第八十二話・反則者たち
グラたん「第八十二話です!」
『リア充が、爆ぜろ!!』
『俺たちのアイドルを奪いやがって!!』
『クソが!!』
『死ね!』
『ちぎれ飛べ!』
『ハリネズミになって死ね!』
会場入りすると俺にのみブーイングがされた。
一瞬全員を窒息させようかと考えたが不自然だと思い止めた。
さて、プレアと対峙するのは二回目だな。あれから相当強くなったと思う。
プレアとの距離は大体二百mほど。会場全域で五百m程しかない。
プレアの強さはこの間の戦いで分かっているからいきなり二刀と鎧を出して装備する。
プレアも弓と矢を構え、俺の額に狙いを定めた。
俺たちは無言でお互いを見つめ合い、少々照れくさくなったので視線を逸らした。
『死ね! 惚気てんじゃねぇぞゴラァ!!』
『爆ぜ―――キュゥ……』
さて、観客席の声を少しずつ物理的に削っていく。
『それでは、開始!』
掘削作業をしていたら開始の合図がかかり、同時に矢がレーザーより早く飛んできた。
立て続けに三本。まずは小手調べか。
一本は躱し――って、誘導弾かよ!
仕方なく叩き落とす。
ギィン―――ギィギィン!
おかしいなぁ? なんで斬撃音がするんだろう?
今度は限界まで絞られた一射を撃ってきた。
二刀を下から上に上げてパリィする。
剣で弾こうとするとt単位の重さを感じた。
「ぬぇい!」
腕力を使い、強引に起動を逸らす。反動で俺の腕も上方に上がってしまった。
バギッ―――――バゴン!
『――――えっ!?』
うん、いくらなんでもおかしい。
フィールド結界が普通に破れてその上天井を貫いて雲の形に円を開けた。
あれを立て続けに撃たれたらどこかで弾けなくなって消し飛ぶな。
確か最大飛距離が五kmでかかる時間が15秒だったか?
ということはこの距離はほぼ初速の域。しかもプレアにしてみたらほぼ必中距離。
誘導弾を使ったのは避けられなくするためだろう。
いや、亜音速以上の速さで撃たれ、更に威力はミサイル級。
つまり、プレアが持っているのは随時連射可能弾数無制限の核弾頭……。洒落にならん。
俺は一気に距離を詰めようと疾走する。
距離を詰めるとプレアの表情が良く分かるようになる。
無表情だ。俺が知る限り、プレアがこんな表情をするところは見たことがない。
いつも何処か余裕のある対処をして笑顔で軽口を叩くような、そんな女性だ。
それだけ俺に対して身の危険を感じ、本気で相手をしてくれているということだ。
出し惜しみは止めよう。出したからと言って次の試合に負けるとは思えない。
距離を詰めると同時に兜、小手、具足を装着し、鎧と絶対防御を信じて防御をかなぐり捨てた。
両手の無駄な力を抜き、感覚を研ぎ澄ましていく。
全ての雑音を捨てて最速最短最善最高の攻撃を繰り出す。
プレアは右利きだ。当然矢を持つのは右手。俺の左手で常にプレアの右手を牽制すれば良い。
本命の右手は確実に仕留めるため頭、首、心臓を狙う。
「くっ――」
スキルは使わない。このまま回避不能にして押し切る。
上下左右からの同時攻撃。突きの多段攻撃を混ぜての攻撃。
そこでプレアが口を開いて歯を鳴らした。
同時に足元から小規模の土魔法が上方向――俺に向かって飛んでくる。
――兜の宝玉がひかり、土魔法をプレアの方向へ反射した。
「うそっ!」
プレアが足に力を込めて思い切り後方に下がり、左に飛んだ。
一秒とおかず土魔法がプレアのすぐ横を通り過ぎた。
俺も一度呼吸を整えるため距離を置いた。
「はぁ、はぁ……強い。そしてずるいよ……」
プレアの軽口に付き合う余裕はない。剣を下段に構えて打ち上げる。
傍から見ればただの素振りだ。
だが、その着地点をみれば何が起きたか分かるだろう。
プレアはやはり分かっているようで飛んで避ける。
地面には鋭い斬撃跡が刻まれる。矢を撃たせる隙を与えないように手数で攻める。
プレアが後方に下がる度、俺も深追いを余儀なくされる。
足止めや罠には十分注意しながら追う。
~亮平たち
嵩都たちが戦っている頃、亮平たちは観客席から視力、聴覚を強化して観戦していた。
「えげつないな」
博太がこぼすと亮平たちが頷いた。
「近遠両方出来る真空波は特に厄介だ」
「一発辺りタル・ウインド並……かしら?」
「……フィーならどう対処する?」
