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勇邪の物語  作者: グラたん
第一章ロンプロウム編
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第七十八話・謎の書物庫

亮平「第七十八話だ」

 

 随時剥ぎ取り作業を開始する。素材自体はレアものが多く金になりそうだ。

 フェニキアが動いて辺りに散らばった羽も回収し、適度に分配する。

 辺りに魔物がいないのを確認して俺は適当な岩に腰を掛けた。



 ガコン―――



 手を付くと少し沈み、俺の背後にあった岩が動いた。

 まさかの偶発的な仕掛けだ。驚いて立ち上がる。



「どうした?」



 異変に気付いた皆が剥ぎ取り作業を中断してこちらを見た。

 俺は背後を確認し、地下への階段を確認した。



「なんか下りる階段があるぞ」

「階段?」

「ああ。とりあえず下りてみる。最悪転移すれば良いだろ」

「――分かった。こっちも終わり次第行く」

「了解」



 許可は取ったことだし灯りをつけて階段を下っていく。



 ……思ったより長い。そう思っているとようやく終わりらしい扉が見えてきた。

 こんだけ深いところにあるのだとすれば余程重要機密なのだろう。

 扉を注視してみるが罠や爆発物の類はない。

 扉自体は押せば簡単に開いた。

 中は本や書類があることから誰かがいたことが伺える。

 中央には机と椅子が一つずつ。壁は一面木製の本棚で埋まっている。

 入って右側には壺や樽が置いてある。それと食料が僅かながらあった。

 天井には古ぼけたランプがある。部屋自体はかなり広い。

 本に関しては万を数える数がありそうだ。

 ふと左側の本棚の一部が荒らされていることに気が付いた。

 泥棒でも入ったのだろうか? いや、それは俺たちも、か。

 余っている書物を手に取ってみる。文字は……なんて書いてあるのか分からない。

 理解習得を起動しても規則性を読解するのに手間取るほど難解だ。

 仕方ないので別思考に切り替えて読めそうな本を探す。

 ある程度探すとこの本棚にも一定の規則があることが分かった。

 入って左から古い順にならんでいる。証拠に右側はまだ空白が目立つ。

 それに一番古いのは壁画だし。壁画ならある程度予想はできる。

 書いてあるのは人や魔法陣が目立つ。細かく記号が書いてあるのは当時の文字だろうか。

 ――よくこんな面倒くさいのをここに写す気になったと書いた奴を称賛したい。

 次の時代では竹を分割して繋げた書簡だ。この頃になると炭もあったようだ。

 気のせいか古代の中国史を訪仏させた。

 そこで理解習得も終わったようだ。

 先ほどの荒れたところに向かい、先ほどの本を開いてみる。

 すると大体ではあるが読めるようになっている。

 ――結果的に分かったことは、ここは歴代の勇者召喚を書き綴った書庫のようだ。

 古代は偶々成功した例を書き、それを解読していく内に召喚魔法となっていく様子が書かれている。

 次の竹書簡時代では文字が発達し、後世に残るように詳しく綴られている。

 間違いなく文字の技術は召喚された異世界人共が教えたな。

 次の世代では召喚魔法が読み解かれ、魔法が発達している。

 それと同時に科学無双している召喚者共の伝記が綴られている。

 これだけ発達していて何故現代には無くなっていたのかというとこの頃から魔王が出始めたようだ。で、まあテンプレ通りに勇者が倒しているわけだ。

 魔王軍自体はこの戦いで魔界に逃げ帰ったようだ。

 その後が割と悲惨。魔王を倒した勇者が今度は人類に殺されかけて逃亡。

 行く先行く先で恨み辛み助けなし自給自足カーニバル。

 それで最後は頭にきて魔王化しちゃったわけだ。

 そして適当に魔物やら奴隷やら集めて新設魔王軍になり人間と対峙した……と。

 滅ぼされかけた人間はまた勇者召喚しての繰り返し。人類馬鹿じゃないの?

