第四話・夕日色の少女
グラたん「第四話です!」
嵩都「目の前には超絶美少女が二人いる」
グラたん「ネタバレ駄目ぇ!」
突然、破砕音がして壁が壊れた。
何が起きたかなんて理解不能だ。というかどうやって壊したのだろう?
「よっと」
侵入してきたのは常識的にあり得ない程の美少女だ。
髪は夕日の様に赤と黄金色が混ざった色をしていて目がそのままの黄金色。
髪はポニーテイル。肌白で胸は見立てC。服装は水色チュニックのワンピース。
ギャップというのだろうか、よく似合っていると思う。
というか惚れた。心臓が飛び出しそうなくらい高鳴っているのが分かる。
生涯齢十八という今、俺は初めて好きという感情を二次以外で体験した。
それはそうと彼女の手は何も持っていない。まさかグーとか蹴りか?
そう思っていると彼女はこちらに向いて姿勢を正しお辞儀した。
「おはようございます」
「お、おはようございます……?」
返さないと失礼かと思って各々で返していく。
一瞬彼女が俺を見た気がした。
そして不届きながら彼女も顔が赤くなっているように見えてしまった。
うん。他評として少々イケメンの称号を持つ俺としてもそこまで己惚れてはいない。
ましてや彼女の様な超絶美少女が俺如き等に惚れることは多分無いだろう。
「ちょっとプレア! 何もここまでしなくても良かったよね?」
次に来たのは端正な顔つきで髪と目は青色で肌は白く、身長は百五十cmくらいでスタイルはとても良い美少女だ。
良いのだけど……胸が薄い。
それとローブと言っても中に服は着ているしショートパンツも着用している。
外套みたいに着ている、と言うのが正しいな。
彼女はこの中で言えば他の女生徒とは比べ物にならない位に美人さんだ。
それは隣の夕日色の少女にも言えることだ。
ただ、見た目十二歳ぐらいに見える。それほどまでに外見が幼い。
この場合は……美人と言うよりは可愛いと言った方が正しいかもしれない。
「ごめんね、ルー姉。あ、それよりもレーヴァテインあったよ」
プレアと呼ばれた子が俺の剣を指差して言い、もう一人の子が俺を見た。
つられて俺も自分の持っている魔剣を二度見する。
「そうね。でも先に挨拶するのが筋ではないかしら?」
「それもそうだね。ボクはもう挨拶してあるよ」
僕っ娘だと!? 現代の三次元少女が自身の一人称を『ボク』と指すなんてそれこそ天文学的な確立じゃないのか!?
俺だけじゃない。亮平たちだって驚いている。
そんな中で青い髪の彼女はローブの裾を掴んで気品溢れる一礼をした。
「私は第十二代目魔王、またアジェンド城第二王女アネルーテ・スファリアス・アジェンドと申します。以後、よろしくお願いしますね」
「よ、よろしく……」
あまりに動作が自然なので見とれてしまった。
その魔王も俺たちを一瞥し、何故か俺へ視線を向けてしばらく固定。
次の瞬間には頬を赤くしてそっぽ向いてしまった。
二人して何なんだ? っと、それはそうと――。
『――――魔王!?』
思わず臨戦態勢を取ってしまうほどに驚いた。魔王と言えばラスボス。
ネトゲや小説だと最初に力試しで現れることで有名だ。
ということは隣の女の子は四天王とか幹部か? 油断していると瞬殺されるだろう。
「あれっ? ルー姉、皆何だか戦う気満々だよ?」
「プレアが事をややこしくするからじゃないの?」
「……とりあえず戦う? それとも会話する? それともお昼?」
「この状況で昼食が出てくる貴方の思考が逞しいわ。とにかく会話でことを進めたいのですが……そうも言っていられないでしょう」
何だか毒気を抜かれるのほほんとした会話しているな。
「――円陣を組め! 二隊で挟み込め!」
そんなことしている内に兵士たちの陣形が完成した。
正面には武装を構えた俺たち――いや、ちょっと待て。仮にも俺たちはまだ守られる側の存在だよな?
そして俺以外にも特別らしい武器持ちが結構居ることに今更ながらショックがあった。そう、俺は何ら特別でも何でもなかったということだ。
「嵩都、俺たちも行くぞ」
隣にいるのは亮平。手には光り輝く剣――目を向けると名称が出てきた。
この野郎、聖剣じゃないか。
それはそうと亮平は彼女たちを相手に剣で戦えるのか?
