第七話・第一次ラグナロク
※この企画は犯罪を助長する意図はありません。間違っても実際に実行しないでください。
※仮に実行したとしても私は一切責任取りません。予めご了承ください
嵩都「じゃあ書くなよ」
グラたん「書きたかったんですよぅ……」
朝靄が一切ない視界良好な日。太陽はまだ上がらず肌寒い。
俺は薄目を開けて辺りを確認する。
周りには早起きした女子たちが足音を殺して森へと向かっていた。
俺の周りには同志たちが少ない。
料理班の一員として即席の厨房付近で寝ていたからだ。
俺は支給された寝袋から起き上り、何事も見ていなかったかのように寝袋を畳み、顔を洗おうと思って泉へと向かう。途中で野郎共と合流する。
「ん? 早起きだな。何処に行くつもりだ?」
当然、見張りに見つかる。しかしこれは作戦だ。
作戦 : 抜け出す時は理由をつけて堂々と行け。
参謀の斎藤が例のドラガンコロストから引用した作戦だ。
「ええ、昨日、森で良さそうな場所がありましたのでそこで水浴びしようかと思いまして。ついでに朝食の食材でも取ってこようと思っています」
見張りは困った様に視線を彷徨わせる。
覗きの情報はどこからか漏れていることが前提で動いているのだから斎藤はそれを逆手に取った作戦に出たわけだ。
別に漏れていなくてもそういう理由ならば見張りにも止められる必要はない。
「そうか――あ、いやしかし今森には……」
「森がどうかしたのですか? もしかして魔物が?」
「あ、うん……そうね。近付かない方がいいわね」
勝手に誤解したと安堵した女兵士に対し、俺は内心で嘲る。
ふっ、馬鹿が。そう来る可能性は十分に考えて発言したのだから。
「いえ、それなら俺が狩ってきましょう。昨日実戦はしていますし引き際くらいなら分かりますから。どうしても危険なら空を飛んで戻ってきます」
そう、俺は昨日実戦をしていることもあり、その実績がある。
この女兵士とて見聞くらいは知っているはずだ。
「い、いえ、やはり危険ですし魔王様がお戻りになる間―――あ……」
ククク、自ら口を滑らせやがった。だが、俺は敢えて魔物が、という風に演技する。
「まさか魔王様が森の中に? まあ魔王様なら大丈夫でしょうけど万一ということもあります。私たちが様子を見てきましょう。何もなければそのまま食材を集めてきます」
これ以上は時間がもったいないというように俺は見張りに一礼して先を歩きだす。
見張りも俺の言葉にこれ以上強く言えないようだ。
当然、奴らに警戒通信されているだろうから森に入ったら全速力で駆け抜ける。
他の同志とは現地集合となっている。
「……いくぞ」
「いいぜ」
「いつでも」
茂みに足を踏み入れる。俺の勘だが、足元には何かがある。
探知系統の魔法だろうか? だが、関係ない。
「出陣!!」
彼らは全速力で走り出した。同時に俺は空中に飛び上がり、空中を移動する。
しばらく行くと既に交戦状態に入っている剣戟の音が響く。
俺たちが行く先にも女兵士が陣取っていた。奴らはもう気づいているようで真っ直ぐ俺たちの方に向かってくる。
作戦その二。固有スキルは何でも使え。
つまり、俺は空から強襲する。
彼等は捕えられてしまうか、もしくは自分のスキルで逃げ延びるかするだろう。
斎藤が先にも言ったが覗きが出来るのは一握りもしくは数人だ。
野郎共は全員が協力者で、お互いを利用しようと画策する敵だ。同情の余地は無い。
上空に上がると泉が見える。こう見えても視力は良い方だ。正確な人数は見えないが人間なのは分かる。
『撃て――!!』
地上から女兵士の号令がかかる。
ま、そう来るわな。下方からは弓矢が存分に俺に降り注ぐ。
代わりと言ってはなんだが空中特高している俺には飛び道具や魔法が必要なため数少ない魔法師や弓使いは必然的に俺を狙う事になる。これも斎藤の策の一つだ。
聖剣ヴァルナクラムを出して真空波で迎撃する。
矢はほとんど俺に届くことなく、結果的に突破を許した。
残り目測百m。剣を仕舞い角度をつけて一気に急降下する。
最高速に乗った俺は矢が掠るのも気にせず進む。
そして急激なGに耐えつつ、急停止し、ほとんど音を立てないように入水。
泉はそこまで深くなく、俺の腰程度しかなかった。
顔を上げてまず目に入ったのは肌色の肉体だ。滑らかで柔らかそうな肉体がある。
『きゃぁああああ!!』
悲鳴が上がる。高い声色。女子だ。楽園は本当にあったんだ!
