第六十三話・邪神軍内部
カルラッハ「第六十三話。邪神様の大いなる戦いが今始まる!!」
~嵩都
聖剣 エクスカリバー を 手に入れた!
亮平と悪魔の契約を交わしてエクスカリバーを貰った。
代わりに望み通りに最強も最強、魔界に居る魔王にさえ匹敵する力をくれてやった。
名前はもう決めてある。あいつが大聖堂に来たら大声で宣言してやろう。
牢屋を出ると眩しい日が天に昇っていた。
部屋に戻ろうと思って通路を歩きながらさっきのことを思い出す。
……いい感じに心が折られていたな。やったのは俺だが。
洗脳されていたように力を求めていたな。
あそこまで素直に頷かれると思ってもみなかった。
まあ、そのおかげでエクスカリバーを手に入れることが出来たがな。
一度転移して自宅の自室に戻った。中に入って椅子に腰を掛ける。
少し考えをまとめ、候補先を選ぶがそれらを打ち消す。
ムスペルヘイム城――俺が作った城、その城下町にまだ一度も降りたことがないことに気が付く。
そうと決めて衣装をTシャツと長ズボンに着替え、外に出て飛翔して天高く舞い上がった。
しばらく飛ぶと城が見えてきた。
「うわぁ!?」
迂闊にも俺はいきなり上空から侵入したため住民に驚かれた。
そういえば飛べるのは四天王だけだったな。他はいないのか?
とそこに衛兵が来た。
「貴様、ここをどこだと心得て侵入してきた! ここは邪神スルト様の城だぞ!」
つまり俺の城だ。どうでもいいので城内を観察する。
「おい、聞いているのか! ちょっと城まで来い!」
住民は……おどおどしているな。服とかは着ている。
魔物と言ってもベースは人間とかサラマンダーとかの種族だから下界と違和感が無い。
ふと見ると作物が売っている。食事を必要としているようだ。
……あれ? もしかしてヴェスリーラたちも魔力だけじゃダメなのか?
認識を改めて置く必要があるな。
土地はあの辺一体をくり抜いたからあまりに余っているしな。
外交ルートもカルラッハが開拓している。この城から外にでて大陸内に村や町を起こしている者も多数いるようだ。教育機関は俺のおかげで順調だな。
……すげぇ。俺、もう必要ないじゃん。
「貴様ぁ……誉れ高きウリクレア様直属兵である俺を無視するとはいい度胸だな!」
ん? 衛兵がなにか喚いて剣を抜いたぞ?
そしてそのまま俺を斬ろうとした。
あれ、反逆は出来ないはず……と思うと衛兵の剣が俺にぶつかる前に障壁に弾かれた。
ぶっちゃけ創成者専用の防御スキル、GM防御とでもいうべきか。
「なにっ!?」
自称直属兵が驚いている。だがそれも束の間、笛を加えて高らかに鳴らした。
ふむ、それなりに訓練されているようだな。
そう考えているとぞろぞろと城の方から兵が出てきた。
とは言っても自警団程度の人数だ。一人頭の戦闘力が近衛並だな。
下界の奴らには通用するだろうが……ぶっちゃけ俺にとっては雑魚同然だ。
「ククク、流石にこの人数相手では手も足も出まい」
と、直属兵は言ったが……瞬殺だな。主に彼らが。
俺はじっと自警団もどきの兵士を見た。
それなりに統率は取れている。鎧や剣は一式だな。
中々良い感じだな。もう少し増えれば警察とか自衛隊っぽくなるかな?
