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勇邪の物語  作者: グラたん
第一章ロンプロウム編
65/466

外伝 佐藤大典

大典「俺の過去が今、明らかになる!!」

嵩都「見なくても本筋には影響しないな」

大典「言うな」

~佐藤大典

 亮平たちの脱走に加担し、失敗した俺たちは牢屋に入れられていた。

 牢屋の生活もそんなに悪くはない。普通に三食出て、面会も出来るし、風呂もあり、後は筋トレするか寝るかくらいだ。



「はぁぁ……」



 だが、溜息も付きたくなる。

 この間レイこと俺の嫁マベレイズが面会に来て今の状況を教えてくれた。

 試験運用した試作機ナガジェラスは大破。王女様の脱走自体は極秘に闇に葬られ、城の重役以外は知らされていないそうだ。

 ST工房はレイと従業員たちが切り盛りしてくれている。工房の武器や開発はスキルの都合上俺がいないと製品が作れない。早く釈放されたい。

 それはともかく、ナガジェラスが大破したのは実に痛手だ。改修の費用や設計も見直さなくてはいけない。――いや、嵩都があそこまで強い奴だと心にも思っていなかったのが今回の敗因だろう。

 他の牢屋には加担した皆がいるが、誰一人として声を上げない。牢屋に入ってからはずっとこの静寂が続いている。

 そういえば……こんな大きなことをしでかしたのは初めてだな。

 この世界に来て皆少なからず変わった。俺もここまで劇的に変化している。これも、あの日レイと出会ったからなのだろうな。





 ――記憶は過去へ遡る。

 あの日――この世界に召喚された日が全ての境目だった。

 俺はあの地球にいた頃は全てにおいて劣等だった。

 俺は孤児だ。そして誰も味方がいなかった。

 勉強は出来ない、愛想は悪い、すぐ暴力を振るう……あげれば切りがない。

 高等学校の寮に入るまでは孤児院で生活をしていた。

 孤児院の食事は少なく、生きるためだと思って窃盗もした。当時はそれを何ら悪い行為だとも思っていなかった。それを教えてくれる人もいなかったからだ。

 やがて俺はポリ公に捕まり、数年間牢屋に入っていた。

 当時の俺にとって牢屋は住み心地の良い世界だった。自由こそ制限されたが三食に安心して眠れる場所だった。

 だが、それも長くは続かなかった。俺と同室になった奴が暴力を振るう奴だったからだ。数日もしない内に俺はそいつを半殺しにし、また別室へと住むことになった。

 それ以降、俺は変わることなく生きた。

 数年後、俺は釈放され、引き取り人と称した奴が俺をあの高校に連れて行った。

 何でもそいつは見返りを求めずに犯罪者になってしまった少年少女を助けたいのだと。最初はとても信じられなかった。何か裏があるのかと思った。

 付いて行くと小奇麗な寮の一室を用意され、勉強道具や金も揃えられていた。

 高校に入ると何か変わるのかと思って行った。

 だが何も変わらなかった。俺は惰性のようになって行った。



「あぁ……つまんねえ……」



 牢屋に入っていたのだから勉強なんて分かるわけもない。

 だから時間だけは余っていた。俺はそれをインターネットやゲームで潰していた。

 バイトをして金を溜めて、金の使い方を知った。好きなものをなんでも買えた。それが嬉しかった。

 悪ぶって髪を金色に染めた。不良だとよく言われた。

 そんな日々が――いつか当たり前になっていった。

 それでもなんとか就職が決まって社会に出ようとした。

 だけどあの日に俺の全てが変わった。

 卒業を待つだけの、社会のはみ出し者の俺たちにとって幸か不幸かどっちだかは分からないが異世界に召喚されるという非日常が襲った。

 最初は錯乱した。誰が何を言っているのか分からない。いや、正確には言葉が分からなかった。英語とかの外国語なら多少は分かったと思う。

 だが、全くの異世界語だった。不安と恐怖で錯乱した俺は暴力に奔った。

 怖かった。ワケが分からなかった。怒鳴り散らして、嘆いた。

 嵩都にも殴り掛かった。最も、その頃から俺たちとは一線も二線も違った嵩都は一瞬で俺を封殺し、そのおかげで少しだけ冷静になった俺はようやく状況を理解した。

 嵩都を含めた何人かは言葉が分かったようで通訳して貰ってなんとか飲み込んだ。

 隊長と仲を直した後、一人で眠りについた。

 ようやく落ち着いた二日後、謁見場に呼ばれた。

 そこで俺は自分の能力を初めて見た。そして笑われた。残念なくらいのはずれ能力だと始めは思った。恥ずかしさと悔しさのあまりに泣きかけた。

 そこで俺はまた嵩都に助けられた。嵩都に言われて俺は初めて向上心を持ったと思う。笑った奴らを見返してやる。その一心だった。

 やがて魔王様が来て、このアジェンド城に移動することになった。

 行軍が終わった夜中にはプレアさんが魔王様と共にこの世界の言語を教えてくれた。勿論、最初は翻訳して貰って何とかだったが努力したおかげでこの世界の言語を憶えることが出来た。