俺の記憶が正しければ亮平とは体育の授業の剣道で軽く打ち合った程度だ。
基礎も半端な亮平が到底まともに戦えるとは思えないが何かあるのだと思っておく。
「いいぜ、勇者様」
あ、亮平が目を背けた。この分だと黙っているつもりだったな。
「冗談だ、俺が先行する。亮平は時間差で切り込んでくれ」
少なくても俺がどちらか一人の足止めをすれば皆が何かしらリアクションを起こしてくれるはずだ。
「了解。邪神様」
亮平……意趣返しのつもりかこの野郎。
そう考える間にも体はレーヴァテインを構えて俺は走り出す。
狙いは心臓。殺すことは躊躇わない。
地球にいた頃はそこそこ裏のお仕事もしていたし殺人経験もある。
まあ、学生兼殺し屋だな。それも日によっては数十人単位だ。
他人からしたら危険なのは百も承知。
それを分かった上で亮平も付き合ってくれている。
……殺して快感を覚たことはないとは言い切れないが。
その亮平も過去に傷があるわけだが今は置いておこう。
「ルー姉、戦う?」
「それしかないわね」
魔王が嘆息している。
……剣を向けてから少々後悔。むやみに刺激してしまっただけのようだ。
裏を返せば先程まで彼女たちは戦闘する気はなかったことになる。失敗したな。
「じゃあ今回はボク一人で制圧するね」
言うより早く夕日色の彼女は異空間らしき場所から長弓を取り出した。
だが引くよりも俺の方が――瞬時、反射的に俺は剣を跳ねあげた。
ーーーーギャィィン!
――――とても鋭い何かが俺から剣を弾き飛ばした。手が痺れている。
ーーーーカラン
魔剣が手から離れ、背後で落ちる音がした。
何が起きたのかは確認出来ない。というか目を離せない。彼女たちから目を離せば一瞬であの世に行けるだろう。
目の前にいる彼女は笑顔で弓矢を撃つ。
その全弾、俺の目には見えない。少なからず動体視力はここにいる生徒たちよりは上だ。銃弾程度なら躱せるが……軌道すら見えないのは久しぶりだ。
後ろで人が倒れていく音がやけに耳に残る。その中に一回の金属音と亮平の悲鳴が混ざったのだけは分かった。
銃弾の――最新最速弾よりも速い。少なくても反射神経では避けられないのは確かだ。
実際、さっきのだって剣が無ければ直撃していただろう。
「―――降参してくれる? って言っても君が最後だけどね」
気が付けば皆は地に伏し、彼女はとても良い笑顔で宣告した。
俺はしぶしぶ両手を上げて降参した。いや、正直勝てない。
彼女は弓を異空間に仕舞った。
敵意が無くなり、狭まっていた視界がようやく開く。
地面を見下ろしてみれば矢が散乱していた。
その矢には本物の鉄ではなく弓道部が使っているようなものだった。
――矢? え、矢であんな威力が出るの?
余程スキルLvが高いのだと思っておいた。矢はふと見ない内に消えていた。
「プレア? 殺さないのは称賛するけどやり過ぎだと思うわ」
「そうかな? 尋問は一人いれば十分でしょ?」
――俺、これから尋問されるか……嫌だなぁ……。
殺し家業をするからにはそこに拷問や尋問も含まれる。
自分がやる分には問題ないがやられるのは勘弁だ。
「誰も尋問するなんて言ってないわ。でもまあ、詳細を聞くくらいは出来るでしょう。えっと、貴方現在の状況がどういうことか分かる?」
俺に言っているな。残念だがさっぱりだ。
とぼけるのは無理があるから素直に白状しよう。
「分かりません。そもそも何故召喚されたかすら良く分からないままです」
本当は知っているが、知らない振りをしておいた方が知らない情報が得られるだろうと考えてそこだけはとぼけておく。
「なるほど……それなら、皆さんが起きたら話しましょう」
無難に頷いておく。魔王も別に俺たちを即行で殺そうというわけでは無さそうだ。
とりあえずレーヴァテインを回収しよう。
そう思ってレーヴァテインに近寄るとプレアさん……だったかな? その子が先に手に取った。
そして彼女は剣を両手で持ったまま俺に振り向いた。
「さっきはいきなりごめんね。ボクはプレアデス。プレアでいいよ」
「あ、俺は朝宮嵩都です。嵩都で良いです。それとその魔剣――」
「これ? ごめんね、ボクたちはこれの回収任務を任されているんだ。申し訳ないけど回収させて貰うね」
彼女たちは上から魔剣回収を命じられてここに来たのか。
つまり魔帝の命令か。……ん? 待てよ。そう考えると魔剣を持っていた俺が原因? え、つまりこの惨状は俺が原因になるのか?
――誰かが聞いても素知らぬ振りをしておこう。
しかし、このクラスの武器を序盤で失うのは悲しい。なんとか食い下がれないかな。
待てよ……確かステ画面に固有武装があったよな。
そう思いだして固有武装の方を出して見る。
剣は腰に現れた。鞘が付いている状態で全身が白銀の剣だ。
「あ、固有武装だ。聖剣系かな?」
プレアが俺の出した剣を見てそう推測をつける。
「かな? えっと……名称、聖剣ヴァルナクラム? 聞いたことない名前だ」
ギリシア系でもないし北欧系の神話でも聞いたことない名前だ。
この世界独自の聖剣かな?
