02.平均を超えたい
(ふぇぁっ!?)
俺は今、人生を左右するような決断を迫られている。
目の前には女神であると言うエアという女性が座っている。そう、この人が俺の願いを聞いて異世界に行くか行かないかを決断するようにと俺に言っているのだ。
「異世界に行ったあとのあなたはこの世界では死んだことになります。車の前にあなたが飛び出してきて死ぬっていうことになりますが、どうしますか?」
「え…あっ…」
声が出た、でもこれはそうそう簡単に答えられる話ではない。
「考える時間は必要ですか?」
「えぇ、それはそうです…けど…」
「まだ信じられませんか?」
エアはまた俺の心を読んだかのように答える。まぁ女神ならそれくらい出来ない事もないか。
そして彼女は提案する。
「なんならお試しで異世界を見せてあげましょう。」
そう彼女が言った途端、部屋の景色が変わった。草原だ、俺は草原にたっている。遠くには石壁が見える。なるほど、典型的な異世界だな。
「これは視覚操作の一種です。私達は実際はまだ部屋の中にいます。それでは動きますよ?少しビックリするかもですがすぐ慣れるので心配しないでくださいね」
そう言って│彼女は椅子の肘掛についている球体を動かした。それに反応して足元の景色がすごい速さで変わっていく。
「これが…これが僕の行ける異世界…」
「そうですよ、どうですか?」
「もしかしてモンスターとか、いるん…ですか?」
「居ますよ」
ですよね〜。俺はなんだ、勇者か?魔王が復活したとかで異世界に召喚されるパターンは俺が読んできた本の中でも珍しくない。
「俺は…勇者になるんですか?」
「別にならなくてもいいんですけど、なりたかったらなれますよ。」
「ならなくていいんですか?」
「はい、どうするかはあなた次第です。別にステータスがとびきり良いわけでもないですから。」
「ステータス…悪いんですか…」
やっと平均値の上に行けると思ったのだが…ハズレくじか… そう思うとちょっぴりがっかりだな。
「悪いわけでもないですよ、平均値です。でも伸び代はちゃんとあるので後はあなた次第です。」
「これはチャンスなんですかね?」
「あなた次第です。」
そうか、俺次第か。俺が頑張れば平均値を超えられるのか。やる価値はあるのか。
「魔法と剣のファンタジーですか?行く価値はある世界ですか?」
正直なところ不安だ。だって俺が積み重ねてきたものが全て消えてまっさらなスタートになるんだ。普通不安だろ。
「そうですね、行く価値は…あります。やる気はあるんですよね?平均値の上に行くか下に行くかもあなた次第なので。さて、そろそろ決めてもらえると嬉しいんですけど。」
「あっ、はい…」
悩む、行く価値はあるみたいだ。剣と魔法のファンタジーだ、これはチャンスだと思う。だが下には行きたくない、つまり努力は必要なわけだ。チート的能力は期待しちゃダメだったか。
「チート的能力もあなた次第です。素質はあるのですよ、ただ努力は必要ですけど。」
「そうですか、俺…俺、行きますよ!異世界、行きます!」
「では、楽しんで」
エアが微笑むと部屋は光に溢れた。いや、違う。暗い部屋から明るい草原に出されたんだ。目が眩む。
「ここが…異世界…」
ゴクリと俺は唾を飲んだ。
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