 言語が通じた。それはひたすら嬉しかった。努力がこんなにも楽しい物だと初めて知った。一重に嵩都、プレアさん、魔王様のおかげだ。

 行軍中には魔物が出て来た。いくら鍛冶職だからと言っても戦えないわけじゃない。

 戦えなくはないが――出てくる魔物を全てプレアさんが狩ってしまっていた。

 素材は要らないそうなので譲って貰い、鍛冶スキルを鍛えるための足しにした。

 そして第一回ラグナロクが始まり、俺たちは一時奴隷へと身を落とした。

 アジェンド城に来る頃には分からなかった異世界語が日本語の様に聞こえていた。読み、書き、話すことが出来るようになっていた。


 アジェンド城に到着し、空いた夕方の時間にギルドへと行った。目的はギルドカードだ。俺だってラノベは大好物だ。知らないはずがない。

 アジェンド城に来たその夜、猛、武久、加奈子の三人の行方が分からなくなった。

 捜索は隊長たちがしてくれるそうだ。俺たちも捜索したいと志願し、城下町を捜索することになった。

 アジェンド城の城下町はとにかく広い。徒歩で探していたら何週間かかるか分かったもんじゃない。城下町を捜索してくれている兵士たちも城下町の全ては知らない程だ。

 城の兵士たちを含めて数時間城下町を練り歩いていると、その途中で荷物が散乱している馬車を見つけた。前までの俺なら多少くすねていたはずだが、その日に限っては良心が働いた。……いや、嵩都の言葉があったからかもしれないな。



「大丈夫か? 手伝うぞ」

「ん? あら、ありがと」



 俺は駆け寄ってその荷物を馬車に積み込むのを手伝った。



「いやぁ、助かったわ。これ、少ないけどお礼。それじゃね」



 終わるとその馬車の主は俺にお礼を言って去って行った。

 そして帰ろうとして自分の状況に気付く。

 ――――はぐれた。

 土地勘なんてあるわけもなく俺は夜の城下町を彷徨った。

 これだけ広大な城だ。本城ははるか遠くにしか見えない。つまり目印は無いに等しかった。



「ありがとうございましたー」



 明るい声がする。こんな夜中に商売か?



「ああ、またよろしく」

「ふー、売れた売れた。好調だね。…………あれっ、君はさっきの人?」

「え、あ、おお」



 よくよく見るとさっき荷物をばらまいていた人だ。

 その馬車の主――マベレイズさんがお礼をしたいということで誘われた。



「そういえば君、ええと名前なんて言うの?」

「俺は佐藤大典だ。マベレイズさんは――」

「マベレイズで良いわよ。見た感じ年も近そうだし」



 俺たちは不思議と呼吸が合う様に話しあった。

 しばらく歩いていると広い空地に出た。ざっと東京ドームくらいあるだろうか。その端っこに小さな家があった。



「あ、見えてきたよ。あそこの家が私の家なの」



 そこがマベレイズの家だという。なんでも鍛冶屋と素材屋をしているらしい。中に入ると炉や解体器具が置いてあった。



「お待たせ。どしたの?」



 マベレイズが戻ってきて――そこで分かったがマベレイズは女性だった。年齢的には俺とそんなに変わらないだろう。

 大きなオレンジ色の瞳に同色の髪の毛、引き締まった、けれどそれを感じさせない肉体。服装は青い半そでにワンピースを重ね着している。

 女性だったことに驚き、今更ながら少々ドキマギしながらも話を進めた。

 そして炉や器具を見せて貰い、俺の頭にとある形が浮かんだ。天啓とも言える。

 俺は自分の能力である鍛冶を起動させる。



「ちょっと作ってみてもいいか?」

「ん? ああ、余り物だから好きに使ってよ」



 お言葉に甘えてカンカンと簡単に作ってみる。

 今回作ったのは地球の家電製品。電子経路とかは分からないので形だけだが、そこに氷の魔法を使って中を凍らせた。すると、不思議な事に数十秒経ったら消えるはずの氷が消えずに冷蔵庫の中を冷やし続けている。