試しに鞘から抜いてみる。
柄も刀身も白銀で刃は乱れ刃だな。柄頭には綺麗なダイヤモンドみたいのが埋まっている。鍔の中心にも同じようについている。
「綺麗……」
ふと横目で彼女を見るとかなり近くにいた。
俺に言わせればヴァルナクラムと同等かそれ以上にプレアの方が綺麗だ。
夕日色の髪がふわりとなびき俺の肩にかかる。
彼女の方からは何か良い香りが漂ってきた。
「ん? どうしたの?」
「い、いや、なんでもない」
彼女の黄金の瞳をじっと見つめていたようだ。俺は彼女から目を離した。
「でもその剣……その固有武装があるなら大丈夫そうだね」
何が大丈夫そうかなんて言わなくても分かる。
分かるが……やはり惜しいという気持ちは残ってしまった。
「……そうだな」
割り切ることも生きていく上では重要だ。
プレアとしばらく話しているとこの世界の事や邪神についても分かった。
――それにしても彼女の好意的視線が多いな。気のせいにするには無理がある。
……下手なことは思わない方が良さそうだ。現段階ではまだ敵だからな。
情が沸けば後で殺す時に躊躇いが出来てしまう。
しばらくすると気絶した奴らが起き出した。
「うっ……痛ぇ」
亮平もようやく起きたようだ。
「よう、どうだった彼女の極上矢は?」
「ん、ああ、嵩都か……矢? おい、矢ってまさか……」
亮平も同じように信じられないようだ。
「その通りだ。あれは矢だった」
「……ありえねぇ。まあいい。それより俺のエクスカリバーは――と」
亮平がふらふらしながらも起き上りおぼつかない足取りで光り輝く剣を手に取った。
エクスカリバー――アーサー王伝説で有名な聖剣エクスカリバー。
王の器を持つ者が闇をはらうために泉の乙女から貰ったと言われたり地面に刺さっているのを引っこ抜いたりとする伝説の剣。ゲームや小説などでもおなじみの剣だな。
亮平が持っているのは全体的に黄金で刃は直刃。柄頭がひし形になっていて鍔は刀身の方に向かって半円を描いている。所々の緑色が黄金を際立たせている。
「エクスカリバーか……」
羨ましいと少しだけ思うと亮平がエクスカリバーを鞘に納めた。
「お前だってその剣があるじゃないか」
「まあな。レーヴァテインは回収されたが……」
「ご愁傷様。それでそれも固有武装か? 俺のエクスカリバーは固有武装らしいが」
「ああ、俺のも固有武装だ」
「見た目は聖剣系だな」
「ああ、聖剣ヴァルナクラムだそうだ」
「効果は?」
「効果……ちょっと待て」
亮平に言われて見ていないことに気が付く。
メニューを開きステータス画面を出す。
えっと、聖剣ヴァルナクラム……説明は……これか。
よく見てみると説明に固有武装は武器破壊不可と強奪は不可と書いてある。
一種のアドバンテージとでも考えて置こう。
聖剣ヴァルナクラム:効果 真空波 ―― ―― ―― ――
→真空波:任意発動可能。剣を振った時に周囲や狙った場所に神速で不可視の剣圧を飛ばす。飛距離は自分が見える範囲。
チートだろ。そしてこのチートがあと四つも隠されているのか。
レーヴァテインは見損ねたがこの剣でも十分過ぎるな。
「どうだ?」
ひそかに興奮していると亮平が聞いてくる。
「真空波だとさ。神速不可視の剣圧を飛ばすらしい」
「うわ、あからさまなチートじゃないか。ちなみに俺は必殺攻撃っていう奴らしい。こればかりは使ってみないと分からないな」
それは文字通りの効果がありそうな気がする。
「なるほど……他の奴らもこんな感じかな?」
「だろうな。もしかしたら真逆系統の奴がいるかもしれないが」
魔剣系統か……面倒くさいな。
「ハハ、敵にならなければいいよ」
「全くだな」
敵になったら――俺は仲間だろうと間違いなく殺してしまうだろうから。
俺は殺しにかけての依頼は失敗したことがない。
つまり俺が殺すと決めた相手は必ず死ぬ。
だからせめてここに居る奴等は俺の敵にはなってほしくないな。
さて、皆もそろそろ起きた事だしプレアたちから説明が来る頃だろう。
グラたん「乙です」
嵩都「俺の魔剣……」
グラたん「聖剣が欲しいって言ったからレーヴァちゃんがオコですよ」
嵩都「そうは言ったけどさ……」
グラたん「さて、次回予告です!」
プレア「次回、召喚された意味」
嵩都「うお! 何時の間に!」
プレア「ねぇ、次回で召喚理由分かるの?」
グラたん「一応、そのつもりですよ」




