第八十話・襤褸雑巾のように捨ててやる
嵩都「お前は俺の大事な妹の居場所を奪ったんだ……使い潰して襤褸雑巾のように捨ててやる。フハハハハハ!」
グラたん「誰に言っているんですか?」
嵩都「突っ込んでくれるな。では、第八十話だ」
アジェンド城に戻ってきた。
まずは罪人報告といこうか。ちょうど文官働きの親もいることだし。
「ほう、ではその者は貴族権限を乱用したと」
「左様です。現行犯にて捕縛しました。証人として連れである騎士殿がおります」
「確かにキャンス様は貴族権限を乱用致しました」
「ご苦労。レアハイアーよ、処分は追って通達するゆえ今日は娘を連れて帰るが良い」
「申し訳ありません……この馬鹿者がッ」
父親が国王と俺に頭を下げて娘の首を掴んで引きずって退出した。
その後に続いて騎士も礼をして親子の後を追った。
「して、嵩都殿たちが残ったのはまだ何かあるからであろう?」
「話が早くて助かります。昨日、エンテンス城の付近にギルドの依頼を達成しに行ったところ、とある書庫を発見しました。そして我々勇者は一つ疑問を抱きました」
そこで一度区切り、俺たち三人は国王を見据えた。
「俺たちはいつ元の世界に帰れるのですか?」
「う、むぅ……」
実に分かりやすい。困ったと大々的に顔に書かれている。
「いえ、そんなに迷うことはありません。無ければ無いと答えていだたきたい」
「すまん、私にはわからん」
見事な、いっそ清々しいくらいの即答だった。
「では、我々はどうやって戻ればよろしいのでしょうか?」
「……亡き魔帝サフィティーナなら知っていたかもしれん」
「……そうですか。皆さん、この話は忘れてください」
博太と亮平も頷いた。国王が知らないのであれば地上では誰も知る由はないだろう。
というわけでムスペルヘイムにいる魔帝となんか仲良くなっている筑笹に会いに来た。
「なるほど。確かにうやむやになっていたな」
筑笹も同意して魔帝様を見た。
「それで帰還方法を魔帝様は知っていますか?」
「その前に、今の私は魔帝ではありません。サフィティーナさんと呼んでください」
「分かりました。では、サフィティーナさんは俺たちの帰還方法を知っていますか?」
「帰還方法――の可能性として、エンテンス城の近隣にある地下書庫にそのような本があると聞いたことがあります」
くそっ、やっぱりそうなるか。そんな気はしていた。
「――実はもうそこには行き、何故か帰還方法の文献だけ無くなっているので困っていたのです」
「そうですか……。でしたら残念ですが力にはなれないかと」
「――ありがとうございます。それと――」
ストレージから紙を取り出してサフィティーナさんたちに見せる。
「この紙の文字を読めますか?」
紙を渡して読むがやはり同じように眩暈をしているようだ。
「す、すいません……」
「なに……これ……」
頭を押さえつつ紙を俺に返した。やはりダメだったか。
自分で読み解くしかないのか。
「そうですか。ふむ、また振り出しか……」
俺はそれだけ呟いて彼女たちと別れた。
最後の頼みの綱として魔王軍陣営にやってきた――が、やっぱり駄目だ。
「へぇ、なるほど」
二重の意味で駄目だった。一つは知らないということ。
「地球。人間が支配し、数多くの勇者の卵が存在する場所、ですか」
もう一つは地球の存在がばれた。
ポノルが今にも舌舐めずりしそうなくらいの笑みを浮かべている。
「そうだ」
「とても有益な情報感謝します。貸しにしておきますね」
「そうしてくれ」
「ベラケット、今すぐロンプロウムのエンテンス城近隣に行きその書庫を調べなさい」
「はっ」
「ジェルズ、地球侵攻に向けて準備を」
「了解しました」
「ペルペロネ、地下牢にいる勇者をここへ連れてきなさい」
「はい。尋問ですね」
「その通りです」
幹部たちが指示を受けて一斉に動き出す。
しばらく待つと後藤が見るも無残な姿で現れた。
魔王軍がどれだけ人間を強く恨んでいるか分かるような傷跡だ。
「今度は――なによ――」
死にかけているな。疲労が溜まっているようだ。
「地球――勇者であるお前たちは聞き覚えがありますか?」
ポノルが酷く冷たい視線で後藤に問いかける。
「ええ。知っているわよ。それで?」
「その地球について全て話して貰いましょうか」
後藤は俺の方を見て答えた。
「それならそこにいる朝宮の方が知ってるわ」
「朝宮? 誰の事ですか?」
「そこの黒衣の角仮面のことよ。だって同じ勇者で人間で地球人だもの」
ざわっとポノルたちがざわめく。この間会ったのは失敗だったな。
ばらしたのならもう助ける義理もない。襤褸雑巾のように捨ててやるッ!