 次の時代は戦国時代。剣や魔法やスキルが乱れる時代だ。

 ここでは魔王はなりを潜めているように出てこない。

 それで勇者召喚なんていう便利なものがあるから各国は召喚しまくっている。

 常時俺無双が続くから大陸が放射線でまみれたり海に油が流れたり砂漠になったりしたらしい。

 結局は勇者たちが飽きて帰りたいと騒ぎだして終戦したらしい。

 その帰り方だが――そこの巻だけ抜かれている。絶対わざとだ。

 他の時代の巻も見てみるが揃ってそこだけがない。

 つまり、帰れずじまいというわけか。

 荒廃したこの星でどうやって生きたのか見ものだ。

 それでそこから先は召喚記述が少なくなりある一定の時期は全くと言っていいほど空白化している。

 代わりに歴史書が置いてあるが。

 そこから五百年くらい経過すると魔王が出てくる。

 懲りろ、とか自分で何とかしろ、と思うがやっぱり召喚されていた。

 流石に歴史が物語っているのか召喚されるのは一人二人だ。

 それで何とかなるのだから面白い。

 次の時代は中々異色の色を放っていた。

 ここで魔王やら邪神やらが出てきているが共存しているようだ。

 この時代だけは勇者たちと邪神たちが共闘している。何と戦っていたのかは不明だ。

 そして平和が数百年くらい続いて様々な種族が出来たようだな。

 次のページを開くと何か挟んであったようでひらりと地面に落ちた。



「なんだ?」



 拾い上げてみると一枚の紙を丁寧に折りたたんで劣化防止という時空系魔法が掛けられていた。

 当然、その魔法も頂いた。

 紙を開いてみると文字情報が凝縮されているようだ。眩暈がした。

 気持ち悪い……。

 こんなことは初めてだ。紙を折りたたんで文字を隠す。

 これを解読するのは俺でも時間が必要だ。持ち帰って解読してみるか。

 紙をストレージにしまうと同時に扉を叩く音がした。



「誰かいるのか?」



 博太の声だ。剥ぎ取り作業が終わったらしい。俺は扉を開いた。



「来たか」



 博太の後にフェルノたちが続いて入ってくる。



「嵩都、他にはいないのか?」

「ああ。俺だけだった」

「そうか……」



 そういうと亮平は辺りを見回した。

 やはり俺と同じような反応をしている。



「書物庫か?」

「みたいだな。文字は……ほぼ解読不能に近い」



 試しに今手に持っている本を亮平に手渡し、亮平が開いた。

 亮平は数ページめくり、首を傾げた。



「なんじゃこりゃ? 記号か?」

「古代文字じゃないか? 見た感じ左から歴史が古そうに見える」



 促すと亮平は本を閉じて左側を見渡す。



「――壁画か。随分とまあ……とりあえず何か発見がないか調べてみよう」

「発見ならしたぞ。本棚の一部が無くなっているくらいだ」

「確かにな」

「ここは結構広いが隠し場所がここだけとも限らない。俺は他にもないか一度上に戻る」

「間違えて爆破スイッチ押すなよ」

「そんなヘマはしない」



 亮平の冗談を聞き流して俺はプレアの手を握る。

 プレアは一瞬驚いたように肩を震わせ、俺の顔を見た。



「プレア、少し付き合ってくれないか?」

「ん? いいよ」



 プレアを連れてフェニキアがいたところまで戻り、一応探知をしてみるが書物庫以外の反応はない。

 ただ、何かの城があったような形跡がそこらに残っている。普通に見ただけでは絶対に分からないだろう。……少し気にはなったが今は別に良いだろう。

 亮平たちへの義理は果たしたので本題に入ろう。

 俺はストレージから先ほど入手した紙を取り出す。



「プレア、この紙の文字を読めるか?」



 俺から紙を受け取ってたった三十個の文字列を眺め、俺同様に眩暈を起こしたようだ。

