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勇邪の物語  作者: グラたん
第一章ロンプロウム編
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第五十三話・特務

???「私、参上!」

グラたん「名前だけだったキャラの登場ですね」

???「第五十三話、行くよ!」


 城に戻って身なりを整え、謁見場へと来た。

 衛兵に止められて謁見場前で待つと中から声が聞こえる。



「朝宮嵩都殿がお着きになりました」

「通せ」



 衛兵に連れられて中へ入る。

 国王が手を振って人払いをしてこの場には俺と国王とそして国王の隣にいるフード目深くかぶっている黒コートの少女のみが残った。そんなに重要な職につくのだろうか。



「朝宮嵩都、ただいま参りました」



 一礼して顔を上げる。



「うむ。早速であるがそなたには正式に特務の任についてもらう。特務とは国王の勅命で動く人員のことで任務の中には殺しや拷問も含まれることがある。主に城下町や領土内で仕事をするが時折外交にいくこともある」



 特務……裏方の仕事か。地球にいた頃とそうそう変わらないな。



「心得ました」

「うむ。では、そなたを特務に任ずる。詳しいことは彼女に聞くがよい。以上だ」



 国王が鈴を鳴らすと文官たちや貴族が戻ってきた。

 俺は少女に無言で腕を引かれて入れ違いに退出した。

 少女に連れられてきたのは地下牢獄だ。この間の俺たち同様にポカやらかした奴らが数人入っている。

 更に奥へとすすみ看守室に入る。そしてその看守室の更に奥にある階段を下る。

 下り終えると厳重に施錠された部屋に連れていかれた。

 部屋の中は殺風景な長方形の空間だ。中央に机と椅子がある。



「適当に座って」



 ――ん? 一瞬誰の声が分からなかった。とても明るく高い声だ。

 少女の方を見ると少女はフードを抜いでそのしなやかな黒髪を露わにしていた。

 ショートボブカットでふんわりした髪型だな。

 ローブを脱いで――って、おい! 胸元がゆるい黒Tシャツに下着並みに短い短パン姿だ。

 ちなみにコートとフードも黒だな。壁に立てかけてあるのは刀のようだ。

 コートの背には赤糸でⅣと白刺繍でその周りにアジェンド城の紋章が入っている。

 ――オホン、とりあえずそっぽ向いておこう。何も見てない。

 コポコポとお湯が沸騰する音が聞こえる。次いで注ぐ音。



「はい、お待たせ」



 ゲフン。さっきと寸分変わらぬお姿でお茶を入れてくれました。

 羞恥心とかないのかこの人は。



「せめて上を着てください」



 お茶を受け取りつつそう答えると少女はニコリと笑った。



「興奮しちゃってる?」



 ゴブッ。一瞬だけむせた。

 まさかそんなことを聞いてくる女子が本当にいるとは……。



「まあ、それはそれとして私は霧谷司。同じ特務だよ」



 なんというか……実は黒い感じの人だな。

 ――いや、ちょっと待て。キリタニツカサ? どう聞いても地球の日本人っぽいけど。



「あ、それと君たちと同じく転移者だよ。同じ地球の日本がどうかはわからないけどね。歳は17、武器は刀で好きなものは果物ね。コードはミストラル。敬語は要らないよ」



 ミストラル――ミスト……霧か。霧で谷で司ね。

 そして年下か。和風美人ではないな。流石現実。

 だけど余計なメイクや飾りが無い分柔らかい感じがする。



「俺は朝宮嵩都。武器は剣。歳は18だ」

「うん、知ってるよ。プレアから聞いたから」



 むっ、ちょっと警戒。一応聞いてみるか。



「そうか。プレアとはどういう関係なんだ?」

「あれ? 聞いてない? 一応、神殺し計画の一員なんだけど……」



 神殺し計画――ああ、そんな名称だったのか。

 そういえば前にプレアがもう一人協力者がいるって言っていたな。同じ名前と性別だしな。



「思い出した。すっかり忘れてた」

「嵩都さんて実は忘れん坊?」



 酷い言われようだ。彼女なりの冗談なのかもしれないが。