「ほ、本当なの? スルト」
シャンが恐る恐るというように俺に問いかける。
「如何にも」
「なっ――」
シャンたちが絶句するが間髪入れずに俺は口を挟む。
「しかし、敢えて問おう。魔族とは一体なんだ? 姿形は人間とほぼ変わらず、魔力も変わらん。飛ぶことも剣も技術も違わない。では、違いとは一体なんだ?」
「それは――人間を恨んでいるかどうかですね」
シャンの代わりにポノルが答える。
「もしくは脆弱な人間とは違う人の形をした化け物のことだと思います」
そう、追加で答えたためそこに俺は突破口を見出した。
「そうか。では、余は誰だ? 人間か? 勇者か? 化け物か? それとも神か?」
ポノルの理屈なら、邪神たる俺は人間ではない。化け物だ。
「邪神――神ではないでしょうか」
「余は特に人間を恨んではいない。では、余は敵か、それとも味方か?」
「……この場合は敵でも味方でもない第三軍だと存じます」
「では、君たちは余をどうするつもりか? 場合によってはそこの彼女等を連れて逃走も止むを得ないと考えるが」
俺の問いにポノルは眉間に皺を寄せてシャンを見た。
「―――最終的に決断を下すのは魔王様ですが、利益を考えるならば現存の状態を維持するのが最適解と思われます」
そういってポノルがいまだ驚愕しているシャンを見る。
「ご采配を、魔王様」
そう言われてシャンは少し考え、俺たちを見た。
「スルトが例え人間だったとしても今はこちら側の神や化け物だし、それなら今まで通りの対応で良いと考思うよ。スルト、地球についての情報を教えてくれるかな?」
よし、回避成功。先に頭の回るポノルに回してよかった。
シャンだと感情論で決められかねなかったから正解だったようだ。
「良いだろう。しかしその地球に行くための手段は不明だと先に言っておく」
「それでも判明したならば侵攻したいと考えています。そのため、事前に得られる情報は得ておきたいと思います」
「分かった。教えよう。まずは―――」
俺は地球について、俺が知っている範囲内の情報を与えた。
地球では魔法は使えない。超能力みたいのはあったが絶対数が少ない。
あとは異能持ちだな。あれは殺すのに手間取った。
異能と言っても人形を盾にしたり砂煙を上げたりするくらいの物だが中には身体能力を上げる能力者もいて最終的に落とし穴で嵌めて散弾銃を撃って仕留めた。
さて、説明し終わり後藤にも確認を取って、また牢獄に戻された。
「でも良いの? 故郷なんでしょ?」
各々が動き出すとシャンがいつも通りに接してくる。
「別に……。あまり未練はない」
「ふぅん。スルトも家族がいないとか?」
「居た。しかしこちらに召喚されてから数か月が経過しているから地球との時差が分からない。つまりは居なくなったと考える方が正しいか」
「そっか……」
シャンは少しだけ羨ましそうな、悲しそうな目をしていた。
「終わりならそろそろ行くぞ」
「うん。それじゃまたね、スルト」
「ああ。また会おう」
シャンたちと別れて退出し、魔王城を歩いて外に出ようとすると牢獄の方から悲鳴が上がっている。
後藤たちか……せっかくだ。その面を見てから帰ってやろう。
はっきり言って見なけりゃ良かったと後悔した。
青葉が先ほど現れなかったのはポノルが人体実験の材料にしていたからだ。
しかもちょうど実験中にぶち当たってしまったがために青葉が苦しむ姿を永遠と見させられた。
自動回復のスキルでも持っていたのか手足が吹っ飛んでも再生されるため容赦のない実験をされていた。
