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勇邪の物語  作者: グラたん
第一章ロンプロウム編
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第五十一話・叙勲と褒賞

グラたん「春ですねぇ」

プレア「実際は秋だけどね」

グラたん「メタ発言は止めてください」

プレア「はーい。それじゃ、第五十一話、どうぞ!」

~嵩都


 起きた俺は少し早歩きで学校の校門へと向かっていた。



「あ、来たね」

「うん」



 校門前に来ると既にプレアとフェルノが来ていた。



「悪い、待たせたみたいだな」

「ううん、そんなことはないよ」

「後二人は? まだ来ていないのか」

「亮平はまだ……博太は佐藤さんと先にホームを建設している……」



 ああ、そういえばそうだな。今日からそこに住むことになっていたな。



「了解。ちょっとリンクしてみる」



 亮平にリンクを飛ばす。

 ……プルル……

 出ないな。あの野郎まさか寝坊したとかっていうオチか? いや、もう一度。

 ……プルル……ガチャ



『はい、はい。どちらさまですか?』

『嵩都だ。寝ぼけているのか? 入学式始まるぞ』

『嵩都……あ、やべっ!? 寝すぎた!』

『アホ。ギリギリまで待ってやるから早く来いよ』

『す、すまん。この恩は――』

『昼食で返して貰おうか』

『――……分かった』



 亮平とのリンクが切れる。我ながら安い恩だと思う。



「なんて?」

「寝坊だとさ。後十五分したら来るだろう」

「分かった」



 雑談しながら待つこと十五分。博太、大典とも合流して残るは亮平のみとなった。

 その亮平が寝癖を直しながら走ってきていた。



「す、すまん!」

「さて、揃ったことだし行くか」



 亮平を加え、俺たち六人は学内へと入った。

 大講義堂前に来ると張り紙がしてあった。



「なんだ?」

「クラス分けみたいだな。席も決まっているみたいだ」



 魔法科と武術科で半々に分かれている。前からC、B、Aと座るようだ。



「それで、Sはどこだ?」

「最上段……特等席」



 特等席、それはAクラスの後ろで他より一段高い場所だ。

 とにかく中に入らない事には始まらない。中に入り、亮平たちと別れた。

 亮平、大典、博太、フェルノと別れ、俺とプレアはSクラス席に来ていた。

 Sクラスにいるのは十人。俺たちを含めても後八人いる。

 その内の四人が勇者なわけだ。向こうの武術科は四人が勇者だ。



「おや、朝宮とプレアさんも魔法科だったのか」



 そう言ったのは筑篠だ。同じ魔法科のようだ。



「ああ。そうみたいだな」

「ふふふ、これから雪辱に困ることはなさそうだ」



 筑笹が嫌に強く不気味に笑ったのが記憶に残った。







「時間になりましたので国立共聖学園入学式を始めます」



 席に座ると同時くらいにアナウンスが入った。

 ステージを見ると司会の女子が開会の言葉を並べている。

 来賓の席には国王とクロフィナさん、隊長たちが並んでいる。

 その他にも貴族らしき人もちらほら見受けられる。



「次に一年代表、筑篠鹿耶さんの式辞です」



 筑篠が席を立ち、ステージへと歩いていく。

 前に立ち、背筋を伸ばすとカンペを開き、正面を向いて口を開いた。



「一年代表の筑篠鹿耶です。本日は私たちのために式を開いて頂き、ありがとうございます。本学園に入学した我々は学を学び、武を尊び、魔を従えるよう精進する次第です」



 等々流用に話す筑篠の言葉が流れていく。

 この学園でもまた生徒会長をするのかな? あの恐怖政治を。

 俺たちの高校で生徒会というのは恐怖の代名詞だった。

 その筆頭があの筑笹鹿耶だ。本人の与り知らない所では独裁者だのヒトラーだのと呼ばれていた。それというのも教師よりも実質的に権力を持っていたからだ。

 普通ならあり得ないことだが筑笹は一年で生徒会長になり、たった一年で近隣の住民やネットの名声を回復させ、学校の耐震工事や下水工事、道路の補修費などの捻出をどうやってかは知らないがやり、更には不良の駆逐、無能な上の切り捨てをやってのけた。