 とりあえず本題に入ろう。このままだと何時まで弄られるか分からない。



「――さて、特務について教えてくれるか?」

「すごい強引な話題転換だね……。まあいいや。えっと、特務の仕事は主に裏方の仕事で国王も言った通り殺人から拷問までやるお仕事です。出来そう?」

「問題ない。裏は慣れている」

「うわっ、すごい危険な人だ」

「それはお前もだろうが」



 司は思いっきり身を引いている。

 地味に傷つくな……。ナイーブな青年の心を抉るぜ。

 それに危険度で言ったら彼女の方が余程危険だ。



「特務の人数はどれくらいいるんだ?」

「さあね。実のところ私もよくわからないの。ピンからキリまでいるからね」



 そう言いつつ司は机にあった紙袋を漁り、綺麗に畳まれた黒コートを取り出した。



「はい。これが自爆スイッチ付きの特務コート」

「危なっ!?」



 冗談だとは思うがそんなコートは着たくない。



「冗談だよ。階級は下っ端で年単位で自動更新されるから」



 年単位か……。思ったより競争率が激しそうだな。



「あ、ちなみに十以上が殉職したら国王が勅令で指名するよ。その場合や勅命に限っては即更新されるから」

「なるほど。それで司は何位なんだ?」

「ふふん、四位だよ」



 上司でしたか。そういえばさっき背広に書いてあったな。

 で、俺は無印。ランク外なのね。

 まあ、俺の力ならすぐにでも昇格できるだろう。



「それと嵩都は今日から私の管轄だからよろしくね!」



 上司らしい。四位というくらいだから相当に強いのだろう。



「分かった。よろしく」



 司の手から黒コートを受け取りつつ答えた。



「司の部下は他には誰がいるんだ?」

「ん? 誰もいないよ。嵩都だけ」

「プレアは違うのか」

「うん。そもそもプレアは私が特務だってことしか知らないし」



 プレアは特務じゃないのか。良かったと思う反面一緒に居たかったと思う。

 ああ、思い出したら手を繋ぎたくなる。

 拗らせたなぁ、と思う。

 そういえば俺以外に部下がいないんだな。単純に人望がないのか、それとも部下要らずなのかは分からないが追及は止めておいた方が良さそうだ。

 とりあえずは職務を実行しよう。



「了解。じゃ、頑張りますか! 今日の仕事は?」

「仕事というよりは研修かな。まずは実力診断と身体測定。あ、それとコードも決めないとね。コードは自分で決めてもいいし私が決めてもいいの。どうする?」

「んー、自分でつけると絶対痛いのになりそうだからお願いしようかな」



 実際、地球の授業でそういうのが一度あったが、あれは本当に黒歴史だ。

 ついでに言うとその考えた奴を発表するという地獄付き。

 泣けた。あれは本当に泣けた。



「分かった。……そうだねぇ、朝宮嵩都の朝と嵩と都でアストはどうかな?」



 アスト――うん、いいな。しかも覚えやすい。

 ネーミングセンスもかなり良い。

 何だろう、気が合うというかノリが合うというか……付き合っていて飽きないな。

 これは勘だが、彼女となら上手くやっていけそうな気がする。



「アストか。いいんじゃないか? ありがたく受け取るよ」

「気に入ってもらえたのなら何よりだよ。それじゃアスト、訓練場に行こうか」

「了解であります。ミストラル先輩」

「ごめん、先輩は勘弁して」



 黒コートを羽織りつつ冗談まぎれに言うと司はブルリと体を震わせた。

 しばらくはこのネタで弄れそうだと思いつつ部屋を出て訓練場に向かった。

 司は兵士たちや文官たちとも面識があるのかすれ違い様に挨拶を交わしていた。

 兵士たちが驚いているのは気の性であって欲しい。



 訓練場に着き、軽くアップを済ませて司と相対した。



「それじゃ、軽く打ち合ってみようか」

「はい」



 俺が手に持つのはヴァルナクラムではなくただの木剣だ。

 司は木刀を居合打めで構えている。

 居合への対処法は二つ。開始と同時に後ろへ下がるか、相手より先に剣を当てるか。

 しばしの膠着の後、司が動いた。刀が青色に輝き、土を深く踏み込んだ。



「フッ」



 ――ッ、予想よりも速い!