「うわぁ……こんなの考えもしなかったよ」



 それをマベレイズさんに見せると天才だと言われた。

 俺としては全く分からない不思議現象に助けられた形だ。

 せっかくなので冷蔵庫はマベレイズにあげることにした。マベレイズは本当に良いのかと何度も問い詰めて来たのはずっと印象に残っている。

 この頃は知らなかったが、当時は一個ウン百万単位で売れるほどだったらしい。

 今は城下町だけでなく、本城や他国にも普及している。

 ちなみにこの不思議現象だが、『精霊』と呼ばれる魔力の塊が手伝ってくれている。『精霊』は精霊魔法と呼ばれる普通の魔法とは違う魔法や召喚魔法などを使う時に力を貸してもらう必要があり、『精霊』自身にも意志があるため好かれないと力を貸して貰えないそうだ。

 現在の俺は鍛冶をするために必要な火、水、氷、鉄など八種類の精霊と契約している。『精霊』も気に入った生物にしか姿を見せないため俺は天才なのだそうだ。

 それで、冷蔵庫を見たマベレイズさんが俺を専属の鍛冶師として迎え入れたいと言ってきた。流石に即興で答えるのは出来ないため、連絡先を教えた。すると、また驚かれた。城に招かれている者とは一言も言っていなかったからな。

 ちなみにアジェンド城の見習いになるには選抜を生き残った者だけがなれるらしい。毎年のように選抜に挑む者はいるが合格する者はほとんどいないそうだ。力だけでも文学だけでもダメ。地球で言うならばハーバード大学に入るくらいの倍率だ。

 それはそうと、俺はマベレイズさんにまた明日の夜に来ると伝えて城に向かった。

 門の兵士には事情を説明して通して貰った。数時間後に隊長たちから連絡があり、また猛たちと嵩都たちも帰還した。

 プレアさんに背負って貰っている嵩都を見て俺たちに殺意が沸いたのは言うまでもない。プレアさんは微笑しながら誤解を解いていたけど。

 その日の夜、隊長からラグナロクを行うと言い、亮平の部屋に集まった。

 内容は男にとっては燃える、客観的にはお馬鹿な戦いが行われる計画に乗せられた。

 無論、俺も参加を表明した。

 次の日からは訓練が始まった。基礎トレーニングをし、基本の素振りを永遠と午前中はやった。午後は魔法の訓練だ。どれも実戦で使える訓練をしながら講義を聞く。

 そして夜になって再びマベレイズの家へと向かった。



「来たぜ」

「待ってたわ」



 家に着くとマベレイズが出迎えてくれた。

 まずは昨日一晩寝ずに考え、未熟ながらお世話になると言うとマベレイズが任せてと答えて――――超基礎の鍛冶方法から叩き込まれた。

 それからは毎日のように通った。

 鍛冶の基礎は当然の事、素材や選び方、場所、見つけ方や発掘の仕方まで教わって、分からないところは即座に聞いた。

 それと例の家電製品がマベレイズの工房に配備されていた。

 それにしても魔法と精霊は便利だな。俺が使い方を全く知らなくても良い仕事してくれるぜ。代わりに契約上ごっそりと魔力を持っていかれるけどな。

 それで冷蔵庫の実用性は十分と判断されて、売りに出された。

 その夜、ラグナロクに朝宮を参加させることに成功した。新たな情報が仕入れられて、それを起点に策を練るようだった。

 その日の夜もマベレイズの家に通って修行した。



「え、あれ売れたのか……」

「うん、それでね―――」



 例の家電製品の追加注文が来ていたらしく、俺はそれを承って作成した。

 どうにも大好評らしくどんどん作ってほしいとのことだ。

 マベレイズにも手伝って貰いつつ量産した。そしてまた新しい製品も作った。それと遊びでトランプや将棋も作った。



「それじゃあ、そろそろ戻るから」

「分かったー。また明日ねー」



 ブツは完成し、マベレイズに後を任せて城に戻った。

 




