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勇邪の物語  作者: グラたん
第一章ロンプロウム編
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外伝 斎藤博文

斎藤「来たコレ! 俺のメイン回!」

斎藤「やったぜ!」

ペルペロネ「(背後でクラッカーを鳴らす)」


~嵩都


 時は俺たちがハイクフォックから帰ってきた夜に遡る。

 今日は男子勢だけでなく女子勢も集められている。

 チャットに書かれてはいたが、今日は『過去の話』をしようということで集まっている。

 そんなことしなくても俺が立ち上げたスレを見れば良い話だが、皆で集まった方が重くならずに済むという斎藤の提案だ。

 どうせ長くなるだろうということで夜の食堂を貸し切らせて貰い、机にはお菓子の袋や飲み物が沢山置いてある。ちなみに買って来たのは俺だ。感謝するが良い。



「よし、それじゃあ始めようか」



 全員が集まったと所で斎藤が切り出し、話が始まった。

 順番はくじ引きで行われ、言い出しっぺの斎藤からということになった。

 自信満々に引いて一番の栄誉を貰えるとは面白いな。



「くそぉぉ……あれは、俺が中学校の頃の話だ」



 斎藤が観念して話し始めた。その口調は黒歴史を語るように重々しい。

 斎藤が話し始めたこともあって俺たちも姿勢を正して聞く。

 だが、中学の頃だと……中二病の可能性があるな。



「もう分かったと思うが中二病だ。いや、中三だったから中三病? まあいいや。俺は毎日のように校舎を破壊していた」

「待て、経過を話せ」



 筑笹がストップをかけて説明を求める。

 確かにそれじゃあ何が何だか分からない。

 それ以前に毎日校舎を破壊して良く無事だったな。退学的な意味で。

 斎藤は頷き、何処か遠い目をして語り出した。



「……あの頃は何かが弾けていたのだろうな。俺は闇の四天王の一人『氷結帝王・ファスクナーレ』という設定だった。俺の他にも四人いて一時期は部活にさえしようと努力した」



 うわぁ、すっごい無駄な努力。しかも中二病だから痛い。

 しかし五人で活動していたなら楽しかったのだろう。

 自分でやると恥ずかしいが、他人と一緒にやると平気だと思える。

 実に良く暴走していたのだろうな。



「しかもその時のコンプセントが『悪は悪を斃す者、本当の悪は学校だ!』 だ」



 分からなくは無いが随分危険じゃないか? まあ、楽しみにしておこう。



「そして俺たちは校内破壊活動に勤しんだ」

「器物破損じゃないのか?」



 破壊活動は立派な犯罪かつテロだ。

 というかテロ活動を学生が勤しむな。親御さんが泣くぞ。



「破壊といっても嫌がらせ程度だ。プールの水を抜いたり、窓ガラスに魔法陣を書いたりした。一番苦労したのはプールの放水口にミミズを大量に詰め込んだことだな」

「さ、最悪ね」



 女子からの受けは宜しくないらしい。

 分類的にはかなり平和なテロだな。

 だが待て。いや、普通に生理的嫌悪感が……。

 しでかした後で発覚して掃除している光景が目に浮かぶな。それと大量のミミズの死骸が。



「それで他は?」

「他には職員室に忍び込み、先公が用意したテストの答案を写メしてクラスの連中にばらまいたりしたな」



 凄いけど阿呆なことをするな。

 そもそも職員室って基本的に閉まっているか他の教員がいるから難易度は高い。

 それこそ魔法を使うか誰かを囮にするかしないと無理だ。



「酷い……けど、すごい」

「よくそんなこと考えたな。ちなみにどうやったんだ?」

「ああ、簡単だ。一人が学校を仮病して休んだと見せかけて学校のロッカーに忍び込み、休み時間中に設置した時限式の仕掛けで消防スイッチを叩き割り、緊急ベルが鳴ったら俺たちはスモークを投げて辺りを攪乱。煙が上がれば火事だと思うだろ? そうすると生徒たちは我先にと逃げ出す。それに乗じてロッカーにいた一人が素早く仕掛けを回収し、職員室から出てきた先公と入れ替わりで侵入して目的のブツを写メする。その後、時間があれば先公共の弱みを探し、撤収する。そしてその写メを俺たちに散布すれば良い」



 斎藤も満更でもなさそうで少々照れている。そして自慢げに言い放つ。

 うむ、正直に頭良いけど馬鹿だと思う。



「その時は漏れなく全員満点だった」

「だろうな」



 むしろそれでミスする奴を見てみたい。



「二日後に馬鹿正直に先公にチクった奴がいて主犯の俺等は謹慎処分になった。バレたのは時限式の仕掛けの蝋から回収したあいつの指紋が検出されたからだ。アレさえなければ多分バレてなかったと思う」