そうこう思っていると直属兵は額に青筋を浮かべた。
「てめぇ……やっちまえ!!」
そう命令が出来るところを見ると結構上級の奴か? と思った。
しかも感情表現豊かだな。これだけあるならある程度下界に出しても大丈夫そうだな。
そう思いつつ、上下左右からランダムで打ち出される剣や槍のスキル。
まだ一連撃のみだが、アジェンド城の兵士にも引けを取らないだろう。
熟練度は高いが、まだ連携が甘いな。もっと声を掛けあってもいいと思う。
ちなみにスキルはことごとく障壁が防いでいるから問題ない。
「ば、馬鹿な……」
直属兵とやらが化け物を見るような目つきになった。
ふむ、やっぱり感情豊かだな。自分で作っておいてなんだが実に興味深い。
「なんの騒ぎですか?」
そこに聖母のような声が聞こえた。ゆったりとした服に身を包みながら歩いてくる。
フードはかぶっておらずに素顔を晒している。
ウリクレアだ。相変わらずの美人だな。
「は、ははぁ!」
直属兵たちが一堂に跪いた。
「こらこら、そんなことしなくてよいのですよ」
ウリクレアがそう言うと直属兵たちは姿勢を正した。
これはもう聖母ではなく保母さんだな。
「それで、なんの騒ぎですか?」
ウリクレアが聞くと直属兵は緊張しながら答えた。
「はっ、実はこの者が突然空から落ちて来まして」
と言うとウリクレアは俺を見た。ちなみに落ちてない。降下しただけだ。
そしてウリクレアはギギギっとロボットの如く首を直属兵に向けた。
「あ、あなたたち、この方になにか失礼なことをしませんでしたか?」
ウリクレアが大層怯えて直属兵に聞くと直属兵は素知らぬ顔で答えた。
「はぁ、なにも言わないので外敵と判断して攻撃を――」
その言葉はウリクレアのグーが落ちて続けられることは無かった。
「馬鹿者――――ッ!!」
直属兵はウリクレアの半場悲鳴を聞いて目を瞬かせた。
「こ、こ、この方は邪神様ですよ!? なんていう無礼なことをしているのですか!」
『――――――えっ?』
その声は直属兵だけでなく住民も混じっていた。
そういえば下々には俺の顔見せをしていなかったな。
それとさりげなく角を生やしておく。一々誤解しないようにするためだ。
「申し訳ございませんスルト様。私の不備ですのでお叱り下さい」
ウリクレアが懇願するように言う。自身の私兵だからか深々と頭を下げた。
「……良い。特に気にしていない。それよりも中々良く統率されているな。治安も良いみたいだ。それに皆に顔見せしていなかった余も悪い」
この余という人称だが使う度にはまりつつある。意外と良い。
「そ、そんな、主様は悪くありません!」
ウリクレアが声を張り上げて言った。
どうも怖がられている気がする。それは住民も同じだな。
「……取って食うわけじゃないからそこまで怯える必要はないぞ?」
俺が言うとウリクレアは頷いた。
住民たちも俺が邪神だと分かるや群がり始めた。そろそろ城に入りたい。
「な、何故ですかウリクレア様! こやつが本当に邪神様なのですか? でしたら証拠を見せて頂きたい」
直属兵が随分と生意気に言った。
――凄く舐められていると感じたのは俺だけか?
「ば、馬鹿。そんな口を聞かれたら―――」
「ふむ、ならば試合をしよう」
俺がそう提案すると直属兵がニヤリと笑い再び抜刀した。
「見ていてくださいウリクレア様!! 私がこやつを倒してみせまする!」
「まっ―――」
ウリクレアの決死の叫びを遮って俺が前に出た。
「―――もちろん相応の怪我は覚悟してもらうがな」
直属兵の顔が分かりやすく怒りに歪んだ。
「貴様ぁ……そこまで言うからには覚悟が――――ぁ」
舐められるのも嫌なのでまずは威圧をプレゼント。
直属兵が足をガクガク、歯をガタガタ鳴らして剣を落とした。
直属兵が無様に尻をついた。いたる箇所から液体が出ている。
「さあ、立ちたまえ。稽古をつけてやろう」
ストレージからただの木剣を出してゆっくりと剣先を直属兵に向け、更に威圧を殺気に変えてプレゼントフォーユー。ゆっくり、ゆっくりと一歩ずつ近づいていく。
それだけで直属兵は股間から液を垂らして気絶した。
左右を見ると何が起きたのか分からないという顔が大多数あった。
当然、威圧は直属兵だけだ。むやみに住民を威圧してどうする。
「……つまらん」
亮平たちはもう少し張り合ってくれたのにな。
「あ、主様……」
ウリクレアが怯えながら言う。
……これが原因か? いや、ウリクレアを見ているとなんか違うように思える。
――なんか隠してないか? まるで悪戯をしてばれないようにしている子供みたいだ。そういう風にも見える。
「良い。そこの兵、彼を介抱してやれ」
「は、ハッ!」
適当に指差して命令し、直属兵を運ばせた。
さて、そろそろ本題に入るか。
「ウリクレア」
「は、はい!」
「一週間後に戦になると四天王に伝えて置け。無論、余も出る」
俺がそういうとウリクレアの顔が緊張した。
「い、いえ、スルト様が出られて万が一がありましたら私は……」