 今日も訓練訓練。

 夕方を経て夜になった。俺はマベレイズの家へと向かった。



「来たぜ」

「あ、ちょっと待ってね」



 家に着くとマベレイズもいま帰ってきたようだった。



「俺もやるぞ」

「そう? じゃあ、その薪を運んでくれる?」

「おう」



 最近は筋力値と体力値に補正がかかったからな。これくらいは楽勝だ。

 終わって家の中に入るとマベレイズがお茶と袋を持ってきた。



「それは?」

「何だと思う?」



 お茶を飲みながらその袋の中身を聞くと、それは今日の売り上げらしい。

 それをアイディアと製造――素材代金は差し引いた額を受け取ってほしいと言われた。固辞したが、マベレイズも頑なに譲らなかった。

 結局、先行投資として工房の拡張ということで落ちついた。



 それから三日が経過した。工房の方は工事しているようだ。工房は通常運転で開店しているので今日も基礎習得を頑張る。



 その次の日。

 マベレイズの家へ向かうと昨日まであった工事現場が無くなっていた。

 そして家の前にはマベレイズが居て、朝の荷造りをしていた。



「あ、来てくれたのね」

「……」



 そして最高に絶句した。

 マベレイズが俺の方に駆け寄ってくる。



「ん? どうしたの?」



 どうしたの? という問題じゃないだろう。

 俺の視線に気づいたのか、マベレイズは言った。



「ああ、工房ね。ちょっと広くしてみたの。どうかな?」



 ちょっと、という問題じゃない。あの東京ドームほどもあった広い空地が今や工場もかくやと言うほどになっているし、作業員や鍛冶師まで雇っている。



「えっとね、この間工面したお金で工房を改良したら、何時の間にかこんなことになっちゃって……不味かった?」



 マベレイズが心配そうな声で聞いてくる。



「――あ、いや、大丈夫だ。まさかこんなになっているとは思っていなくてな」

「本当? ふふっ、シューに喜んでもらえた!」



 マベレイズが目的を達成した子供のようにはしゃいだ。

 それと一つ疑問が浮かんだ。



「ん? なあ、そのシューってまさか……」



 するとマベレイズが俺を指差して言った。



「もちろん大典の愛称。どうかな?」



 そのしぐさに俺は心臓を撃ち抜かれた。

 彼女居ない歴=年齢のこの俺が……この俺の心臓が高鳴っているだとぉ!?

 同時に、これが恋に落ちた感覚だとはっきりと理解してしまった。

 まあ、今考えればあれだけ密接で濃厚な時間を過ごしていればそうなる可能性は非常に高いだろう。



「ありがとう、マベレイズ」



 そう言うとマベレイズは少し拗ねたように頬を膨らました。



「マベレイズ?」

「どうせなら私の事も愛称で呼んで頂戴」



 無茶振りだ。だが、その無茶振りには結構無難な答えを返していた。



「じゃあ、レイ」



 すると今度はマベレイズ――レイの方が頬を赤くして指を自分にさした。

 そこで俺は大きく頷いた。するとレイは高速どこかに駆け出して行った。

 しばらくすると戻ってきて、ようやく本題に入った。 



「ねえ、シュー。この工房の名前どうしよっか? というかシューが決めて」



 丸投げかい。まあ別に良いけどさ。 



「そうだな……。佐藤のSと大典のTでSTはどうだ?」

「ST……ST工房かぁ。良いわ。うん、良し決定!」

「早っ!!」



 こうして俺たちの工房、ST工房が開店した。

 工房が広くなったこともあり、今までよりも多くのブツを作れるようになった。差し当たっては従業員を拡張した。

 作っている実物を見せるとレイを筆頭に鍛冶師たちも目を丸くした。

 誰もが俺のことを天才と称賛し、主婦ネットワークの間で徐々に徐々にSTの名が浸透し始めた。

 それともう一つ、現在のナガジェラスの設計案を見せると全員が頭を抱えた。

 流石にこればかりは俺が模索していくしかなさそうだ。

 




この所ST工房に入り浸る日が続き、寝泊まりする日もザラになってきた。レイは笑顔で了承してくれたのでお言葉に甘えている。



 「もういっそ家に住み込めば良いんじゃない?」



 その一言で多少口論になったのだが、結局は甘えることにした。

 そうして次の日。荷物をまとめた俺が城から出ようとすると斎藤に見つかった。

 丁度良かったのでテストパイロットに誘ったら即OKが貰えた。

 工房に連れて行き、実際に乗せて見ると腕前は中々早く上達した。

 問題も多々あったが、順調の滑り出しだった。

 個人装備も制作し、更には新作武具や専用機も制作を検討した。

 あくる日、斎藤が筑笹と猛たちを連れて来た。そして流れるように奴等はテストパイロットとなった。まあ、実験台が増えるのは俺も嬉しい。

 更にはアジェンド城の経理に売り込んで提携もした。仲介は川城が個人で経営している川城商店だ。あの野郎も知識と幸運無双してやがった。


 



