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勇邪の物語  作者: グラたん
第一章ロンプロウム編
52/466

第五十話・葬儀

グラたん「第五十話です!」

~幕間・地球にて


 3031年 4月 1日

 葬式――それは今生の別れを告げる儀式。


 

 私、朝宮夕夏は両親と共に喪服姿で式に参列していた。

 私たちがいるのはお兄ちゃんが通っていた高校の跡地。

 校門前には大きなクレーター。その中央に隕石と思われる石があり、お兄ちゃんたちを殺した元凶。

 死者二百名を超えるこの事件現場後で私たちは葬儀をしていた。

 私のお兄ちゃん、朝宮嵩都もこの葬儀の傍らに参列していた。

 遺族ではなく、死者として……。

 この事件では遺体が見つかり、身元が確認された人とそうでない人がいる。

 幸いにもお兄ちゃんの遺体は見つかっていない。

 お兄ちゃん以外にもおよそ六十名の遺体が発見されていない。

 捜索をしようにも近辺は探し尽くした。ましてや六十人が揃って拉致されたとは思いたくもない。

 いや、そもそも何故ここに隕石が降って来たのか。あり得ない直下集中型の地震が起きたのか。

 それは―――その答えは出なかった。



 葬儀はつつがなく終わった。

 遺骨がある人はそれを持ち帰り、そうでない人は写真を持ち帰った。

 家に戻り、私はお兄ちゃんの写真をお仏壇に飾り、合掌する。

 家に帰ると私の両親はいつも落ち込んでいた。喧嘩ばかりしていたことを後悔しているのだろう。

 一か月が経った今、両親は気持ちの整理が少し着いたのか私を大事にし始めた。

 結構な違和感がある。最初は変にギクシャクした。

 お兄ちゃんが見ていたら驚くと思う。また、こんな生活が戻ってくるとは思っていなかったから。

 お兄ちゃんを失ってから大事だと思ったことがいくつもある。

 思えばあの日以来、家のことは全てお兄ちゃんがやっていた。

 今、お母さんはお父さんの手を借りながらも頑張っているよ。

 お父さんはお酒やたばこを控えて仕事に精を入れている。

 勿論、あの日以来やると決めた剣道もずっと続けています。

 もし何処か遠い空から見ているのならこれからの私たちを見ていてください。



 ピンポーン



 呼び出しのベルが鳴った。インターホンから出る。宅急便のようだ。

 それにしても最後の方は少し湿っぽかったかな?

 そう考えつつ玄関に到着した。



「お届け物です」



 配達員が持っていたのは横長の大きな箱だ。

 ハンコを押して受け取る。見た目の割には重くない。

 居間に持って行き、台所からハサミを持ってくる。



「誰から?」



 夕飯の下ごしらえをお父さんと頑張りながらお母さんが聞いてくる。



「えっと――――えっ!?」



 箱の差出人を見てみるとその人は私を同様させるのに十分な名前を書いていた。



「どうした?」



 私の驚きにお父さんが反応し、料理の手を止めてこちらへ来る。



「――ッ。まさか……あ、いや、そういうことか。夕夏、日付を見て見ろ」



 お父さんに言われて日付を確認する。そして納得した。

 1月21日。この箱を送って来たお兄ちゃんがまだ居た日にち。

 ハサミをテープに差し込んで少しずつ切って行く。

 箱を開けると中には書類と厳重に包まれた物体が入っていた。

 その厳重に包まれた新聞紙を開けるとその中には一振りの剣――というか刀が収まっていた。



「――おい、まさかそれって――」



 お父さんの言葉を確かめるように手に取って持ち上げる。

 重い――そう思ったのもつかの間、その刀は私の手にすんなり馴染んだ。

 重さは今、私が使っている竹刀と同じくらいの重さだ。

 試しに抜いてみる。刀身は綺麗な直刃。鍔は雪の結晶のように装飾されている。

 持っただけで分かる、これは明らかな銃刀法違反だ。

 ふと、先程避けた書類が目に入る。そして納得。

 お兄ちゃんが考えなしにこれを送ってくるわけがない。

 つまり、この書類は取り扱い説明書ではなく許可証ということだ。

 これを手に入れるのにどれだけの苦労とお金がかかったかなど考えたくもない。

 確か去年の三月頃にTVやっていた刀特集を見て欲しいと言った覚えはあるが……あれは見た感じ模擬刀だった。まさか生を手に入れてくるとは思わなかった。

 夕飯を食べ終わってその刀を持って部屋に戻り、これがいくらしたのかちょっと調べてみる。

 使用するのは時折話題にも昇っていたカーリュ・レミテスなる人物が作った腕時計型の携帯だ。

 SFみたいに起動するとディスプレイが浮遊する仕組みになっている。

 私の友人に大海聖奈という女の子がいる。

 カーリュ・レミテスは、その聖奈さんの親御さんが経営している会社の開発部にいる正体不明の謎の青年だそうだ。

 聖奈さんも正体を知らないようだった。言えないのかもしれないが。

 それはそうと検索をしてみる。

 この刀の名前は『紅』と書いてあった。刀身の部分にも一文字書いてあったくらいだ。

 …………出ない。いくら調べても出てこない。この刀が安物でないことは確かだ。

 検索し続けていく内にとある可能性に思い至る。

 今の検索を一旦止めてそちらを調べてみる。―――――出た。

 この法律豊かな日本で鉄を打ち、殺傷性のある本当の刀を作っている人物がいるという可能性を検索してみたら意外とすんなり見つかった。

 自伝ブログがある。見てみると報告が上がっている。

 住所不明、年齢不詳、家族構成不明。だけど日本に住んでいるのは確か。

 それはそうとブログにはこれが最後の作品になると書いてある。お爺さんかな?