プルンと跳ねる胸は実に美しく最高の興奮が味わえる。
肢体は瑞々しく人によって肉付きが違う。
湯気も光もない、一切遮る物がないこの素晴らしき世界はまさにシャングリラだ。
……それで何故女子たちは俺の方向いていないのだろうか。
気付く。女子たちの視線は全て森の方に向いていた。
そちらの方を見ると―――ブバッ。盛大に鼻血が出た。
そこにいたのは元生徒会長、万能会長とまで言われたその人、筑篠鹿耶がいた。
俺たちの世界――地球で言う所の女の漢だ。両性ではない。
彼女とは何回か話したことがあるし生徒会室や図書室でよく見かけた。
彼女は他の人に比べて胸が大きい。見立てでもE~Fはあるのではないだろうか。
そして何よりも身長がありスタイルも良いという万能振りだ。
それが今、目の前にタオルを巻いて降臨している。手には血に塗れた亮平たちの頭が握られ、晒されている。しかも片手で持ち上げているから恐怖感は倍増する。
――悪寒が奔った。亮平は覗きに成功し、捕まったのだ。
これから起こることなど予想しやすい。俺もやがてはああなる運命だ。
すぐさま距離を取り、背後を振り返る。
水面に浮き、飛翔飛行を展開して可能な限り粘ることにする。
見てみると『殺れ、殺れ!』と物騒な声が聞こえる。
女子たちはタオルを巻き、亮平や鈴木たちを逆さ吊りにして頭から水没させていた。
急速に頭が冷えていく。恐怖が俺の背筋を這う。
今更ながら俺たちはとんでもないことをしていたのではないかと思う。
いや事実その通りなのだが現実の処刑を見ていると寒気を超えて悪寒が止まらない。
「あれ? 嵩都?」
――全身の毛が逆立った。聞こえて来たのは右から、右後ろからだ。
壊れかけのドアの様に首が嫌な音をたててゆっくりとその方向を見る。
プレアだ。ここで、よりによって、満を持してラスボス登場だ。
一度力を抜いて全身で向き直る。そして俺は全身が動かなくなった。
プレアは布を一枚羽織った状態で泉に足を入れた状態で立っていた。
――見惚れた。正直、人間ってこんなに綺麗な生き物だったのかと思ったくらい優雅で綺麗だった。羞恥の躊躇いもなく俺を見ているのは泉の聖霊を彷彿させた。
「どうしたの?」
「あ、いや……すまない!」
プレアの声で我に返り、そのまま後ろを向いた。
ああ、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。俺の馬鹿、俺の馬鹿、俺の馬鹿!
急に羞恥心と罪悪感がこみ上げてくる。
後ろからクスリと笑う声が聞こえた。
「もしかして彼女たちの事を覗いていた?」
――何も反論できません。その通りでございます。
口で言うよりも早くプレアが次の言葉を発していた。
「それで……ボクにも興味があるの?」
無いわけがない。というかあり過ぎる。可愛い過ぎる。
性的に――というのもあるけどそれ以前に惚れている。
あ、やっぱり俺は彼女が好きなんだな、と思った。
「なるほどね。だけどごめんね。ボクは嵩都が期待しているような子じゃないよ」
「――どういうことだ? 少なくとも身長や胸のコンプレックスはないと思うが」
言ってから後悔した。ついいつもの調子で話していた。
「アハハ、嵩都はエッチだね」
穴があったら入って泥水を被りたい。羞恥で顔が破裂しそうだ。
ちゃぷちゃぷと水の中を進む足音がする。
そっと背中が暖かい物に包まれた。
耳には吐息がかかってくすぐったい。
胸の感触がダイレクトに伝わってゾクゾクする。
心臓が高鳴って異様に興奮しているのが分かる。
「――知りたい?」
プレアがそっと甘い匂いと共にそう言ってきた。
こ、こういう場合はどう答えればいいだろうか。ギャルゲならどうだ?