『アホ……』



 当たり前だな。むしろ謹慎処分で済んだだけ有難いと思える。

 そのチクった奴も良心が咎めたのだろう。

 それで芋づる式に焙られたのだと思う。



「それで謹慎処分になった俺等は当時の担任を逆恨みして」

「おい、まさか……」



 一瞬、暴力的なことが頭を過ぎったがそれは杞憂だった。



「電話で連絡しあい、作戦を立てた」



 中二病おなじみのアレか。



「俺等は夜に家を抜け出し、校庭に魔方陣を書いた」

「だが、校舎の警備システムがあるだろう」

「それは我らの雷郷帝王が沈黙させた」



 予想はつく。恐らくエアガンで狙撃したのだろう。

 素人でも数撃てば当たるからな。防犯カメラを破壊するのは実は簡単だ。

 それか電線の一部を切れば良いだけだ。



「どうやったかは簡単だ。ハッキングした」



 予想の上を行っていた。



「いや、待て、そいつ天才じゃないか」



 中学生が学校のシステム乗っ取るとかありえないだろう。



「ああ、あいつは生粋の天才だ」



 無論、悪い方の意味で天才だ。下手をしたら個人情報とかを簡単に盗めるからな。

 最も、そんなことはしていないようだ。

 何故分かるか。俺と夕夏の個人情報を盗もうとした奴は100%俺特製のクラッキングを食らって身元情報をネットに晒されるからだ。

 ついでに言うと晒された奴は警察のお縄に付く。そういう契約をしていたからな。

 とまあ、そんなことを考えている内に話が進んでいる。

 


「前に一度ネットで大炎上してニュースにもなった事件を知っているか?」

「ああ、あれか」



 それは恐らく世間を騒がせたあの事件だろう。

 それの事件名は『政府機密情報漏洩事件ガヴァメント・データ』。

 文字通り一人の天才ハッカーが政府の機密情報をハッキングしてネット上にばらまいた事件だ。

 公開された情報は驚くべきものばかりで、中でも世界の戦争を加速させようとしていた総理の計画が明るみに出たのは日本を、そして世界を驚かせ、その計画にアメリカやフランス、ロシア、中国などの大国が加盟していたのが分かり、それを機に世界各国の反対派が団結して権力者を引き摺り下ろした事件だ。

 世界各国は内部から改善され、その半年後には戦争という戦争が無くなっていった。

 その天才ハッカーは英雄とまで呼ばれ、平和ノーベル賞を受賞した。

 しかしその本人はネットにこう書き残した。



『ハッキングしたのは気まぐれだ。平和を実現したのは平和を愛する人達が努力したからだ。私は唯のハッカーである。表に出ることは無い』



 という文章を載せて、それ以降は見たものはいない。

 世間はハッカーでありながら良い奴だったと言った。

 ハッキング自体は犯罪だが、この事件に関しては見逃す方針を政府は出した。



「そうか、そいつがか……」

「俺も協力したがな。あれはすごい緊張感があった戦いだった」



 こんな身近に本人を知る奴がいたとはな。



「待て、協力した? 一体何をしたんだ?」



 皆が疑問に思ったことを亮平が口にした。



「大したことじゃないぞ? 機密の侵入経路の確立と情報局にドス攻撃をした程度だ。ただやはり政府ともあって手強かったな。俺とあいつが組んで五回も撤退させられたのは初めてだったからな」