全く……万一も無いだろうに。俺はウリクレアに近付いてそっと頬に手を当てた。
「安心しろ。余がいる限り負けはないし、余に万が一はない。お前たちを置いて遠くにいくことはない」
俺がそういうとウリクレアは頬を染めた。
――悪戯とは違うな。この反応は違うと分かる。
なんだ? この場合、言う確率は低いが本人に問うた方が早い。
更に近づいてウリクレアの頬に当てた手を後頭部に持っていき、耳元でそっと囁く。
「ウリクレア、何か隠し事をしていないか?」
ウリクレアが図星だと言わんばかりに密着した心拍音を跳ね上げる。
「あ、いえ、決してそのようなことは」
ここでは言いにくいらしい。そのまま勢いよく上空に飛び上がる。
その際にウリクレアのローブが捲れないように細心の注意を払っておいた。
浮遊大陸からおよそ千km上空にきた。
「ここなら誰もいない。さあ、余に言ってごらん」
念のため辺りに音消し魔法を張り、盗聴防止魔法をかけておく。
「うっ――はい」
ウリクレアが何故か顔を真っ赤に染めながら頷いた。
いや、うぬぼれるつもりはないが俺がそこそこ美形だからだろう。
「申し訳ございません。私、実は主様に内緒で最近人間界に行っておりました」
意外だな。ウリクレアがこんなに行動的とは思っていなかった。
「人間界に? 何故?」
「興味から、です。人間というものをより深く知りたい、言わば己が欲のために行動しておりました。隠していたことを後ろめたく思っており挙動不審になっておりました」
なんだ。そういうことだったのか。
「良い。欲は生物ならば必ずありし物。それを何故咎めようか。お前の好きなように動いてみるが良い。余は止めはせぬ。他の者も同様である」
ウリクレアは俺を上目使いで見上げ、ほほ笑んだ。
「寛大なお心に感謝致します。三人にも伝えておきますね」
「ああ、そうしてくれ。それと人間界の何処へ行っていたんだ?」
それを聞くとウリクレアはほほ笑んだまま固まった。
「あ、その、教国ハイクフォックという城へ行き……その……いつの間にか最高権威である教皇という立場に……」
「―――はっ?」
目が点になるとはこのことだろう。
まさかウリクレアが教皇になっていようとは誰が思ったか。
「あ、やはりダメですよね? 人間に利になるような行動は――」
「いや、先ほども言ったがやりたいようにやってみよ。結果はどうあれその過程はお前の糧になる。仕事の方はやはりカルラッハが?」
「うっ――申し訳ありません」
ヴェスリーラ、ウリクレア、自分、計三人分の仕事をカルラッハは一人で負担していたようだ。今すぐにでも支援せねば。
急いで降下して城内に入りカルラッハがいる執務室の戸を開く。
「カルラッハ! 生きているか!?」
「じゃ、邪神様? そんな血相抱えて如何なされました?」
眼前には山のような書類を左右に積まれて正面になんとか顔が見えている状態だ。
カルラッハの表情は痩せこけて隈が酷いことになっている。
「カルラッハ、お前がそんな状態になっていることに気が付かず、すまなかった。今すぐ援軍を出す」
俺は急いで即戦力になる部下を十人ほど創成する。
「お、おお……私などのために……感謝しますぞ……」
カルラッハが今にも泣きそうな声で頭を下げた。
「さあ、お前たち。急いでカルラッハを助けるのだ!」
『了解!』
部下たちが書類を整えて次々に片付けていくが書類の束が減る様子がない。
俺は追加で十人創成して当たらせるとようやく順調に回り始めた。
「カルラッハ、この仕事が終わったら休め。有給を許可する」
「何から何までありがとうございます邪神様」
これでカルラッハは大丈夫だろう。退出する。
「あ、あの、カルラッハは?」
俺が玉座に座るとウリクレアも座り、聞いてくる。
「大丈夫だ。新たに二十人部下を作った」
「左様ですか。申し訳ありませんでした」
「良い。それよりお前が教皇になったというハイクフォックについてだが今週の十三日からハイクフォックに滞在する予定だ」
「まあ、でしたら是非協会本部にお立ち寄りください。最高のおもてなしを致します」
「いや、余は勇者兼護衛としていくため立ち寄れることはないだろう。だが、もし時間があったら向かおう」
「分かりました。お待ちしておりますね」
ウリクレアが教皇となったのは良い意味で誤算だった。
実質ハイクフォックは陥落したも同然だ。あわよくばウリクレアが王座に就けば時期国王になる亮平や勇者たちと同盟を組むことも用意になる。
まあ、亮平たちが俺のことを許してくれればの話だが。
次期国王が確定しているのは勿論五人目たるハイクフォックの王子が死ぬからだ。
というか殺す。何が何でも殺して亮平に幸せになってもらう。
それからウリクレアと話し、楽しい時間を過ごした。
鹿耶「次回予告。親友を国に売り渡して出世した嵩都はアネルーテ第二王女様の専属近衛騎士となった。しかしそれを止めようとする若者が一人。彼の行く末は――」
嵩都「私刑一択だろ」
鹿耶「身も蓋もないことを言うな」