1.知りたい
2.知りたくない
3.黙る
いや、2だろ。いや、1も捨てがたい。うーん。攻略なら1だ。じゃあ1で。
「し、知りたい」
背後の暖かいのは間違いなくプレアが体を押し付けているからだろう。
しばらく鼓動の音と耳にかかる吐息だけが聞こえていた。
「――やっぱりエッチだね」
う、やっぱりそういう系だったか。だが後悔はしていない。
「でも教えてあげる。上から71、56、73だよ」
――ん? そんな馬鹿な。背中に当たっている胸の感触からして80はあるはず……。
「……いや、嘘付け。絶対もっとあるだろ」
いくらなんでもおかしいと一歩前進してプレアの方に振り返る。
そこにはプレアと――隣に魔王がいた。
……うん、とっても嫌な予感がする。
幸いにも魔王はタオルを巻いている。
それでようやく理解した。知りたい=魔王のスリーサイズだったと。
知らなくても見れば分かるよ……。もっと重要な情報が知りたかったというのは魔王に失礼だろう。
ちなみにそのサイズは俺が見ても概ね間違ってはいないと思う。
「お世辞でも嬉しいですよ?」
絶対零度の笑顔事件発生中。周りの生物はただちにお逃げください。凍ります。
と思いつつも俺の心は氷結している。
「でもね、君が覗いていたのは分かっていたのよ?」
はい、委細承知。俺は脱兎の如く逃げ出した。しかし回り込まれてしまった。
回り込まれる以前にプレアにしっかりと手を握られていた。
柔らかい。そういえば最後に女子と手を繋いだのって何時だったかな……。
現実逃避気味にそう思っていると魔王が笑顔を引っ込めて無表情になる。
「しかも彼女たちが見ていないのを良い事に舐めまわすように見ていたよね。しかも私の可愛い義妹の半裸を眺めて見惚れて厭らしいこと言って……」
「うん、そうだね」
プレアが魔王の言葉にしっかりと頷いた。プレアお前……。
嵌められたことに若干イラッとしながらも平静を取り戻す。
「……な、なにが望みですか?」
俺が生き残る手段はこれしかない。亮平たちのようにはなりたくない。
魔王たちはまさしく真の意味で魔王らしく邪悪な笑みを浮かべて言った。
『首輪一回』
この日、俺の首にはギロチンでも切れない超強力な楔が打ち込まれた。
分からない人のために注釈。首輪とは、なんでも一回命令を聞かなければならない回数券である。拒否権はなく死ぬことを厭う事を許されない特権である。
一人一回として計二回。し、死ねる。
ただ、彼女たちに隠すこと、ばれた時点で権利は破棄できることをお願いした。
魔王たちは禍々しく――否、快く了承してくれたのが妙に引っかかった。
厳罰を食らった亮平たち野郎共は強制執行奴隷権限の元、城につくまで無償で働くことになった。
そして俺を含める厳罰を食らわなかった野郎共は微加担罪や黙秘罪によって厳罰を頂戴した。
関わらなかった奴等には申し訳なく思うが、次からはどちらにせよこうなると分かった以上、次からは参戦してくるだろう。
そして恐らく此方の情報を売っても同じ結末にしかならないだろうというのは推測出来る。
さて、そんな野郎共の奴隷生活は荷台に車輪など無く手で運び、角材を肩に担いで神輿みたいにする。その上に女子や女兵士たちを乗せている。
一チーム十人でその十倍の人数を担ぐのだ。荷物は俺たちが背負っている。
逆恨みも甚だしいほどに俺たちの恨みは溜まって行った。
そんな中でもプレアは俺たちのために(俺は理解習得があったためにすぐ分かったが他の奴らはこの世界の言語とやらをまだ習得出来ていないらしい。)プレアは夜な夜な講習を開いて丁寧に教えてくれるのだ。
俺たちが思う事はただ一つ。プレアさんマジ天使。
話していて分かったがプレアは年下だった。15だと。でも口調は変わらない。
それとこの世界についての事や一般的な概念もご教授して貰った。
授業を聞いているとさりげなくではあるがちょくちょくプレアの視線を感じた。
……なんだろうか? そうは思うが不用意に接触すれば女子共や男子共からも何を言われるか分かったもんじゃないこの状況のため、気付かない振りをするしかなかった。
~プレアと魔王
覗きをした者たちに厳罰を与えたプレアデスとアネルーテはテントに戻ってきた。
「もう、どうして男って覗きが好きなのかしら」
アネルーテは少々頬を膨らませながらプレアに愚痴を言っていた。
(そう言いつつも頬が赤くなってるよ、ルー姉)
怒っているアネルーテを見つつプレアはそう思った。
アネルーテとプレアは実の姉妹のように仲が良い。出自や身分は違えど、絆は固い。
アネルーテには実の姉がいるが、その姉も含めて姉妹だ。
「全く……嵩都も一緒になんて恥ずかしかったよ」
アネルーテは思い出しつつ頬を赤くしていた。
(……やっぱりルー姉は嵩都のことを一目惚れしているね。さっきは冷酷だったけど)
プレアはアネルーテの愚痴に苦笑いしていた。
(だけど……ゴメンね。ボクも彼が好きなんだ……)
その内面でプレアは自分の気持ちにも嘘をつけず、アネルーテに内心で謝っていた。
グラたん「それはそうとドラガンコロストってなんですか?」
嵩都「ドラガンコロストはドラゴンを銃器で殺すと文字通りの地球で大人気のゲームだ。モンハンことモンスターハングリーも人気だ」
グラたん「モンハン?」
嵩都「プレイヤーがモンスターとなって人間を襲い、食べることによって強くなっていくゲームだ」
グラたん「私グロいのは苦手なんですよね……」
嵩都「第一話でやらかした奴が何言ってんだ」
グラたん「げふんげふん……さて、次回予告です!」
嵩都「次回、最大国家アジェンド。やっと国家に到着だな」
グラたん「……それはどうでしょう?」
嵩都「なに……ぃ」