 彼女の功績は目に見える物と見えない物があり、見ては行けない物もあった。

 そうして迎えた二年目、生意気な新入生たちはたった一か月で高校の暗黙了解を先輩に叩き込まれ、生徒会の決定は絶対であると理解した。

 そこには俺も暗殺という一躍を買っているが……知っては行けない事項になっている。

 それが原因で三年目には密かに独裁の二文字が生徒たちに掲げられた。

 それだけ筑笹が有能だったということに他ならない。

 筑篠の式辞が終わり、戻って来た。

 続いて校長のアネルーテがステージに立った。

 それを聞いていると横から肩を叩かれた。

 そちらを見てみるとヴェスリーラがいた。



「あ、あの、この後の叙勲についての流れを説明しますので少々お時間いいですか?」

「分かりました」



 俺とプレアは席を立ち、ヴェスリーラに付いて行き、ステージ裏に来た。

 簡単に言えばステージに立ち、国王のお言葉を頂き、片膝をついて勲章を貰えばいいらしい。

 説明を受けた俺たちは席に戻り、アナウンスが来るのを待った。



「次に先の巨竜撃退戦にて多大な貢献をした五名に国王様から叙勲が成されます。呼ばれた方は前に出てきてください。武術科Sクラス、田中亮平さん。同じく鈴木博太さん。同じくフェルノ・ソルヴィーさん。魔法科Sクラス、プレアデスさん。同じく朝宮嵩都さん。以上の五名は前に出てきてください」



 呼ばれて周りが騒めく中ステージに歩いていく。

 騒めく中で最も話題になっているのはプレアだ。聞くからに欠席常習犯らしい。

 男共はそこら辺は大雑把だが女子の方が五月蠅い。欠席常習犯のくせに頭は良いとか、成績優秀だから何やっても良いと思ってるとか、残念美人だとか言う声がある。

 それで、入学前にやらかした俺への声も多数ある。

 曰く、試験最高得点なのに試験官を半殺しにしたとか。

 曰く、ムカついた貴族を嬲り、貶め、巻き上げ、骨の髄までしゃぶり尽したとか。

 半分ガセだが半分当たっているから下手なことは言えない。

 俺みたいな噂が無い亮平や博太たちは普通に声援が送られている。

 保護者席で号泣している父母たちはフェルノの両親だろうか。

 ステージ昇ると光加減を間違えていると思われるスポットライトに当てられた。



「叙勲。貴殿等五人は先の戦いにおいて多大な戦功を上げ、巨竜撃退と町を救った功績をここに称え、竜甲章を授ける」



 竜甲章というのは文字通り竜の装甲を装飾し作られたバッジだ。

 装甲の真ん中には国旗である六角紋が入っている。

 この国で飛竜というのは必殺兵器と呼ばれるほど強力な生物だ。

 それらを編成した飛竜隊というのがいる。飛竜の数が少ないために滅多な事では出撃しないそうだ。それに飛竜隊は飛竜に認められた者しかなれない言わば名誉ある部隊であり、騎士の憧れになっている。