 書き込みが良いらしく所々に感想が挟まっている。



 違法者:3031/2/20/(火)

 私の元に訪れた最後の客は若い青年だった。茶色のコートを羽織り、顔を深く隠していた。



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 待ってましたw



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 更新ワロタw



 違法者:3031/2/20/(火)

 濃密な殺気を纏う彼は明らかに此方側の人間だ。彼はその手に銃刀所持の許可証を携え、もう片方の手には億の札束を持っていた。



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 妄想乙w



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 日本、そんな危険な国だったのかw



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 むしろその彼が億の束を手に入れた経緯が気になるwwww



 違法者:3031/2/20/(火)

 彼には妹がいるらしい。彼に言わせれば少々男勝りだが身内贔屓しなくても可愛く、視界に入れば目が潰れかねない程の少女らしい。



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 妹!



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 嫁不可避フラグ来た!



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 お巡りさん、こいつ逮捕してください。



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 身内贔屓しなくても可愛く > 既に身内贔屓wwww



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 視界に入れば目が潰れかねない程 > 重度のシスコンwwww



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 ツッコミ満載でワロタwwwwww



 違法者:3031/2/20/(火)

 彼はその子のために刀を打って欲しいと言ってきた。

 無論、その子は私たちとは違う普通の人間だ。

 彼曰く、なんでも学校の卒業祝い兼入学祝いに送りたいらしく、その少女自身も刀を欲しているそうだ。



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火) 

 普通の少女はそんなもの欲しがらないw



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 確かにw草不可避wwwww



 違法者:3031/2/20/(火)

 私は断った。人の子が決めた法などは怖くないがカタギの子を巻き込むことは私の義に反した。

 それに少女に刀というのは鉄板かつ萌え要素でもあるが、私情を挟むべきではないと考えた。



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 なあ、これヤッさんの発言だよなwwww



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 カタギでワロタw



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 確かに少女×刀はラノベの鉄板w



 違法者:3031/2/20/(火)

 断ったが彼は何度も私の家を訪れた。

 何度も何度も黄金の最中や黄金の菓子折りを持って来た。

 時には春画などまで持ち込んでくる始末だったw

 彼は三顧の礼ならぬ二月の礼で私の心を打ったのだ。



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 二か月w 毎日とかヤバしw



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 黄金の最中 > 何処の悪代官だwwwwww

 


 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 時には春画などまで持ち込んでくる始末だったw > 違法者さん超喜んでるwwww



 ただの老人:3031/2/20/(火)

 実を言うと私はもういい歳だ。いつお迎えが来てもおかしくはない。



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 お爺さんだった!



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 マジかw



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 ネームネームw!! ただの老人になってるwwww



 違法者:3031/2/20/(火)

 私は最後の作品を打つことにした。素材は一切妥協していない最高の一振りだ。



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 ほほう。



 違法者:3031/2/20/(火)

 名を『紅』。『べに』ではなく『あか』でもなく『くれない』だ。


 

 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 厨二センス全開草不可避wwwwwwwww


 

 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 結構有りそうな名前なのに検索しても出てこない不思議wwww



 以下名無しに変わりましてニートがお送りします:3031/2/20/(火)

 本当だw



 ――『紅』。私が持っている刀だ。

 この先もまだまだ続いているみたいだ。



「夕夏、お風呂入りなさい」



 作っている工程を見ていると下からお母さんの声が響く。



「はーい」



 スマホの電源を落とし、部屋を出た。

 お兄ちゃんが卒業祝いに送ってくれたこの刀、多分本当の意味で使う事はないだろう。


夕夏「(紅を見つめながら)お兄ちゃん……」

グラたん「とても次回予告を頼めそうな雰囲気ではないですね……」

嵩都「夕夏、次回予告を頼めるか?」

夕夏「次回、叙勲と褒賞」

グラたん「――――えっ?」

夕夏「ん? 今何処からかお兄ちゃんの声がしたような……気のせいかな」

グラたん「嵩都さん、ちょっと学園の校舎裏に来てくれますか?」

嵩都「悪いが俺にはプレアという嫁がいるので付き合うことは出来ない」

グラたん「……イラッ」

アネルーテ「……じぃ……」

グラたん「アネルーテさん、何故私を睨んでいるのですか?」

アネルーテ「別に……何でもありません」


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