後藤は人間の、それも勇者の繁殖能力を確かめるためにゴブリンやらオークやらの魔物や魔族に犯されていた。
既に襤褸雑巾になっていたのでもうどうでも良くなった。
ポノルはその様子を恍惚とした表情で眺め、更に地球という実験場を見つけたから更に興奮しているようだ。理性的とは裏腹にマッドな人だった。
少し眩暈を覚えながらも俺はアジェンド城に帰還した。
今週は闘技大会だ。授業は全部なし、参加しない生徒は休みというラッキー週間だ。
その前に昨夜キャンスの刑が決まった。一年間の観察処分だ。
家の方は爵位を二個下げ、更に俺たちに多額の賠償金を支払おうとした。
流石に金は余っているので断り、代わりに俺とプレアへの不干渉を提案した。
父親はそんなことで良いのかと言っていた。
キャンスはこれから一年間問題を起こすことなく真面目に授業や行事に参加することを家から義務付けられ、学校では俺たちのクラスにキャンスと従っていたエルフの息女が戻ってきた。
エルフはやっと解放されたとばかりに真面目に授業を受けていた。
どうやら見えないところでこいつにも使っていたようだ。
エルフの彼女自身も金輪際の不干渉で手を打ち、実質キャンスは一人になった。
おかげで別の派閥が幅を利かせることになるのはまた別の話。
話を戻して闘技大会だ。彼女たちも特例で参加権を手にした。
そして今日、俺たちは開会式をするため会場である体育館に来ていた。
敷地が広いだけあって全生徒を収容してもまだ幅がある広さだ。
「それでは只今より闘技大会開会式を行います」
理事兼校長のルーテが壇上に上がり、挨拶を始める。
ルーテはこの国の第二王女であり、その類稀な美貌からアイドル的な扱いを受けている。
そしてステージには第一王女クロフィナさんの姿もあるために体育館は少々熱気が籠っている。
ルーテの挨拶も終わり、続いて魔法科と武術科の宣言が始まった。
魔法科代表はペルペロネ。武術科代表は大典だ。
これは単純に成績や出席率から選ばれる。残念ながら多忙な俺は出席点で敗退した。
二人が堂々と宣言する姿をカメラマンやマベレイズさんが取っていた。
開会式はこれで終わりだ。参加人数の関係上速やかに進行しないとずれが生じる。
「頑張ろうね、嵩都」
開会式を終えて外に出るとプレアが笑顔で言う。
「ああ、そうだな。まずは初戦だな」
「最初は武闘館だっけ?」
武闘館は武術科が良く使う戦いの場所だ。
「ああ。先に俺の試合だったな。それじゃ行こうか」
「うん」
プレアが腕を絡ませつつそう答えた。
行く先で亮平たちと合流し、気合いを入れ直した。
~その背後や草陰から
「クソリア充共がッ」
「甘ったるい雰囲気はお呼びじゃねんだよクソが」
「Sクラス共が……俺たちは眼中に無いってか」
「改造STの威力を見せてやる」
グラたん「十八禁注意……ってもう手遅れですか」
嵩都「いつもながらに遅いな」
グラたん「見てしまったのならしょうがないですね。では次回予告です」
※見苦しいとは思いますがお付き合いください※
猛「ハハハ! 会いたかった……会いたかったぞ、ST!」
大典「俺が、STだ!」
武久「俺は不死身のタケヒサだ! 憶えておけ!」
加奈子「その名で呼ぶなと何度言えば分かる! 私はカナコ、超人機関の一号よ!」
嵩都「タイテン、貴方は良い道化でしたよ。でもね、STの力を神の力と勘違いしているんですよ」
鹿耶「忌々しいSTの亡霊どもめ……この私、シカヤが貴様等を新世界の手向けにしてやろう!」
※ありがとうございました※