 先程ヴェスリーラに言われた通り片膝をついて竜甲章を受け取る。

 授けられると拍手が起こる。その内の一部は嫌そうに叩く音が聞こえた。



「さて、それはそうとこの英雄たちにもう一つ報酬をやろう」

「ちょ――お待ちを国王様!」



 国王がそう宣言すると全く予定していなかったのか重臣たちが慌てる。



「良いだろう。それともこの程度の報酬で彼等が満足するとでも?」



 そういうと重臣たちはズコズコと席に座った。



「さあ、英雄たちよ、私に出来る限り一つ願いを叶えてやろう」

『なっ―――!?』



 大講義堂のボルテージが一気に上がり、俺たちに注目が集まる。



「願い、ですか?」



 亮平が驚愕して目を見開いた。



「出来る限りだ。さあ、己の欲望を言うが良い」

「な、なら、だ、だ、第一王女クロフィナ様を俺に下さい!!」

『なんだと!?』



 国王の方を見てみると少し眉間に皺を寄せた。



「ううむ……そう来たか……残念だがクロフィナには既に婚約者がいる。それを取り消すことは不可だ。すまんが別の願いにしてくれ」



 ま、そうだよな。そりゃ当然と言えば当然のことだ。



「お父様、私はそんな話は聞いておりません! どういうことですか!?」



 ん? この反応……知らされてい無いようだ。 

 クロフィナさんが愕然としながらも国王を問い詰める。



「それはだな……オホン、今更隠すこともあるまい。後で正式に発表するが六月にお前はハイクフォックの第一王子と結婚する手筈になっている」



 そのビックニュースに生徒や先生、保護者が湧きたつ。



「なっ――そんな勝手な――」

「否、勝手では無い。王族に生まれた以上恋愛の自由は認められない。これは前々から知っている通りだ。そして王家の義務が先にある。後で説明する故下がっておれ」



 俺たち民衆からすればアホかの一言で終わるが実際その政略結婚によって平穏が保たれている国も少なくない。地球でも割とよくある話しだ。

 そしてこの国の最大権力者は国王だ。例え俺たちが嘆願しても平行線にしかならないだろう。

 だったら、せめて俺は友人のために別のことをしてみよう。



「国王様」

「なにかね、嵩都殿」

「こういうことを言うのは不謹慎ではありますが、万が一そのハイクフォックの第一王子様とのご結婚が破棄、破談された場合の結婚第二候補に亮平を入れて貰えませんか?」

「ふむ……確かにその発言は王子を害するように聞こえなくもないが……」

「では、この願いを叶えて貰う代わりに私を独房にでも閉じ込めてください」

「……いや、独房には閉じ込めん。脱獄されては敵わないからな。代わりに監視をつける。先生の内どなたかを結婚までの監視としよう」



 そこへステージの影に隠れていたヴェスリーラが手を上げた。



「で、では、私が!」

「……寝食を共にして貰う故、男性の方が好ましいのだが」

「でしたら恋人のボクが監視をしましょう」

『んだと!?』



 プレアの爆弾発言が無差別に拡散して爆発した。



「いや、だから――」

「ボクとヴェスリーラ先生が監視をする、これがボクの願いです」



 ぐうの音も出ないほどの願いを聞かされ、国王が天を仰いだ。



「分かった。しかし、風呂はどうするのだ? そこで逃げられては意味があるまい」

「一緒に入ります。将来を誓った仲ですから」



 背後の声が止んで死ねとばかりに野郎共が睨み付けてくる。



「……分かった。その願いを聞き届けよう。しかし、万が一にも害されることがあってはならないのでその月、嵩都殿は重役について貰う。よいな?」

「了解しました。寛大なご処置に感謝いたします」



 ふう。これで王子がなんらかの事故で死ねば自動的に亮平が結婚できる。



「嵩都、すまない。ありがとう。この恩は――」

「候補なだけだ。可能性はないと思え。だから恩は感じるな」

「う……分かった」



 ちょっと辛辣になったが今は無理な話だ。

 だから時期が来るまで楽しみにしていると良い。

 最も、亮平はそれを知る由はない。



「オホン、時間もないので少し急ごう。三人は何かあるかね?」



 そう言えばまだ俺たち二人のみだったな。



「では、願いを変えて朝宮嵩都一個人に国王様の裁量で良ろしいので権限を授けて欲しいです」



 ふむ、亮平も考えたな。将来的にはやはりそれが欲しくなるからな。



「ふむ。良いだろう。では嵩都殿は午後一時に玉座に来るように」

「はい」

「では、残り二人はどうする?」



 国王が聞くと博太が前に出て答える。



「では、学園の卒業後、世界最大の結婚式場でもあるハイクフォックの大聖堂にて私と隣にいるフェルノの結婚式とその下準備を望みます」



 へえ、良く知っているな。博太が望むのはつまり今度結婚するクロフィナさんたち並の結婚式を望むわけだな。思い切った願いだ。



「ふむ、良かろう。して、フェルノ殿は何を望むか」

「この学園に在籍する私の弟と妹の十二年間の学費を無償にして欲しいです」

「分かった。しかし高等部に入学出来なかった際は入学した時に支払うこととする」

「ありがとうございます」



 フェルノは家族思いのようだ。お父さんとお母さんが泣いて喜んでいるのが聞こえる。

 学費って地味に高いからな……。



「よし、思った以上に時間を食ったがそれぞれの願いを叶えよう。以上で叙勲を終了する」



 確かに長かった。席から拍手が送られる。

 勲章はつけたまま席に戻る。階下を見ると国王が大臣たちに怒られている。

 クロフィナさんは静かに怒りを溜めているようだ。

 大臣たちに連れられて国王が退出した。


グラたん「友達思いですね」

亮平「嵩都には助けられてばかりだ」

嵩都「そんなことはないぞ。俺だって亮平といると楽しいからな」

筑笹「ふむ……(その様子をカメラに取る)」

亮平「おい待て筑笹。何故カメラに取った」

筑笹「入学写真だ。一枚やろう」

亮平「そうか。ありがとう」

筑笹「腐腐腐、ではな」

嵩都「……(何か寒気がする)」

亮平「良く取れてるな。流石は筑笹――って、どうした?」

嵩都「いや、何でもない。次回、ソルヴィー和亭」

亮平「ソルヴィー……もしかしてフェルノの家か?」

フェルノ「へるかむ」

博太「ウェルカム、な」


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