「ウインド系の風魔法はほぼ不可視だから常時魔法防御を張るか、自信があるなら同レベルの魔法と魔力で迎撃するのがいいわね」
「回避はダメなのか?」
「――正直言ってどれだけ情報強化を施しても不可視の攻撃は絶対音感や心眼系スキルがないと躱せないわ。それに嵩都さんの真空波の速度は剣を振ってから相手に到着するまででおよそ0.002秒程。STが使うレーザーとほぼ同等の速さで飛んでくる。……つまり、そういうスキルでは防げず、第六感が知覚する前に当たるわ」
「じゃあプレアさんはどうやって避けているんだ?」
「多分、予測しているんじゃないかしら? 嵩都さんがプレアさんの行動を読めるようにプレアさんも嵩都さんの攻撃を予測できる……と、思うわ」
「相手の手の打ちが分かっているが故の攻防か」
「そうなるわね。絶対信頼関係とでも言うべきかしら」
「だが、分かっているだけに膠着状態だな」
「うん……。それはそうと次、私たちだけどアレをどうやって攻略するの?」
フェルノが嫌々そうに亮平たちに聞いた。
「フィーなら防げるか?」
「……受けて見ないことには何とも言えないけど、多分可能よ」
「そうか。なら、魔法防御をかけつつ速攻かけて仕留めるしかないか」
「だな。時間をかけたり立ち止まれば真空波や魔法飽和攻撃で押し切られるかもな」
「そんなこと……可能なの?」
「常に予想の上を行くのがあいつだ。考えすぎの線はない」
「一度身で体感したら分かるよ。俺たちが知っている中で最も強いのがあいつだからな」
博太が少々黄昏て明後日の方向を向いた。
「武術、魔術ともに最強。成績優秀、ルックスほぼ満点、更に勇者と来たもんだ」
「博太じゃ勝ち目無いね」
ぐさっ!
博太の心臓に言葉の刃が突き刺さる。
「……ふふふ、言うようになったじゃないか、フェルノ」
「事実」
再び刃が突き刺さって博太は落ち込んだ。
「だけど、嵩都は博太たちとは違う」
フェルノの言葉に亮平たちは顔を向けた。
「あの人は……あの人からは血の匂いがする。魔物だけじゃない人の血の匂いがするの」
そんなフェルノに対して亮平はああ、と手を打った。
「そうか、フェルノは嵩都のことを知らないのか」
「どういうこと?」
俺は博太と交互に解説しながらフェルノにある程度語った。
「ふぅん。なるほどね」
「そういうわけだ」
苦笑いしながら試合を見ると膠着状態が終わって終盤へと入っていた。
~プレア
――冗談じゃない。
何度そう思っただろうか。
本当の本気はお互い出していないが理不尽にもほどがある。
あの白銀の鎧。ボクが撃つ全ての矢を無効化してしまう。
足止めにと思って配置した魔法陣は兜についている宝玉が反射して置いた魔法陣がボクに牙を剥いてくる。
防御を考えなくていい攻撃特化した二刀。当たれば全てが致命傷。
不可視の真空波。とにかく早い。下手したらボクの矢並に早い。
そして最後に、朝宮嵩都という存在の理不尽。
戦っている姿や引き締まった表情、全てがカッコいい。存在という反則を用いてボクを追い詰める。
避けているだけじゃ埒が明かないのでボクは相打ち覚悟で特攻をかける。
近接されたらボクは一貫の終わり。距離を取ったら真空波が飛んでくる。
極稀に矢が当たるけどあのずるい硬さの前には無意味に等しい。
僅かにダメージが入っても勇者スキルで即回復されてしまう。
どうやって勝てばいいの!?
そこで思いついたのが相打ち前提の特攻。
敢えて前に出て、矢を連射し、当たったら必殺で仕留めるという戦法だ。
矢が一度でも当たれば僅かな隙が出来る。そこを狙う。
そして、隙は唐突にやってきた。
放った矢が当たり、嵩都の動きが一瞬止まる。
嵩都には理解習得というスキルがある。
人類が当たり前のように教えを受け、知識を蓄え、保存するという工程をスキル化している。
つまり、人類が持っているそれを一秒という時間に凝縮して記憶してしまうスキル。
この世界にはスキルの他に異能と呼ぶ力がある。絶対記憶能力もその一つ。
ただ、それはあくまで覚えておくだけ。実践するのは多大な時間を要する。
しかし嵩都の理解習得は絶対記憶能力を使い、次の瞬間には実践できる。
人類の絶対限界に行くためのスキルだ。
あれを戦闘中常時発動にされていればボクは既にこの世にいないだろう。
さて、そろそろ決めるよ!