 一歩半下がり、下段から司の刀を跳ね上げるよう狙って剣を振るう。

 結果は――相殺。お互いの剣が跳ね上がって一瞬の隙を生む。

 戦闘傾向が似ているのか次に考えたことも同じだった。

 相手を吹き飛ばして距離を取ろうと蹴りを放った。

 ほぼ同時だったためかお互いの足の裏が合わさり、軽い衝撃波を生んだ。

 一度距離を取って様子を見る。司は間髪入れずにスキルを使ってくる。

 俺は爆破魔法を司が突っ込んでくるあたりに発射する。

 地面が抉れ、土飛沫が上がって司の足を止めた。

 視界がふさがれている内に加速し、司に肉薄する。

 そしているであろう場所に向かって剣を振るう。

 木がぶつかる音がした。手ごたえはある。

 煙が晴れて状況が分かる。俺の放った剣は見事に止められていた。



「やるねアスト」

「そっちこそ」

「それじゃ、これならどうかな!」



 司が助走なしに空中を蹴り飛ばして俺の頭上を越えていった。

 そして刀が振り下ろされる。

 前転して辛くも回避に成功する。

 そして自動的に理解習得が起動し、先の技の原理を解明する。

 ――なるほど。要するに空中を瞬間的に二弾蹴りして跳躍したのか。



「躱された!?」



 うん、間違いなく初見殺しの技だな。

 じゃ、お返しと行こう。

 剣を突きの構えにして体を縮め、足のつま先を少し浮かせて跳躍する。

 左右に移動するフェイントを交えつつ司に突撃する。



「ま、そう来るよね」



 読まれていたらしい。司の手には火魔法が準備されていた。

 展開し、司の目の前に巨大な火の玉が出現する。

 ちなみにこのままだと俺は自分から火の玉に突っ込む羽目になる。

 右に全力で避ける。もう跳躍じゃなくて超低空飛行に移行した。



「えい!」



 突如、背後から後頭部を強く叩かれた。これも読まれていたか―――。










 気が付くとまず司の顔が映った。背景には青い空。

 意識が覚醒すると同時に体が痛みを覚えた。



「うぐぅ……」

「気が付いた?」

「ああ……はぁ、こっち来てから初めて負けたな……」



 連戦連勝無敗の伝説はここに消え去った。

 俺の理解習得を逆手に取った戦法だな。これからは注意せねば。

 それで俺の後頭部は実に柔らかい地面――なんて勘違いするほど鈍くない。

 間違いなくこれは伝説の膝枕というやつだろう。なごり惜しいが起き上がる。



「よっと」

「あっ……」



 司が何かを言いかけた。深く追及するのは地雷だろう。



「それで俺の評価はどうなんだ?」



 話題を振ると司も表情を変えて結果を言った。



「実力的には問題ないね。合格だよ」



 うむ、そうであろう。じゃなかったらちょっと落ち込むぞ。

 それからもう少し剣と刀を打ち合い、夕方になった。



「うん。それじゃ、今日はここまで」

「ん、了解。お疲れさま」

「お疲れさま。仕事が入ったら連絡するね」

「了解」



 夕暮れと共に司と別れ、俺は学校へと向かった。


グラたん「うぇーい。主人公が負けましたー」

嵩都「理解習得を逆手に取られるとは……やるな」

司「ふふふ、プレアから聞いて事前に対策していたのよ」

嵩都「プレアめ……」

グラたん「では、そろそろ。次回――」

司「次回、裏切る者たち」

グラたん「(馬鹿な、この私が遅れを取るなんて……)」

嵩都「ざまぁー」

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