 ……何が大したことないのだろうか。思いっきり犯罪だしサイバーテロだ。

 それに侵入経路にはファイアウォールとかクラッキングとか時限式パスワードとかがあったはずだ。

 何故知っているか? 俺が関わったからに決まっているだろう。

 それにしてもあのサイバー攻撃って斎藤たちだったのか。道理で手強かったわけだ。

 ちなみに斎藤たちが六回目で突破出来たのは単純に俺の夜のお仕事時間が終わったからだ。朝六時には夕夏のお弁当を作るのが日課で欠かせなかったからな。

 まあ、その数時間後に事件が報道された時は驚いたけどな。意外な廻り合わせもあったものだ。

 誰も彼もがその所業に黙り、苦笑い気味になっている。



「さて、話を戻すぞ」



 そういえば、まだ話の途中だったな。

 内容が衝撃的過ぎて忘れていた。

 確か担任に対する当てつけの魔方陣だったよな。



「魔方陣の内容は罵倒か?」

「いや、その担任の個人情報を赤裸々に綴った」



 何度も言うが個人情報流出は犯罪です。



「いや、それは不味いだろ」

「流石にね……」

「ちなみに何を書いたんだ?」



 俺はそっちの方が興味ある。



「仲間に美術が上手い奴が居て、その担任の似顔絵と未だ独身だから彼女募集中と書いた」

「それで?」



 聞くのが面白くなってきた。

 こいつの周りには天才系が多いようだな。

 それもめぐりあわせと天運なのだろうな。

 そうか、逆に天才ばかりだから斎藤たちみたいに馬鹿出来る奴を求めていたのかもしれないな。



「そしてそれが学校中に出回って次の日から揶揄からかわれていた」



 ……哀れな教師だ。もう学校に来れない上に裁判沙汰に出来る内容だな。



「可哀想に」

「ちなみに彼女はできなかったらしい」

「お前も酷いことをしたものだな」

「これが今では黒歴史化している」

「そうなるわ。で、そのあとは?」

「俺等がやったのが次の日にばれて二日ほど謹慎が追加された」



 全員がああ、やっぱりなという反応を出した。



「どアホ」

「そりゃあそうなるよ」

「ついでに、次の日が雨だったから似顔絵がな……すっごい不細工になって……くくっ」

「よっぽど面白いのになったのな」

「ああ、今でも笑える」

「中々面白かった。今日はこんなもんでいいだろう」


 

 ふと、一つ質問が思い浮かんだ。



「そうそう、お前の立ち位置はどういう感じだったんだ?」



 先程から聞いているのは全て斎藤の周りの話だ。唯一自分が出てきたのはサイバーテロ事件くらいだ。 



「俺? 俺は作戦参謀だった。何かやらかす時は皇極神から命令が出て作戦を建てさせられた」



 つまりはさっきのハッキングの作戦も斎藤が立てたことになるな。

 それに情報工作の技術力も高い。地球の社会においては驚異的な人材になっていただろう。

 こいつ……無自覚なだけで、すごい天才じゃないか。

 だが、天才なのはあえて言うまい。自分で自覚した方がいいだろう。

 それとも既に自覚した上での行動なのか……。



「そうか、随分楽しそうだな」

「ああ。けど、高校進学の時に別れた。進む道が皆違ったからな」

「しかし、それだとお前があの高校に来た理由が分からないぞ?」



 こいつも別の有名校に行ってもおかしくはないはずだ。



「それがさ、受験の時に俺等五人は進学不可と言われて……やはりそこは参謀らしく俺が作戦を立てていたことをばらして一人で罪を被った」

「つまり、自分一人が犠牲になることで他の四人を、ってことか」

「まあ、そういうことだ。別に俺は今が嫌なわけじゃないから良い。あの頃はそれが一番だと考えて行動した結果だ」



 つまり斎藤は一人で罪を被り、問題児認定されて学校側の要望により、あの学校に居たということか。



「まあ、当時は先公にそれで解決できると思うな! って怒られたが」



 それでも仲間のために奔走したのだろう。



「そうか……」



 皆思う所があったのだろう。一頻りに黙ってしまった。

 自業自得の面が多いが、やはり仲が良かった奴等と別れるのは辛いだろう。

 なんとなくその心情を察して暗くなる。



「暗い顔すんなよ。それよりも次行こうぜ」



 そうだな。これ以上考えても変わらないか。

 順番が次に移る。



余談~サイバーウォーズ~

通信担当「くっ! 誰だ政府の機密にハッキングかけている馬鹿は!」

嵩都「侵入防衛は此方が引き受けます! 犯行特定とクラッキングをしてください!」

スタッフA「了解! 電波ジャミング開始!」

スタッフB「カウンター開始します!」

スタッフC「ダミー経路潰されました!」

スタッフD「電子パルス増大! 強力な攻撃が来ます!」

嵩都「くっ! 手強い……」

スタッフB「カウンタークラッカー防御されました!」

スタッフF「犯行――ダメです! 強力な電波干渉あり!」

嵩都「暗号キートラップ設置……良し掛かった。この間に十万桁を打ち込み……十字感覚でカウンターを設置、量産ダミーシステム起動。ACC爆雷設置完了。PDFカウンター設置。くっそ、もう復帰したのか!」

スタッフA「敵、一時撤退します!」

嵩都「かはっ! (机に倒れる)」

通信担当「くそっ、誰だ一体……(タイマーが鳴る)」

嵩都「ううっ……もう朝か……」

スタッフE「嵩都さん、定時です」

嵩都「分かりました。後、頑張って下しさい」


――――

氷結帝王「これで五回目か……」

雷餓覇王「なんて硬さだ。この俺と互角、いやそれ以上か」

極皇神「ハッキングのスペシャリストが二人居ても突破出来ないとは……少し舐めていたか」

氷結帝王「いや、いくらなんでも対応が速すぎる。まるで此方の動きを予測しているかのような手回しだ」

風楓聖王「ダミートラップにカウンターの手際……まるで同種を相手にしているような感じだな」

炎魔大帝「だが、やるしかない。ここも長くは持たない」

氷結帝王「脱出経路は確保してあるが……そうだな。次で終わらせる。各自、十分後に再度攻撃を仕掛ける」

全員「了解」

その後、政府は陥落した。

斎藤「本当に五回目までは誰が居たんだろうな……」

斎藤「世界は広いということか」

斎藤「さてと遠藤、代わるぞ」

遠藤「おう。次回は俺の回だ!」






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