「これで!!」
異空間収納から空中にボクお手製の矢とボウガンを出し、本宅の一室に置いてある矢全弾を撃ち尽くすつもりで嵩都にぶつける。
嵩都の上下左右背後地表からの一斉射撃だ。
「ぐぅうう―――!!」
流石の絶対防御もこれだけの物量を受ければ何処かしら綻びが出来る。
勇者スキルによる回復量と魔法開始速度を上回り始める。
後は――ボクの矢が尽きるか嵩都の体力が尽きるかの勝負だ!
~嵩都
まずいまずいまずいまずいまずいまずい―――――ッ!!!!
冗談なしにまずい!!
何がって? 回復と防御が間に合わずに俺のHPバーがガリガリ減っていくことだよ!!
物量による超飽和攻撃。隙間のない攻撃ほど怖いものはないと初めて知った。
プレアの矢が後どれくらい残っているのかにもよるがこのペースだとリアルタイム30秒で死ぬ!!
というか絶対防御が間に合わない無効化できない攻撃って何だよ!?
少し深く考えてみよう。ただの飛び道具なら無効化出来るよな?
ということは――そこで俺は分かってしまった。そう、絶対に無効化出来ない攻撃を!
Q,すべての物理攻撃を無効化出来ない攻撃って何?
A,それは――愛。
あはー、それなら納得。愛は拒否しちゃいけないよね!
その愛の矢で死ぬのか俺は!?
俺はある程度防ごうと思い、両手の剣を加速的に回転させて防ぎ、口、両足、目、鼻息、で物理防御魔法を構築する。
さっきよりは多少マシになったが回復量を上回る攻撃なのは変わらない。
愛、恐るべし! それだけプレアが俺のことを愛してくれているということなのだろう。
この届く矢はプレアの最も深い愛の証なのだろう。
……そう考えるとこのまま死んでもいいかな、って思えてくるから不思議だ。
その膠着から五分が過ぎ、プレアの矢より俺のMPが先に尽きた。
その後はアッという間にHPは減り、俺は全身でプレアの愛の矢をその身に受けた。
矢自体は、ただただ痛かった。
『そこまで! 勝者、魔法科Sクラス、プレアデスさん!!』
久々に敗北を味わった俺とプレアは控室に戻ってきた。
「いやぁ、負けた負けた」
「お疲れ様、嵩都」
少し休憩したら最後の試合だ。
「嵩都、次は亮平さんたちだけどどうやって戦うの?」
HPMPを回復しているとプレアが聞いてくる。
「簡単だ。あいつらは俺の真空波や魔法を恐れ、警戒するため必然的に開幕速攻をかけてくるだろう。だからこっちから速攻かけて終わらせる」
「なるほど。逆手に取るわけだね」
「そういうことだ」
そこでキリよくアナウンスが入る。
『まもなく次の試合を開始します。選手は会場に集まってください』
「さて、行ってくるか」
「頑張ってね」
「おう」
プレアに見送られて俺は再び会場へと向かった。
※またしてもお付き合いください※
嵩都「思い出せプレア! お前が欲しかったのはそんな力か!」
プレア「やっつけなきゃ……怖いものは、全部!」
嵩都「もうお前も! 過去に囚われたまま戦うのは止めろ!」
プレア「覚悟はある……。ボクは戦う!」
嵩都「未来まで殺す気か、お前は!」
プレア「こんのぉぉ! 裏切り者ぉぉぉ!!」
嵩都「この、馬鹿野郎っ!(何かが覚醒)」
リーナ「お姉ちゃん止めて! 何で戦うの! 何で戦うのよ!」
プレア「ルー姉は今泣いているんだ! 何故それが解らないんだ!」
嵩都「分からぬさ! 誰にも!!」
プレア「ならボクは、君を撃つ!(矢を全弾発射)」
嵩都「あ、ちょっと待って! それは本当に洒落にならな――――(矢がたくさん突き刺さる)」
※ありがとうございました※
グラたん「次回」
嵩都「分からぬさ! 誰にも!!」
グラたん「三回目!? そろそろ次回予告させてくださいよ!」




