。


 この性質は利用価値のある場合もある。しかしワインの場合、最上級品には、ある意味、芸術的価値があり、総売で言えば上級の10%で売上の90%を占める。(ちなみに私は1本3000円位のものが好みだ)


 外に出て収穫場に向かう。

 牛と羊は犬たちが集め始めており、命令したリンゴの収穫をすでに終えた猿のリーダーが得意げにこちらに進んで来ている。

 害獣に関しては空から鷹が見張っていた。


 受粉などを担当している虫の女王たちからは昨日から産卵期に入っているので挨拶できないと連絡が入っている。


 リンゴをさっさとアイテムボックスに入れる。猿たちの選別が済んだ品で、傷んだものは彼らの取り分のため、1枠ですんだ。


 猿のリーダーが前に控えた時、犬と鷹のリーダーも寄ってくる。

 猿はオナガザル科の外観でやや薄い茶系の体毛をもち体長1.4m。

 犬は、犬というよりサイズも見た目も狼に近く灰色だ。

 鷹は灰褐色の背に、栗褐色の横縞をもつ腹部、翼開帳1.6m。


 3匹ともそれぞれある程度の戦闘力を持っているので今回の旅に同行させる予定だ。

 下級モンスターは、山の獣と違いコアを持ち魔力を秘めているが、リスサイズのモンスターが犬や鷹に勝てるわけではない。


 大群なら別かもしれないけど。


 ヘルプウィンドウを参照すると、ペットとして伴うには名前が必要らしい。

 

 なので、

「サルとイヌとトリね」

と適当につけると、私の名に桃姫が加わった。ヴィクトリア ・モモヒメ・コーンウェルである。

 もう、いっそ桃太郎と呼んでくれ。



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