06.初めての夜
さて、宿を探そう。
と言うことで俺は今、この街の大通りを歩いている。宿と思われる場所はさっき換金所に向かっていた時に見かけた。
「ここか…」
ベッドの絵が書かれた看板が出ているからほぼここで間違いないだろう。この通りの建物は石の土台に木を使って建てられている。がっしりとした気で作られているドアは意外と重かった。
「いらっしゃいませ〜!お食事ですか?宿泊ですか?」
ドアを開けると10代位の元気な女の子が出てきた。店主ではなさそうだからバイトとか店主の娘さんとかかな。
「あ、宿をとりたいのですが…」
「はーい、1泊10エギア、朝食夕食付きで20エギアだよ。何泊して行く?」
「まだ決まってないんですよね…」
「なら毎日その日の分を渡してくれればいいよ。」
そう言って彼女は俺に鍵を渡した。思ったよりずっしりしていた。
「私はリリア、あんたの部屋は3階の階段に一番近い部屋だよ。下の階の人に迷惑にならないように騒がないでちょうだいな。」
「わかりました。これ、今日の分です。」
今夜はここで夕食を頂くので20エギアを渡した。彼女はその後、食事の時間帯とこの宿のルールを教えてくれた。ルールと言っても常識の範囲の事だったが。
階段を上ると俺の部屋があった。隣に1部屋あるだけの階であった。俺の部屋は最上階な訳で屋根裏部屋を改造したような作りで、シンプルにベッド、テーブル、椅子、時計、そして観賞用の植物があった。天窓があり、開けると涼しい夜の風が吹き込んできた。掃除も隅まで行き届いていて、風通しもいいという良い部屋であった。トイレは各階にある小さな個室で、浴場は1階の奥にあるそうだ。あっ…俺は気づいてしまった。
「着替えがねぇぇえっ! ハッ…」
思わず声を上げてしまった。隣の部屋から苦情が来るかと思ったが誰も来ない。よかった… とりあえず落ち着いて夕食を食べに1階にある食堂へと降りた。
食堂はベンチ席とテーブル席があり、入って右手にカウンター席がある。カウンター席はバーのようにお酒を飲む席らしい。うっすらと顔を赤めたおじさんが座っていた。俺が食堂に入ってくるとこちらを見てきたが話しかけられはしなかった。俺はただテーブル席に座ってテーブルに置かれたメニューを見た。
[MENU]
野ウサギのシチュー 5 10 15
チャージングカウのステーキ 15 25
トマトスープ 5 10
キャロットスープ 5 10
[DRINK]
ワイン 20
ウイスキー 15
カクテル各種 15
水 5
文字はすんなりと入ってくるな。見たことのない文字ではあるけど… この5とか10とかは何だろうか。とりあえず野ウサギのシチューと水を頼もうかな。ついでにこの数字のことも聞いておこう。
「あの〜、オーダーしたいんですが」
と言って手を上げると先程の彼女が出てきた。リリアさんだ。僕はオーダーすると数字のことを聞いた。
「あぁ、これはサイズ別の値段よ。宿を食事込で取ってる人は一番小さいサイズになるんだけど、大きいサイズが欲しければ追加料金になるわ。小さいサイズでもあなたくらいの体格なら十分だと思うよ!」
そう言って彼女は奥に戻って行った。数分後、料理が運ばれてきた。たしかに小さいが十分だと思う。ご飯が食べれるだけで感謝だ。
「ん、おいしい!」
「当たり前でしょ〜?わたしが作ったんだから」
ほう、彼女の手料理なのか。それにしてもとてもおいしい。さらっと完食して自室に戻った。メニューを使いこなせるようにちょっと見てみる。
「友好度、プロフィールの所にあるやつと友好度タブの違いは何なんだろう。」
友好度タブを開いてみる。なるほど、個人的な友好度はここで見れるということか。
【友好度】
リリア:52
なるほど。多分50以上が友好的で以下はマイナスイメージがついているって感じ何だろうか。これ、メモとかはないのだろうか。メモを取りたい時とかは紙を買わないと行けないのか?
[ヴジョン]
開いた。メモ帳かな。とりあえずやる事リストを書き込んでおこう。
【メモ帳】
Title:やる事リスト
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そろそろ眠くなってきた。時計を見るともう11時だ。道理で食堂には人があまりいなかったのか。食事の時間は朝は7時から10時。昼は閉まっていて夜は8時からでラストオーダーは10時だ。ちなみに、メニューにビールがなかったがベンチ席ならあるそうで、お酒だけの注文なら正子まで受け付けているそうだ。さて、明日もやる事がある訳でそろそろ寝よう。ベッドは意外とフカフカだ。明日やるべき事を考えているうちに俺は眠りについた。