 プレアが思い切り眼を瞑り、俺の肩に寄りかかる。



「な、なにこれ? 見るだけで気持ち悪い文字は初めて見るよ」

「俺も同じだ。一部解読を始めているがどうにも時間がかかりそうだ」

「嵩都でも? ってことは余程重要なことが書かれているのかな?」

「だと思いたい」



 これで全部罵倒や恨みや呪詛だったら焼き尽くしてやる。



「それで、用事は何だったの?」

「あ、いや、一応この紙の内容が分かるかどうか聞いておきたかっただけなんだ」

「ああ、重要みたいな紙だもんね」

「魔王軍方面にも見せてみる予定だが大丈夫そうかな?」

「知識だけで言うなら軍師や魔王軍幹部のおじいちゃんや魔帝が有効に使えると思うよ」



 使うって……利用と言わないだけ良しとしようか。変わらないか。



「分かった。それじゃあ戻ろうか」

「あ――待って」



 紙を仕舞って来た道を引き返そうとするとプレアが止めた。



「どうした?」

「あ、んと、せっかく二人切りだしもう少しだけ一緒に居てくれる?」



 ――甘えたいだけのようだ。



「……そんなに急ぐことでもないしそうしようかな」



 そう言うとプレアの機嫌が一段と良くなった。

 適当な岩を魔法で削ってゆったりと休める背もたれ付きの椅子を作った。

 プレアは最近、俺が椅子や寝床、床に座っていると必ず俺の膝に乗って来たり肩に頭を乗せてそのまま膝枕することがある。

 俺が椅子に座るとプレアの頭が膝上に乗った。今回は膝枕だな。

 仰向けは恥ずかしいのかいつも横向きだ。そして今日も俺はプレアの髪を撫でる。

 そうするとプレアの満足そうな吐息が聞こえてくる。

 プレアは俺より二回り小さい。

 しかも体重はかなり軽いため膝がしびれることもなくプレア自身が魔法で浮いていることもない。

 魔法で体重詐称しているかどうかは分からない。

 それでこの体勢だともう必然と言っていいほどプレアの髪や肌から良い香りがする。

 しかも正面から見たよりも側面から見るといつもより僅かに違う胸の大きさとか太ももの柔らかさとか――――、一度思考を止めて無の境地に達する。煩悩滅却。

 それからはずっとこの体勢で風が薙ぐ音や僅かに生えている草や花が揺れる音を聞く。

 太陽が出たり雲が遮ったりと緩やかな一時だ。

 遠視と透視をして亮平たちの様子を見てみるが、時間がかかるのを見越しているのか俺たちに対しての反応は特にない。

 ――というか向こうは向こうで楽しそうだ。




 しばらくすると満足したのかプレアは頭を起こした。

 そしてギュッと俺の腕に全身を当てて自然的な流れでキスされた。

 流石に毎日されていれば慣れるな。それでもやはり気恥ずかしさはある。

 そうして、話したりキスしたりしていると時間は早く経ってしまう。

 そろそろ亮平たちが感づき始めたのでプレアを説得して切り上げ、書物庫に戻るとちょうどタイミングが良かった。

 時間はまだあるのでこの書物庫を転移先の一つに指定する。

 転移制限はないのでマークしているとも言える。

 亮平たちは書物庫や壁画を見て色々と推測したようだが俺のような答えにはたどり着いていない。

 夕刻までそんなに時間はないので今日のところはこれで引き上げることにした。

 亮平とクロフィナさんは興味を持ったようで本を一、二冊拝借してあった場所には小石を置いていた。

 外に出てエンテンス城に転移する。

 それにしても不思議な場所だった。


グラたん「くっ、毎度毎度イチャイチャして……己ぇぇ……」

グラたん「別に寂しくないですよ。三次より二次! 二次こそが至強なのです!」

グラたん「次回、貴族権限。ジーク・ジ〇ン! ジーク・ジ〇ン!」

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