 嵩都が何処ぞのクエから帰ってきた。

 そして俺とレイの関係に誤解が――いや、別に誤解じゃなくても良いが知れると私刑にする野郎共に聞かされると不味い。そして嵩都の手によってスレは地雷原と成り果てた。

次の日は休暇で訓練はない。そのために暇になってしまった。

 せっかくなので素材採取に出かけた。

 流石は異世界というべきか見たことのない素材がそこらかしこにあった。

 素材を集めているとスキル熟練度が上がり、その度に俺の頭の中には後のナガジェラスの設計図が浮かんでいた。

 戻ってくる頃には夕方になっていた。今日も売り上げは上々だった。



 嵩都が訓練に参加した。その後はパンドラの箱を開けっ放しにした状態だったと言っておく。その午後に俺は一度死にかけていたらしいが良く覚えていない。

 


 次の日は休暇で訓練はない。そのために暇になってしまった。

 せっかくなので素材採取に出かけた。

 結果は大量で質の良い物も多くあってレイは喜んでいた。



 今日も訓練はない。どうやら隊長のプライドが折れたらしく、訓練に覇気がないから自主練だそうな。仕方ない。今日も素材採取だ。

 


 今日も訓練はないが、隊長は明日から復帰するようだ。

 仕方ないのでレイと初デートした。工房はお休みだ。



 次の日、魔帝様が暗殺された。

 あまりにも突然の事だった。その後に筑笹に招集をかけられて俺たちは立場を決めた。最も、俺がこの城から離れることはない。レイがいるのだから。

 その日の夜から二日間は喪に服して工房も休業した。

 レイもこの日ばかりは酒を飲み、魔帝様の死を悲しんでいた。

 それだけ城下町の住民にも慕われていたというわけだ。惜しい人を亡くした。

 

 やがてラグナロクの時が近づいてきた。

 ナガジェラスの完成もあと少しという感じになった。

 野郎と女子たちが使っていた試作武器も回収し、量産して実戦用に売り出した。

 アジェンド城に住まう冒険者は、今ではSTシリーズを使っている人が多くいる。

 その分、武具屋からの苦情が絶えないがこれも一種の戦争だ。すまんな。

 罰を受けた後、全員に休暇が与えられた。

 ここ数日は戦闘兵器ではなく家電製品を作っていた。


 二十九日、事件は起きた。

 第一王女様の婚礼が決まり、亮平は落ち込む日々だ。

 亮平が王女様と一緒に居る時はそれはもうだらしないほどデレデレしている。同時に王女様の方も亮平にベタ惚れだった。

 そんな想いも儚いものだったと思い知らされたんだ。ああなってもしょうがない。

 その後、筑笹から亮平たちの駆け落ち計画を聞かされた俺は筑篠に依頼されて、武器とナガジェラスを提供した。

 そして来る日、STは初陣を飾った。そしてその結果。

 


 ――俺たちは華々しく散った。



 ぶっちゃけ、あの強さは異常だ。俺たちだってAランクくらいの実力はあるつもりだ。ナガジェラスなんてSに分類されても良いくらいの強さはある。

 それが瞬殺な上に真っ二つ。最初見た時は目を疑った。

 圧倒的強者。それが一番あいつに合う言葉だ。今の俺たちではかすり傷さえもつけられない。

 ――悔しいと誰もが思っていることだろう。今回の作戦に失敗は許されなかった。なのに、俺たちは失敗した。嵩都の性でと逆恨みさえしたくなる。

 次に戦う時は負けたくない。専用機の設計はもう出来ている。それに筑笹たちの機体も開発途中だ。次は……次があるのなら、絶対に負けたくない。

 そう考えていると足音が聞こえてくる。



 「皆、国王様より命令だ。全員釈放だ」



 伝えに来てくれたのは隊長だ。

 その後、俺たちは隊長と国王様に謝罪し、許しを得た。





「この……馬鹿ぁぁ――――ッ!!」

「ご、ごめん」

 その足で工房へと帰り、そしてレイにめっちゃ叱られた。





 次の日がやってきた。また、一日が始まる。


嵩都「なあ、しばらく休んだらどうだ? 流石に外伝三連発はないだろ」

グラたん「……返す言葉もありません。しかし、読者様方のためにも休むわけにはいきません!」

嵩都「そうか」

川城「次回、ぶっひゃぁぁあああ! たまんねぇぇぜぇぇ!!」

嵩都「嘘だろ……?」

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